にれさく ハグの日「桜さん! おはようございます!」
今日も登校中に楡井はそうオレに呼び掛けてから、身体に飛びついてくる。
「ぶっ……あのな! 飛びつくんじゃねーって言ったろ!」
「えへへ、すみません。桜さんの姿が見えるとテンションあがっちゃって」
『すみません』とは言ってても、オレから離れる様子はない。嬉しそうに抱きついてきて、ちょっと下から見上げられると、泣き虫の楡井はどことなく小動物みたいに見えるせい、だと思う。
「せめて腕にしろ、腕に! 腕なら引っ張られてもなんとかなっから」
「はーい」
すっと離れた楡井は、腕を絡めて小さく『やった』と呟いて、なんだかよくわからない鼻歌まで始める。
(そんなに嬉しいもんかね……?)
『桜さんが大事なんです』
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