Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    hakoheiyagame

    はこへいやのポイピク エアスケブは文章のみかつ気まぐれです

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 28

    hakoheiyagame

    ☆quiet follow

    ネタバレほぼないけど一応スリクリミィの後の話

    たかまつSS 「ひとりごはん」 高瀬が入院した。バス事故にあったらしい。幸い数週間で退院できると言われたが、職場の上司に伝えたら職場から放り出された。
     「旦那の一大事に仕事してる場合か早く行ってこい」
     ……まだ旦那じゃないけど。いやまあ……もうすぐそうなるのでそこはいいんだけど。
     ともかく、私は高瀬のいる病院へ向かうことになった。

     「高瀬」
     「あ、茉莉ちゃん」
     病室へ行けば、高瀬が困ったようにへらりと笑った。こんなことになるなんてね、といつもより掠れた声で言う高瀬は、呼吸器を少しやられているようだった。
     「いつも忙しいし、たまにはしっかり休んでもいいんじゃないか」
     「そうだけど。ご飯作れないから…あ、でも暫くは作り置きでなんとか…」
     「私だって自分のことくらいできるって。そりゃまあ高瀬より上手にって訳にはいかないけど」
     というより、ここまで来て私の飯の心配をしてる場合か入院レベルの怪我したのは高瀬だぞと言う言葉は寸前で飲み込んだ。直感だけど、そんなこと言ったらめちゃくちゃ話が長くなる気がしたので。
     「じゃ、また来るから。洗濯物回収しに」
     「うん、ありがとうね」
     それだけ言って、帰ることにした。

     私は基本的に大雑把だが、一応一通りの家事はこなせる。食事の時はここ数年高瀬の家に上がり込んでいたとはいえ、一人暮らしをしていたのだ。最低限どうにかはなるのである。勿論、料理だって手の込んだものは作れないが、どうとでもなるし、実際なったのだが。

     「……あんまり美味しくない」

     高瀬より美味しく作るとか、そんなことは考えていない。それでもレシピ通り、特に変な部分もなく作ったはずなのに。
     なんというか、味気がない。
     「まあ、そんなもんだよね」
     最近舌が肥えたせいかもしれないし。食べられない訳じゃないし。

     そんな数週間を過ごし、高瀬は無事退院することになった。
     さすがに私も退院したての高瀬に料理を作らせるほど鬼じゃない。
     「これ、茉莉ちゃんが作ってくれたの…」
     驚く高瀬に早口で告げる。
     「不味くはない、ってくらいだけど食べられない訳じゃないから」
     暫くは我慢してくれよな、と言うと高瀬は首を横にぶんぶん振って
     「そんな事ない僕すごい嬉しいよありがとう茉莉ちゃん」
     と満面の笑みを浮かべた。
     「お、おう…」
     「いただきます」
     躊躇いなく全ての料理に箸を付け、美味しい、と笑顔を浮かべる高瀬に大袈裟だな…と思いながら私も一口。

    「……美味しい」

    あれ、おかしいな。作り方変えてないのに。
    そう思いながらうんうん、と頷く高瀬の顔を見て、料理の皿を見て。

    ……なるほどな

    やっぱり私には、この調味料が一番大事ってことみたいだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works