俺に秘密がある。
それはサンデーさんが人ならざるものに見えてしまっているということだ。
サンデーさんは街外れの大きな館に住んでいて、街の人達からの他人には言えない悩みを聞く仕事をしているらしい。評判はよく街の人からはとても好かれている。
普段街には降りてこないのも相談相手が多く、忙しいかららしいがたまに用事があって街に降りてくることがある。そんな時はいろんな人達に囲まれてしまう。
そんな超人気者のサンデーさんが俺からはどう見えているかというと、
頭上には金の輪が浮いていて、耳の後ろ辺りから羽が生えている。
最初はコスプレ?とも思っていたが、俺自身が昔一度サンデーさんに用事があり話をした際に耳の後ろの羽がパタパタと動いているのを間近で見たことがある為、コスプレではないのだろうと確信していた。
「なぁ、あれってどうなってるんだろう。金の輪っかに羽なんてなんか天使みたいだよな」
「輪っか?羽?穹酔ってる?」
「確かにあの人優しいけど天使は言い過ぎ」
「でも、あの顔にあの性格だろ。ファンクラブとかあるみたいだぞ」
複数の友達にサンデーさんのことに関して話題を振ってみたが帰ってくる返答に同意はなかった。あれはきっと俺にしか見えていないのだろう。
「はは。嘘嘘忘れてくれ。」
なんだかそれ以上踏み込んではいけない気がして、以降サンデーさんには近づかず友達にもその話題は出さないようにしていた。
ある日サンデーさんの屋敷で大きなパーティーがあると街中に周知があった。
「いつも頑張っている皆さんを労りたい。少しでも悩み解決の糸口になれば」とのこと。
街の人たちは嬉々として参加しようしていた。それは俺の友達も例外ではなく
中々会えないサンデーさんに会えるチャンスと張り切っている。
「なぁ!穹も行こうぜ!」
「いや、俺はいいよ」
出来る限りサンデーさんから離れていたかった俺は不参加を決め込む予定だ。
「えー!頼むよ!一人じゃ心細いんだって…」
「いや~」
「おいしい飯も出ると思うぞ!お金もかかるわけじゃないし!なぁ!お願い!」
俺はまだ少しだけ不安が残ったが友達の熱い想いに負けてパーティーに参加することにした。ただ飯がくえるならという理由では決してないんだ。
―――――――――――
パーティーの日当日、ある程度正装し俺は友達とサンデーさんの館に向かう。
一度だけ来た事があるがとてつもなく大きい。今回の会場は館内や庭など広範囲で行われるみたいだ。会場内の飾りつけはとてもきれいで、食べ物も既に並べられ始めており辺りからおいしそうな匂いがする。お昼ご飯を抜いてきて正解だったかもしれない。
「な!来てよかっただろ!」
「あぁ、そうだな」
友達は少し自慢げに胸を張っているがお前が用意したわけじゃないだろと小突いてやった。
パーティーが始まるとすぐにサンデーさんはたくさんの人に囲まれていた。例に漏れず友達もその人たちの一部となっており、心細いとはなんだったのか勇敢にも話かけに行っている。
そんな団体とは少し離れた場所で俺は肉料理を食べていた。普段家では食べられないようなランクの肉な気がする。とてもジューシーでおいしい。
豪勢な料理を噛みしめながら、サンデーさんの方を見てみる。
変わらず俺の目には頭上の金の輪や羽が見えていたが周りの人たちは特に気にしている様子はない。
一瞬サンデーさんと目が合った気がするが、まさか一度しか会ったことがない俺のことを覚えているわけもないし気のせいだろう。
俺は料理を全制覇することに集中することにした。
―――――――――――
たくさんの料理を食べて満足した俺は人が少ないバルコニーに出て夜風に当たっていた。あの料理がおいしかったなぁ、帰ったらゲームでもするか~なんて今後のことに関して思いにふけていたところ、後ろに人が立っている気配に気が付く。
サンデーさんだ。
「こんばんは、今日のパーティーは楽しんでいただけましたか?」
「サンデー…さん、はい、料理もおいしかった…です」
「それはよかったです。あぁ敬称も敬語も必要ないですよ」
「そう?助かるよサンデー」
隣良いでしょうか?そう言うサンデーに俺は頷き、横に並びながら話をした。
最近は悩みを聞く頻度が多くて皆さんが心配だとか、少しでも息抜きになればよかっただとか。「料理もおいしかったし、皆サンデーと話せて嬉しそうだったよ」と俺が今回のパーティーに関して感想を言うと「そうですか」と少し恥ずかしそうに笑っていた。
彼から生えている羽も少し照れくさそうに彼の顔を隠している。
感情が豊かな羽に少しかわいいなと思いつつ、その後は他愛もない話をしていた。
そうして時間はすぎていく。
「実はですね」
一通り話終えると重い口調でサンデーが口を開く。
「今探している人がいるんです。」
「探し人か…俺でよければ探すの手伝うよ。どういう人なんだ?」
サンデーは、街に降りることが少なく降りても囲まれてしまう為、一人の時間が多く取れないことを俺は知っている。
たった数十分ではあるがサンデーと話をして、彼の人となりを感じることができた俺は最初に感じていた隔たりはとっくになくなり彼の力になりたいと感じていた。
「本当ですか?ありがとうございます。」
彼は嬉しそうに話し始めた。
「その人はワタシの本当の姿をみることができるのです。
実はワタシの頭上には金の輪が、羽も生えているのです。なんて…信じてくれますか?」
サンデーが言っていた特徴が見えている俺は、もしかして俺のことか?と言い出そうとした瞬間続ける。
「もしも見つけることができればワタシの目の見えるところに置いておきたいのですよ。
その人は運命の人ですから…鎖などをつけることも厭いませんし館からも出すことはないでしょう。生涯をかけて愛そうと思っています。」
言わなくてよかった。なんかすごい怖いことを言っている。
「はは、そうなんだ…じゃあ見つけたらまた連絡するな、俺友達探しに行かなきゃ…」
さっきまで沸いていた親近感が消し飛ぶぐらいの束縛宣言に俺はドン引きしつつ、やはり彼に近づくのはもうやめておこうと誓った。
「そうですか。それではよろしくお願いしますね。」
「あ、あぁ。」
早くその場から離れたかった俺は、軽く会釈をし友達を探しに行こうとする。
ふとサンデーの服を見るとゴミ?が付いているのを見つけた。
俺はもう会うことはないと思っている為、最後の親切にとってやることにした。
「サンデー、服にゴミがついてる。とってやるから少しじっとしてくれ。」
「おや、すみません」
「お前でも気づかないことあるんだな。ってなんだこれ、羽…?」
「おや、おかしいですね」
その言葉が聞こえた瞬間、サンデーに腕を捕まれひねあげられる。
「いっ!な…に…」
「アナタ、やはり見えていたのではないですか」
サンデーは普段見せないどすぐらい笑顔でこちらを見ていた。
なにが起きているかわからず逃げようとしたが
その瞬間、バチンと感電するような痛みを感じ俺の意識は遠のいていく。
薄れる意識の中、俺は一つ失敗をしてしまったことに気づく。
青みがかった羽…。サンデーに生えている羽も確か同じ色をしていた。
―――――――――――
「サンデーさん、息子が帰ってこないのです。警察にも届けているのですがどうすれば見つかるでしょうか。」
女は泣く。
「きっと息子さんは自分探しで家出をされているのでしょう。いずれ帰ってきます。
それでも帰ってこない場合は彼に新しい目標が見つかったのでしょう。応援してあげるのも一つの親心ですよ。」
「そう…なのでしょうか。」
「ええ、私を信じてください。」
女は泣きながら帰る。連日相談に来ているがそろそろ諦めるだろう。
パーティー後の失踪ということで警察が館にやってきたが、一度直接お話をし何も見つからないと分かると早々に撤退していった。
「ロビンが帰ってきたら紹介しないとですね」
愛しい片割れのことを考えながらワタシは彼のもとに戻る。
「穹さん、戻りましたよ。」
「いや…帰して…」
彼は部屋に入ってきたワタシから逃げようと部屋の隅に移動する。
だが彼につながれた鎖がそれを許さない。
「おや、もう一度教えないといけませんか?あなたの家はここですよ」
ワタシは彼に笑顔を向け、ガチャンとドアの鍵を閉めた。