彼女は中華風マーメイドラインのドレスに身を包み、静かに壁の花と徹していた。話しかけようとしようとすると者もいれば、ただ眺めるだけの者。だが彼女は手に持っていたグラスを眺め、時にはくるくると回したりしていた。しかし、それにも飽きたのかグラスを近場へのテーブルに置くと会場を後にした。髪に刺した蝶の簪が鱗粉を振り撒きながら羽ばたくように。
「いたっ……」
会場を出て予約している部屋に向かう途中、ふみやの足に鈍い痛みが走った。その痛みが走った方の足を見ると血が滲んでいるのが分かった。履き慣れていないヒールのせいか、靴擦れを起こしている。仕方なしに靴を脱ぎ、裸足で部屋に戻ろうとした。
「大丈夫ですか?」
すると背後からか声をかけられ、その方向を見るとそこにはウェーブのかかった赤みの強い紫の髪、そして空の様な瞳を持った男性が居た。まだパーティは終わって居ないので誰も通るはずがなく、ふみやはただただ驚いていた。
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