他ジャンル且つ、過去作品なのですが、勿体ない精神で。
砂漠で昼夜の温度差が大きな原因は太陽の光を遮るものが何もない事が挙げられる。常に露出する地面は太陽が強く地面を熱して暑くなる一方、逃げていく熱を遮るものが何もないから気温が下がってしまう。水分がなく乾燥している事も一因である。――これは誰もが知る常識であり、学問に遠い人間でもアーカーシャから得られる知識だ。
幕間で文字の海から顔を上げると、満天の星々が小さなオアシスの水面で瞬いている。手元に置いていた水筒で僅かに乾いた口を湿らせて本を閉じた。鞄に仕舞う前に砂粒を払い落そうとして、無意識にまた開く。
第三章・タイトル――視線が追う前に頭の中に文字が浮かび上がる。何度も読んだこの一冊は当の昔に内容を暗記しているが、視点をたった少し変えただけで絶対的に是としていたものが非となり、話が根本的に変わる。これは規則により定められたものだと記憶し疑う事をしなかったが故に気付けず、今の状況になったからこそ得られた新たな知識である。
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