小説ではありません。ただの平和な妄想の箇条書きです。
勢いで考えたテキトウ設定なので、他国でも言語が同じ、インターネットっぽい何かはあるけど、ごくごく一部の人が使ってるだけで普及率低
とある国の政府関係のお仕事をしてる観測者くん。
なんかこう…裏社会にも関わる形での治安維持とか、そういう奴でお願いします。
ある日、休暇で訪れた国外のそこまで有名ではない観光地で、一人の男と出会う。
昼食に…と入った小さな食堂で相席を……と頼まれたのだ。
そう大きくもない席で向かい合わせになっているのに無視をするのも……と思っていると
相手も同じように考えていたらしく、ほぼ同じタイミングで声をかけあいちょっと笑う。
そのまま何となく話してみると、相手も同じく休暇の一人旅で訪れたという国外からの観光客で、目当ての観光先が被りまくってるのもありちょっと仲良くなる。
世間話で何の仕事をしてるか、という話題になったが、
観測者くんは「公務員だから色々やってるなぁ」と濁すしかないのは当然として
なぜか男も「まぁ、客商売みたいなのをしてる」と歯切れが悪い。
何か表現しにくい仕事なのかな?なんて思いつつ、そも初対面の相手に具体的な仕事の話なんてしにくいよな~~自分も答えられないのに悪い事聞いちゃったなぁ、とちょっと申し訳なくなりつつ他の話は盛り上がり、折角だしとそのまま一緒に観光する。
2人の方が相乗りできて交通費やら何やらが安く済んだりと便利。
何より食事の時に複数皿頼んでのシェアが出来る。
男はかなりの健啖家で、平気で4、5皿平らげる為、旅行初日の1人だった時はアレも食べたいコレも食べてみたいけど残すわけにはいかないから……と1皿しか頼めなかったのに、男と食事をするようになってから気になった料理を複数種類少しずつ味わえて、とてもハッピー。
そんなこんなで2人で楽しく過ごしていたのだが、翌日にはもう帰国と言う時に、他の観光客が驚いたように
「アレってもしかして銀鎌組の猟犬では?」「まさかこんな所に……?」「そっとしておこう」みたいな話をヒソヒソとしているのを偶然聞いてしまい、
銀鎌組の猟犬…?なんだその物騒そうな名前にコードネームのような名前は……となる。
何かあるのか…?と気を付けて男と過ごすと、普段はごく普通なのだけど、ふとした時に「いい子にしてろ」とか「ねんねの時間だ」とか、成人男性が使います…??みたいな、相手を見くびったような発言が飛び出す事に気づく。
疑惑の目で見れば、小柄なのに鍛えられた身体、妙に器用な指先、頬もだけど服から覗く肌に着いた傷、全てが怪しく見えてくる。
まさか、彼は裏社会の人なのでは……と思いながらも男の隣は居心地がよく、あと1日なのだからいいじゃないかと2人で史跡巡りをしたり食事をしたり流されるまま楽しく過ごし、休暇を終えて国へ戻る。
連絡先の交換をしたいと思っていたが、なんだか怪しい……となっていたので、言い出せず。
でもその後もどうしても男の事が気になって、男との話の中で聞いた彼の住む国・町の名前や銀鎌組、猟犬などの単語でネットで調べたり、さりげなく知り合いに聞いてみたりする。
他国かつ、男の国とは殆ど交流がないため、知り合いたちからは何の情報も得られないが
ネットで辛うじて彼?について書かれたページを見つける。
ほんの数行の謎のメモのようなものだが、銀鎌、マフィア、猟犬、血まみれの扇、銃弾……などの単語が書いてあった。
やはり彼はマフィアなのか……?と思う観測者。
自分に近づいたのも、偶然ではなく何かの目的があったのだろうか、と苦しくなる。
でも何の交流もない国の人間に近づく目的なんてない筈、と不安を打ち消す。
そんな日々を送っていると、同僚から実は……と新しい情報を告げられる。
なんと、今まで殆ど交流のなかった国…そう、あの男の国と、近く正式に国交が開かれる事になるというのだ。
まだ発表はされてないが、観測者がなんだかあの国の事を気にしていたから……君は色んな国の史跡巡りをするのが好きらしいし、あの国の遺跡・史跡にも興味があるんだろう、もう少ししたら今より遥かに簡単に行き来が出来るようになるよ、なんて言われる。
なんてタイミングだ!と驚くと同時に、
だから自分に近づいたのか?交流のない国の人間ではなく、これから交流が出来る国の人間だったから??と思ったり。
そしてそんな情報を、一応は政府に所属している自分よりも先に手に出来た
銀鎌組というマフィアの情報収集力にうすら寒い物を覚えもする。
いくらネットが一般への普及率が低いとは言え、新聞社などは既にニュースサイトを立ち上げている国が殆どだ。
それなのに全く銀鎌組の情報が出てこないのも、彼らの情報統制力によるものなのかもしれない。
さて、正式に国交が開始される前に、数人であちらに視察に行くという計画があるらしい。
メンバーを募集していたので、自分をと立候補した観測者。こういう時について言った経験が今までもあるので、特に不審にも思われず受け入れられる。
良くない男かもしれないとわかってはいるが、それでもまた会いたい、ずっとあいつの事ばかり考えているんだ……って思い詰めてる。
そうして行った先の国で、男が住んでいると言っていた町の近くで、仕事の相手の中でも確実にクリーンで信頼できると先に調べを付けていた人(その町の政治家)に、銀鎌組を知っているか?とそっと尋ねると、一瞬きょとんとされてから「あぁ、銀鎌組、銀鎌ね、知ってますよ」とにこやかに返される。
その返答を聞いた周りの人たちも、え、銀鎌を知ってるの?、外国の方よね、何で??となんだか和気藹々。
マフィアの話なのに、なぜ皆そんなにのほほんとしているんだ!?と混乱していると
「昔お世話になった」「うちは今まさに世話になってる」「うちも銀鎌に頼もうかと思ってるのよ」と口々にみんな言い出す。
マフィアと政治家の癒着!?一般市民も皆世話になってる!??って大混乱。
「すぐそこですから、ご存知なら折角ですし、ちょっと覗きに行ってみましょうか」
って大混乱のまま連れていかれた先は……子どもたちの笑い声が響く幼稚園。
看板には「銀鎌幼稚園」の文字。
そして鉄の門の先に見える園庭で、可愛らしい犬のアップリケのついたエプロンを身に着け、小さな子どもたちに体中にまとわりつかれ、腕にぶらさがられ、背中に登られ、快活に笑っているのは、旅先で出会ったあの男。
そう、銀鎌組とはマフィアなんかでは全くなく、幼稚園のことだったのである。
かつて幼稚園児たちの間で、マフィア×ファミリーというコメディアニメが流行った時に、発表会で子どもたちの発表の合間の余興の出し物として、先生たちだけで銀鎌組というマフィアの寸劇をやったのである。
いぬ組のせんせい、ナワーブサベダーは猟犬という役を演じていた。
それが大受けして園児や保護者達の中に、せんせいたちをあだな感覚で役名で呼ぶ人が沢山出たしマフィアの寸劇が毎年恒例の行事で、皆楽しみにしている。
ばら組のクロー先生(切り絵や工作が大得意)は、もはや本名を誰にも呼んで貰えない、皆忘れているのでしょう…とやさぐれているし、
さくらんぼ組の美智子先生は「血まみれの扇」という役名が長すぎて、誰も呼んでくれないので、それはそれで寂しがっている。
「いいこ」「おねんね」は相手を見くびってるから出るのではなくて、幼い子どもたちを相手にいつも使っている言葉が思わず出てしまう事があるだけだった。
パワーの塊の小さな子どもを相手にしているから体力づくりは欠かさないし、子どもを庇って出来た怪我があちこちにある。
アレ作ってコレ作って!のリクエストにこたえる為に指先は非常に器用。
ナワーブはその仕事が好きなのだが、「幼稚園の先生をしてる」と言った時に、似合わない!と笑われた事が過去にあったせいで、初対面だけど何となく気になる相手であるイライに対して正直に自分の職業を告げたら笑われるのではないか…という思いから素直に職業を告げるのに躊躇してしまい、その後は話したり遊んだりしている中でイライがそんな事で笑うような人ではないとわかったけど、その後尋ねられなかった事もあって職業を言ってないという事をすっかり忘れている。まぁ何やってる人かなんてどうでもいいからね!
気になっていた男が、別に裏社会とは何のかかわりもない、ごくごく善良な一般市民だという事を知り、安堵のあまりへたり込んでしまう観測者
そんな観測者の姿を見つけ、子どもにまとわりつかれながらも驚いたように駆け寄ってくる男は、あの観光地で一緒に過ごしていた時と何も変わらない様子なのに、何も怪しい所などなく。
観測者は、自分が裏社会と下手にかかわりがあるばかりに、勝手にフィルターをかけて何でもかんでも疑ってしまっていた……と反省する。
しかし、驚きの表情から先程迄の子供たちへ向けていた笑顔とはまた違う笑顔を見せ嬉しそうに声をかけてくる男に、今度こそ素直にドキドキする心臓を受け入れて、相手が一般市民なら……この湧き上がる好きだという気持ちを抑え込む必要はないんだ……と気付く一方で、
相手が裏社会の人間かもしれないという不安ばかりに目が行っており、そういえば自分も「裏社会に関わる事もある政府関係の治安維持の仕事」なんて一般市民が聞いたら、とってもとーーーっても心配するような怪しさ満点の仕事をしている事を、銀鎌組の猟犬…いや、銀鎌幼稚園いぬ組のナワーブ・サベダー先生に未だ明かしていない事を観測者は思い出すのであった。
めでたしめでたし