「すべては貴方様の為に…」
片膝をつき深々と下げられる頭。地を見つめる彼の視界に鱗衣を纏った青白い手がすらっと差し伸ばされた。
鋭く尖った赤い爪。骨ばった細長い指が彼の喉元を舐めるようになぞり上げ、顎の裏で留まった。先端に力が込められ、視線が合うよう軽く押し上げられる。
「決して俺だけではない。俺でありポセイドン様でありこの海と地上の真の秩序の為だ。わかるな?」
「…はい」
「クハハ……素直な奴」
海界七将軍、リュムナデスのカーサ。彼は切れ長の目を弓なりにしならせると踵を返し、飄々と南氷洋の柱の間へと歩んで行った。