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    李坂怜菜

    @jlHt3jBv2ElSdJ5

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    李坂怜菜

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    つなとら。龍誕2024。
    二人が付き合い始めてすぐの頃の話。
    シリアスとモダモダの混ぜこぜ。

    一番幸せな日10月12日。
    今日は俺の誕生日。

    家族や友人、メンバーや事務所の人達はもちろん、他グループの人達からもたくさんお祝いしてもらった。メッセージだけじゃなくプレゼントまで。なんて光栄なことだろう。
    現場が一緒だったわけじゃないのにŹOOĻのみんながわざわざ会いに来てくれたのは本当に嬉しかった。
    嬉しかった、けれど。
    「あれ、虎於くんは?」
    そこに居たのは3人。1人の姿は無かった。
    「えーと、トラはその……なんか急用とか言って慌てて帰っちまって!」
    「そう!なんかこう、えっと、どーーーしても行かなきゃいけないところがあるとかなんとか言ってた!」
    「御堂さんとても残念がってました。十さんのことお祝いしたかったに違いありません」
    3人がワタワタとフォローしているのを見て確信する。意図的にここへ来なかったのだと。
    避けられているのかな。これまでも恥ずかしがってそっぽ向いたりすることはあったけど、誕生日に会いに来ることを拒まれるとは思っていなかった。
    「そっか、残念だな。3人ともありがとう。あとで俺から連絡してみるよ」
    「え、トラのやつ連絡も入れてないんスか?」
    「え?」
    「おめでとう、的な……」
    「ああ、うん。来てないかな」
    「………マジか……」
    トウマくんが心底呆れた様子でため息をつく。
    彼は虎於くんのことをよく分かっているから、俺のお祝いをしたがらない理由も見当がついているのかな。聞きたいけど、ちょっと怖いな。
    「十さん、俺からちゃんと言いますんで。絶対連絡させるから十さんからは何も言わないでください」
    「え、な、なんで」
    「あんまり甘やかしちゃダメっスよ!」
    「ええぇぇ……」
    甘やかしてる、かなぁ。
    これまでのアレコレを思い出してみる。
    うーん……。
    甘やかしてるかもなぁ……。





    それから家に帰って改めてTRIGGERの3人で誕生日会をして、お酒もほどほどのところでお開きとなった。明日も仕事だし、早めの解散だ。
    寝る前にスマホをチラと確認する。結局、虎於くんからは何の連絡もなかった。

    実は、少し前に虎於くんに告白した。虎於くんも俺のことを好きだと言ってくれて、皆に内緒で付き合うことになったのだ。
    お互い忙しくてゆっくり会うことはなかなか出来ないけれど、想いが通じた嬉しさだけでいくらでも頑張れる気がしていた。
    誕生日、虎於くんからは会う約束も何も連絡がなく、もしかしたらサプライズを用意してくれているのかなと考えたりもしていたが、俺が1人ではしゃいでいただけだったらしい。
    ガッカリなんてしちゃダメだ。なにか理由があるのかもしれない。誕生日を別の日だと勘違いしているのかも。でも、付き合う前は日付が変わるとすぐに連絡をくれていたのに。もしかして、俺のことを負担に思ってしまったのかな。
    鼻の奥がツンとして、慌てて上を向いて瞬きをした。多くを求めちゃいけない。俺は虎於くんのことが大好きで、それ以外に必要なことなんか一つもないんだ。

    その時、手元のスマホが明るくなった。一瞬遅れて、着信を知らせるバイブ音。画面には虎於くんの名前。
    「もしもし!」
    1コールもたたないうちに出てしまい、電話口の虎於くんが怯んだのが分かった。
    『っ、りゅ、龍之介』
    「こんばんは!」
    『こ、こんばんは…。夜分遅くに悪い』
    「全然悪くない!電話嬉しいよ、ありがとう」
    愛しい人の声が耳に届くだけで、先ほどまでの不安が全部消えて無くなる。俺はこの人のことが好きだ。それだけで大丈夫。
    『龍之介、その……悪かった、今日』
    「え?そんな…何も悪いことなんかしてないよ」
    『会いに行かなかった』
    「……うん」
    “行けなかった”じゃなく“行かなかった”。
    やっぱり、自分で選んでそうしたんだな。
    『誕生日なのに、何も祝わずに、こんな時間になって』
    「いいんだよ、全然。声が聞けて嬉しい」
    『…………ごめん』
    虎於くんはずっと元気がなくて、何か悩み事があるのは明白だった。
    もしかして、別れたいのかな。元に戻りたいのかも。
    それを誕生日に言うのは良くないと思っているのかな。
    「虎於くん、大丈夫だよ」
    『龍之介……』
    「俺は、君の気持ちを大事にしたい」
    何でも話してほしい。我儘だって聞いてあげたい。笑ってほしい。これからもずっと、大好きだから。
    『…………龍之介、お誕生日おめでとう』
    虎於くんの泣きそうな声が、心の奥底に沁みていく。もしかしたら本当に泣いているかもしれない。そばに居られないことが悔しくてたまらない。
    『ごめん、遅くなって。付き合ってるのに』
    「そんなこと考えなくていい。何にも縛られなくていいよ」
    『怖くなったんだ。龍之介にとって幸せなこの日に、俺が隣に居ることが』
    その言葉が俺の脳に届いて、どうしようもない感情が湧いたその瞬間。
    窓の外でサイレンの音がする。救急車かパトカーか。
    その音が、電話越しにも聞こえてきた。
    「……虎於くん、もしかして近くまで来てくれてる?」
    『えっ?あ、いや、なんで』
    「待ってて、すぐ行く」
    虎於くんの慌てた声を聞きながら、俺は適当な服に着替えて外へ飛び出した。



    家の少し先に車が止まっていた。自家用車なのかよく分からないが、以前にも見たことのある高級車。運転席の虎於くんが困った顔でこちらを見ていて、助手席側のドアを開ける俺を確認すると静かに俯いた。拒絶されないのを良いことに、そのまま乗り込む。
    「来てくれたんだね、ありがとう」
    「……気持ち悪いだろ、こんなの」
    「え、なんで?」
    「来るって言わずに近くまで来て、それを隠したまま電話かけて。ストーカーみたいだ」
    「全然そんなことないよ!教えてくれたらもっと早く会えたのに、とは思ったけど」
    虎於くんと会えたことが嬉しくて、俺は思わず頬が緩んでしまう。神妙な面持ちの虎於くんをもっと労わらなきゃいけないのに。ニコニコしているのが自分でも分かる。緊張感がないって怒られるかな。
    「虎於くん、さっきのどういう意味?」
    「………さっきの、」
    「隣に居るのが怖くなった、って」
    虎於くんは小さく肩を震わせて、下を向いたままポツポツと話し出す。
    「龍之介が俺のこと好きだって言ってくれて、嬉しかったんだ。夢みたいだ、今も。それで、今度こそあんたに見合う人間になろうと思って、毎日頑張って、でも、いざあんたが心から幸せになれる日を目の前にして、どうしても怖くなった。俺が居たらダメだって。水を差すなんて出来ないって。こんな、こんな情けない人間じゃダメだ。俺じゃダメだ、やっぱり。だから、」
    「だから?」
    「……だから」
    「だから、別れたい?」
    瞬間、虎於くんが目を見開いた。ゆっくりと顔を上げて、俺のほうを見てくれる。
    瞳が揺れて、唐突に細くなって、表情もクシャリと歪んで、彼はボロボロと泣き出した。
    「いやだ、わ、別れたくない」
    両方の袖口で目を擦りながら、虎於くんは首を横に振る。
    「多分こ、これからも、上手くできない事ばかりで、き、嫌われ、嫌われるようなこといっぱい、あるかもしれない、けど」
    「嫌いになんかならないよ」
    「ごめん、俺、龍之介に幸せになってほしい。それだけなんだ。信じて、ください」
    「分かってる。分かってるよ。ありがとう」
    もういいよね。
    様子を見ながら、ゆっくり。そう思っていたけど。この人はきっと、俺のこと、すごく好きで居てくれている。
    俺は両手で虎於くんの頬に触れた。
    キョトンと目を丸くするその顔が愛おしくて、無防備な唇にキスをする。
    実はこれが初めてだったりする。照れてなかなかさせてくれなかったから。
    「………………え」
    「俺も虎於くんのこと幸せにしてあげたいと思ってるよ」
    「………………な、え、な、何やってんだここ外だぞ!」
    車内だけど、虎於くんとしては外判定らしい。まあ、間違ってはいない。危機感の持ち方としては非常に正しい。
    「誰も見てないよ」
    「分かんないだろ!!こっ、こん、なところで……!」
    真っ赤になって後ずさろうとして、後方に頭をぶつける虎於くん。「いてっ」と呟いて顔を顰めるその姿を見て、俺は思わず笑ってしまう。
    「よかった。俺、嫌われちゃったのかと思った」
    「悪かった。嫌な思いさせるって分かってたのに、どうしても動けなくて」
    「虎於くんの気持ちを聞けたから良かったよ。話してくれてありがとう」
    笑ってみせると、虎於くんはキョロキョロと視線を揺らして「う、うん」と歯切れ悪く返事をする。可愛いな。
    「なあ、龍之介」
    「ん?」
    「一応、その……プレゼント、用意したんだ」
    「え!?」
    ガッと身を乗り出すと虎於くんは咄嗟にまた身を引いた。再び頭をぶつけたようでギュッと目を瞑っている。頭を撫でるついでに抱きしめようとしたら「だから外だって!」と押し返された。
    「あんた寒がりなんだろ?これからの季節に使えるかと思って、その、マフラーを」
    「マフラー!嬉しい!虎於くんありがとう!」
    「お、俺の好きなブランドのやつで、結構肌触りが良いんだ。気に入ると良いんだが……」
    虎於くんが選んでくれたものを気に入らないわけがない。俺のことを考えて用意してくれた事実がとにかく嬉しかった。
    綺麗な包みを渡されていよいよ気持ちが溢れそうになってしまう。外だからダメって言うけど、車の中だし、こんな時間だから誰も歩いてないし、記者の人がいないことも確認して来たし……でも、虎於くんが嫌がってるからやっぱりダメだな。
    「虎於くん、会いに来てくれてありがとう。大好きだよ」
    改めてお礼を告げる。
    彼は相変わらず照れた様子で狼狽えて、それからおずおずと視線を交わしてくれる。
    「俺も、大好きだ。龍之介」
    ……………。
    ………………うーん。
    「虎於くん、よかったらうちに上がっていかない?」
    「は!?いや、こんな夜中に迷惑だろ」
    「だって外だとダメって言うから」
    「えっ、え?な、そ、そういう話か!?それはほら、また、次の機会に」
    「なんで!?俺のこと好きだろ!?」
    「好きだよ!」
    「もっといっぱいキスとかハグとかしたいよ!」
    「なっ、なんでそんな恥ずかしげもなく言えるんだ!ばか!」

    幼稚な言い合いをしながら、ふとデジタル表示の時計が視界に入る。
    23時57分。
    ああ、今日は幸せな一日だったな。

    不満げな顔で上目遣いに睨んでくる恋人に、もう一回だけキスをしたいなと思った。
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