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    kegokawaii

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    kegokawaii

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    0時の本誌にビビり散らして、それまでにいっちょ狂い咲こうぜ!!!とよくわからない方向に突っ走った結果これが書き上がりました。なんとしても今日中にあげなきゃいけなかったので、約二日で書いたあたおかタイムアタック。癖の博覧会。

    ケイゴくんのお漏らしが許せる方のみどうぞ。

     目覚めたら見知らぬ部屋にいた。白いフローリング、白い壁、白いソファ。目に映るものは全て白だ。起きたら記憶のない場所にいる、なんていうのはウルフのおかげで慣れっこなのでそんなに動揺はしていないけれど、それにしたってここがどこだかわからない。そして記憶を辿っても、三日月を見た覚えはないのだ。
     するとすぐ後ろで人が動く気配がしたので、驚いて振り返ればモリヒトだった。オレと同じく床に寝ていた状態から起き上がったらしい。
    「あ、モリヒト、ねえここどこ?」
    「いや、オレにもわからない。なんなんだここは」
     モリヒトの身に覚えがないとすれば、魔法の可能性が高い。つくづくオレたちは突拍子もない状況に動じないよう、日々精神を鍛えられているのだと実感する。
     改めて部屋を見渡してみると、無機質で窓もドアもないただの小部屋だ。端的に言って閉じ込められている。置いてある家具は二人掛けのソファと……冷蔵庫?そして壁には謎のホワイトボードがかけられている。
    「またニコが変な魔法かけたのかなあ」
    「もしくは未回収の蝶が誰かに入り込んだ可能性もある。油断するなよ」
    「うん……あ、見て!ホワイトボードに何か、」
     先ほどまで真っ白だったホワイトボードに、黒いインクが浮き出てきた。徐々に輪郭がはっきりとしたその文字列の意味がわからず、二人同時に声を上げる。

    「「おもらししないと出られない部屋???」」

     そう、ホワイトボードに浮き出た文字は「おもらししないと出られない部屋」だ。
    「これって何かの暗号?」
    「わからない……。下手なことはできないが、ちょっと力づくで解決するか試してみてもいいか?」
     言うなりモリヒトは、気合を溜めて思い切り壁を殴った。ドン、と大きな音を立てて部屋が少し揺れる。近くで見ているオレにも伝わるくらいの衝撃だ。それでも壁は傷ひとつ付くことはなかった。
     モリヒトが全力で殴ってもビクともしない壁。それを見て、ある仮説が確信に近づくのを感じた。オレはこの状況に、一つだけ心当たりがあった。
    「武力行使は無意味なようだな」
    「そうだね。……ねえモリヒト、たぶん、もしかしてなんだけど、結構高い確率であのホワイトボードの指示に従わないといけないのかも」
    「……それは、どういう、」
    「うーんだから、この場合はどっちかが「おもらし」しないと絶対にこの部屋から出られないってこと」
     オレの勘が正しければ、これは理不尽かつ唐突に放り込まれる「○○しないと出られない部屋」だ。伊達にあらゆるコンテンツを消費してきたわけじゃない。pixivで見たことある。一番ポピュラーなのが「セックスしないと出られない部屋」なので、それじゃなくて良かったと思う。いやそれにしたって。
    「おもらし、ってのはお漏らしのことか?」
    「それがよくわかんないんだけど、たぶんそうじゃない?他に考えられないし」
    「誰が」
    「オレかモリヒト」
    「オレは絶対に嫌だぞ」
    「オレだってやだよ!」
    「……まあいい、状況はだいたいわかった。わかりたくないが」
     その当人たちが想定もしていないことをさせるのがこの部屋の醍醐味なのだろう。頭では理解できてもいざ現実に起こると感情は到底ついていかない。てか現実に起こることってあるんだ。モリヒトは諦めたようにふう、とため息をついてソファに座った。ケイゴも来い、というように隣をぽんぽんと叩く。
    「とりあえず座って落ち着こう。そうだ、せっかく冷蔵庫があるんだから中に何か飲み物でも入ってるんじゃないか?」
     オレが呼ばれてソファに座ったのと入れ違いで、モリヒトが冷蔵庫に向かう。扉を開ければ庫内にはあらゆる飲み物がぎっしりと詰まっていた。モリヒトはその中をゴソゴソと調べたのち、アイスコーヒーのペットボトルを一本取り出して戻ってきた。
    「ケイゴ、どんなことになろうとオレが絶対ここから出してやるから安心しろ。まあコーヒーでも飲んで落ち着いてくれ。できればオレが淹れてやりたいところだが仕方ないな」
    優しい眼差しでキンキンに冷えたコーヒーを手渡される。しかも丁寧にキャップまで開けて。モリヒトはこんな時でも人を気遣う余裕がある。それがすごいと思うし、少しだけ自分の小ささが露呈するようで恥ずかしくもあった。
    「あ、ありがとう」
     受け取ったコーヒーにありがたく口をつける。そういえば今年の夏はモリヒトが水出しコーヒーなんてのにこだわって、そこらの喫茶店より美味しいアイスコーヒーを毎日飲んだ。それに比べればペットボトルのこれは風味も香りも全くないが、喉が渇いていたのでごくごく飲んでしまう。モリヒトは何も飲まなくていいんだろうか。喉乾いてないのかな。
     ペットボトルを半分ほど飲んだところで、満足して口を離した。その様子を隣に座るでもなく、正面に立ってずっと凝視していたモリヒトが少し焦ったように言う。
    「もういいのか?」
    「?うん、もう十分」
    「……まあ、そうだよな。じゃあケイゴ、左手出してくれるか?」
    「え?」
    「いいから」
     モリヒトが何を考えているのかさっぱりわからないが、言われるがまま左腕を前に差し出した。モリヒトは少しだけほっとした顔をして、それからオレの腕を掴んで手首に嵌めていたリストバンドを引き抜いた。
    「あ!?」
    「すまんケイゴ、この状況でウルフに変身されたら厄介なんだ。これは預からせてもらう」
    「えちょっと待って、え!?は!?」
    「気づくのが遅いな。ケイゴ、さっきのコーヒーに利尿剤を混ぜた。オレのことを全面的に信頼してくれて嬉しいが、お前はもう少し警戒心を持った方がいい」
    「ウソだろ……」
     オレが感動したモリヒトの気遣いも、頼もしさも、全部ウソだった。いや、この部屋から出してやると言った言葉は真実だろう。だけどその方法が!!完全にオレ犠牲じゃん!!モリヒト相手に警戒なんかするわけないだろ!!この鬼畜!
    「利尿剤なんかどこにあったの」
    「冷蔵庫の扉側のポケットに入ってた」
    「うう……ひどいよモリヒト……」
     本当に涙が出そう。こんな騙し討ちみたいなことしといて、そりゃどっちかが漏らさなきゃ出られないって言ったのオレだけど、でもこんな一方的なことってある?
     絶望の顔でソファに倒れ込むオレに、モリヒトは膝をついて顔を覗き込んで言った。
    「安心しろケイゴ、オレはお前のお漏らしを全部受け止めるから」
     イケメンイケボで何言ってんだよこいつマジで。今日のこと一生根に持つからな。

    ◻︎

     あれからどれくらいの時間が経ったかわからない。この部屋には時計もなければスマホもない。ただ確実に時間が経過しているとわかるのは、迫り来る尿意が足早になっているからだ。
    「ねえなんか部屋寒くない?」
    「そうだな、さっきより室温が下がってる」
     オレたちは今二人とも、長袖のTシャツに長ズボンを履いている。それで少し肌寒いと感じるので、冷房でもかかってるんじゃないだろうか。エアコンは見つからないが、こんななんでもアリな空間だから空調の変化くらい容易いに違いない。
     そしてそれの何がまずいって、寒いとおしっこがしたくなるのだ。さっき飲んだ利尿剤も効果を発揮しているのだろう、正直もうおしっこのことしか考えられない。
    「ちょっと、ほんとにトイレ行きたいかも。どうしよう」
    「いいからここでしなさい」
    「絶対やだ」
     お母さんが三歳児に言い含めるような物言いだが、高校生男子が高校生男子にここでおしっこしろって言ってるのどう考えても頭おかしい。膀胱に力を入れて堪えれば、もう少し持ちそうだ。
     さっき、念の為部屋の中をもう一度探索してみたが、当たり前にトイレはなかった。飲み物がパンパンに詰まった冷蔵庫には本当にさまざまな種類のものが入っていて、お取り寄せにありそうな高級フルーツジュースなどとても魅力的だ。ここにトイレがあったなら是非飲んでみたかった。冷蔵庫の中身を物色した後はもうやることもやれることもなく、今はただ白いソファに二人並んで奇跡が起こるのを待っている。オレの膀胱が限界を迎える前にどうにか解除されないだろうか、この部屋。
     無慈悲に刻々と過ぎていく時間。オレはひたすら尿意を我慢して、もじもじするしかない。膝を擦り合わせて耐えるオレを横目で見たモリヒトが、不意にさっきのコーヒーのペットボトルを手に取った。そして、利尿剤入りのソレを自らの口に含んだ。
    「モリヒト!?」
     もしかして、代わりにおしっこしてくれようとしてるのだろうか。さっきは鬼畜なんて言ってごめん、やっぱりモリヒトは優しい。そう思って感動していたら、唐突に顎を掴まれて唇を押し付けられた。
    「んん……っ!?」
     モリヒトの唇がオレの唇にビッタリ合わさって、無理やりこじ開けられる。モリヒトの方が座高が高いからどうしてもオレが上を向く形になって、重力に従って流れ込んできた生ぬるい液体が口内に溢れて喉を伝う。
    「……っん、……っ」
     モリヒトの舌が悪戯に口内に触れる。オレがコーヒーを飲み込んだことを確認しているのだろうが、上顎を舌で撫でられたら背中がゾクゾクして力が抜けた。
    「……は、」
     息をするのを忘れてしまって、モリヒトの唇が離れてようやく酸素を吸い込んだ。体と脳が突然の事態を飲み込めずに、頭がクラクラした。今何が起こった?
    「ケイゴ、もう一回だ」
    「ふぇ……?」
     モリヒトが再びコーヒーを口に含む。二度もやられてたまるかと咄嗟に唇を固く結ぶが、腰を抱かれて半ばソファに押し倒されるような形で唇を重ねられたら、抵抗などできなかった。どう頑張ったってモリヒトの方が力も意志も強い。口内に洪水のように溢れるコーヒーとモリヒトの唾液を必死に喉に流し込んで、それでも口の端から溢れた液体が顎を伝ってTシャツの胸元を濡らした。
    「……、ん……」
     モリヒトはやっぱり最後に口の中を舌でぐるりと撫でた。甘い刺激が全身に響いて、膝の力が抜けるのがわかる。オレが完全にソファに倒れないように、腰に回されたモリヒトの腕に力が入るのがわかった。それからその反対側の手が、弛緩したオレの下腹部に触れた。モリヒトの行動に疑問を抱くより早く、オレの下腹部に置かれたモリヒトの手に力が込められ、ぎゅうと膀胱を圧迫される。
    「!!なにすんだよ!!?やめろよばか!」
    「やめない」
     咄嗟にモリヒトの腕を跳ね除け……られることはなく、強靭な力によって腹部に触れられたままだが、身を捩ってどうにか圧迫からは逃れた。尿意は限界をとうに超え、気合いだけでどうにか保っているのだ。もう完全にやばい、足された利尿剤と今の刺激であと一分と我慢できる気がしない。諦めたらそこで試合終了ですよとかそういう問題じゃない。
     心臓がバクバクして、頭の中がおしっこでいっぱいになる。それにしたってモリヒトひど過ぎないか。いや、お前はどうしたらこの状況を一刻も早く打破できるかを考えての行動だよな、わかるよ、いやわかってたまるかよ。
     モリヒトに抱きかかえられている状態のまま、それでもどうにか尿意を堪えたくて前屈みになろうとするのを、腹部に添えられたモリヒトの手が阻止する。
    「ちょっと待ってほんとに出る、出ちゃう、やめて、」
    「出していいんだ」
    「いいわけないだろ……ッ」
     あぁ、もうダメかも。目の前がチカチカする。一歩でも動いたら決壊しそうだけど、理性がソファの上はまずいと叫ぶ。ほんとになんでこんなことになってるんだ。涙出てきた。
    「あの、せめて、どっか端っこの方で……」
     縋るように見上げれば、少し滲んだ視界の中に真剣な顔でこちらを見つめるモリヒトの瞳が映る。オレの弱々しい懇願を聞いて、その瞳はふっと穏やかに細められた。
    「そんなこと気にしなくていい。そのための部屋なんだろ?そのままここですればいいから」
     そんな慈愛の表情で言われても。部屋を気にしたのはもちろんだけど、モリヒトに見られたくないという思いだって大きいのだ。だからせめて離れてほしい。思考はぐるぐる回るが、うまく言葉にできずに溢れたのは涙と呻き声だけだ。
    「うーーー……」
    「ほら、大丈夫だから。ケイゴ、」
     モリヒトの硬い手のひらが下腹部を優しく撫でた。その瞬間、緊張がぷつりと切れて身体が極端に弛緩していくのがわかる。ショワァァと微かな水音が無音の部屋に響く。
    「あ、あ……やだ、やだ……っ見ないで……!」
     一度出してしまったら止められるわけもなく、勢いよく放たれる尿は下着を濡らし、ズボンにも滲み出てチノパンの色を変える。温かく股間を濡らす尿はとんでもなく不快だが、そんなことより羞恥心で死にそうになった。
    「見るなって……!!」
     座っていたソファの尻の下には徐々に水溜まりが出来、オレの足とソファの上から滴り落ちた尿が白い床も濡らした。モリヒトはさっきと同じ姿勢でオレを抱えたまま、黙ってそれを凝視している。目を背けるなり、せめて茶化して笑うなりして欲しかった。
    「……ぜんぶ出た?」
    「………………うん」
    見れば、モリヒトのズボンにも染みて、少し濡れている。こんなに近くでくっついてるんだから当然だ。でもモリヒトはそんなことをこれっぽっちも気にする様子はなく、オレに向かって微笑んで「がんばったな」と幼いこどもを褒めるように言った。そんな優しい声出したって、オレはモリヒトの鬼畜の所業を今後絶対に忘れないからな。

     そうしておしっこまみれのオレとソファは、人智を超えた部屋の力によってすぐさま元通りになる、なんてことはなく。気付けば一枚のドアが顕現していた。正直この状態で部屋を出ろと言われたって無理がある、と思っていたら、ドアの向こうを調べに行ったモリヒトが難しい顔をして戻ってきた。
    「ミッションにはまだ続きがある」
    「は?」
     咄嗟に見たホワイトボードに浮き出た文字は

    『二人一緒に風呂に入らないと出られません。着替えとタオルは用意してあります』

    「あのドアの向こうは広めの浴室だ」
     こうなったら風呂に入れるのはありがたいけど、二人一緒ってのはなんなんだ。モリヒトはもう覚悟を決めたような顔をして、「オレがお前を抱えるからそのまま風呂まで行こう」とか言ってる。順応性が高すぎる。ただそれに負けないくらいオレも不測の事態には慣れているので、おしっこで濡れたオレの膝の裏にモリヒトが手を差し込んできても今更騒ぎ立てることなく身を任せた。もう全部どうでもいい。
     願わくば、どうか、絶対に、次のミッションで打ち止めにしてほしい。ミッション進行型の出られない部屋が最後にどこに行き着くのか、オレが昔見たpixivによれば結局定石に辿り着くのだ。みなまで言うまい。あとせめて「○○しないと出られない部屋」の定型文は最後まで維持してほしい。
     オレは全てを諦めて、カッチカチの筋肉に抱かれたまま、カッチカチの意思で部屋脱出ミッションをこなすであろうモリヒトと共に浴室のドアを開けた。
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    kegokawaii

    DOODLE結婚指輪(と同等の価値があると双方が判断した指輪)を作るモイケイの話です
    もっとカラッと元気なのを想定してたのにどんどん湿度が増していってすごくじっとりしてる。すぐセンチメンタルに寄っていくのよくないクセだよ。

    26歳のモイケイが社会人になって実家出て二人暮らししてる設定のパラレルだと思ってください。
    私が工房の人だったら早よ帰れって言うと思う
    「ケイゴ、指輪作るか」
     なんの予定もない土曜の昼だった。遅く起きて、モリヒトが作ったチャーハンを向かい合って食べていた。オイスターソースとウスターソースを両方使うのがキモなんだと炒飯の蘊蓄を一通り話したあとに、モリヒトは指輪を作ろう、と言った。
     指輪?と思わず聞き返そうとして、せまいリビングの棚の上に置いてある卓上カレンダーが目に入って、ひとり納得した。モリヒトと友達以上の関係になってから、ちょうど十年くらい経つ時期だ。自信はないけど、たぶん。
    「いいんじゃない」
     モリヒトは区切りとかそういうのを大事にする人だから、モリヒトが今作るというなら、今がちょうど良いのだろう。なんのためにとか、どういう意味のとか、そんなことは聞かない。聞いたってその指輪がオレたちを証明する道具になることはないのだし、オレたちはオレたちを誰かに証明するつもりはない。ただ、モリヒトから言ってくれたことが嬉しかった。揃いの指輪を嵌めようと、思ってくれたことが嬉しかった。
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