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    subaba_haka

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    subaba_haka

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    天ふみ💜🧡
    「貴方に送る花束を」

    ○6月1日 「あなたの魅力に目を奪われる」
    ふみやは自室で本を読んでいた。随分と長い時間読みいっていたのかあと数十分で日が変わろうとしていた時、控えめにドアを叩く音が聞こえた。
    「ふみやさん、天彦です。入ってもよろしいでしょうか?」
    ドアを叩いたのは天彦だった。またいつもの添い寝をしにきたのだろうか。ふみやは気分が良かったので応じるため本を閉じた。
    「いいよ」
    するとゆっくりとドアが開かれた。そして、天彦の手には一輪の橙の薔薇。
    「何それ」
    「これはプリザーブドフラワーです。僕がショーに出させてもらってる店の御贔屓さんが最近始められたそうで頂いたものです」
    「そうなんだ」
    「よかったらどうぞ」
    「なんで?」
    「ふみやさんの部屋に合いそうなので」
    「この部屋に?」
    「えぇ」
    「ふーん」
    そう言うとふみやは無言でプリザーブドフラワーを受け取るとそれをくるくると回して眺めた。あまり貰ったことがなかった為、ふみやは少しだけ新鮮に思えた。
    「有難う」
    「いいえ、では良い夜を。おやすみなさい」
    「え」
    「?」
    「いや、一緒に寝るんじゃないんだ」
    天彦は目を見開いた。まさかふみやからそんな素敵なお誘いが来るとは思わなかったのだから。
    「ふみやさんからお誘いが来るとは……、天彦とても嬉しいです。では、入浴を済ませたら是非とも天彦の部屋で熱い夜を過ごしましょう」
    そっと天彦はふみやの頬に触れるようなキスを贈った。ふみやもお返しとばかりにキスを返す。
    「後程また迎えにきます」
    ふみやは無言で頷いた。天彦は行ってきますと額にキスを贈るとふみやの部屋を後にした。天彦が迎えに来る間、ふみやは薔薇を眺めた。橙の薔薇のプリザーブドフラワー。枯れない薔薇。偶にはこんなのも悪くないな、とふみやは思った。そして、再度ドアを叩く音が聞こえるまであと数十分。

    ○6月3日「熱烈な恋」
    午後三時。天彦とふみやはカフェに居た。所謂デートだ。雰囲気の落ち着いたそこは二人の行きつけである。天彦もここのカフェは気に入っており、行く時は必ずふみやとのみ通っていた。何故ならばここはふみやと恋人同士になるきっかけになった場所だからだ。
    その日も今日のように二人でこのカフェに来ていた。幸せそうにケーキを食べるふみやを見て思わず出たのだ。天彦の口から「好きです」と。すぐに訂正しようとしたが、差し出された一口サイズのケーキ。そして恥ずかしながも「俺も好き」というふみやからの返事。その時食べたケーキの味は今まで食べたどんなケーキよりも甘かった。
    「天彦どうした?」
    「いえ、ふみやさんと二人でここにまた来る事が出来て幸せだと思いまして」
    「ふーん、すみません。この季節限定の紫陽花のケーキ一つ。天彦は?」
    「僕はブレンドコーヒーをお願いします」
    本日の目当ては季節限定のスイーツ。紫陽花をモチーフにした色鮮やかなケーキだそうだ。待っている間、たわいのない話をしていた。すると天彦の視界にテーブルに置かれた赤い薔薇が入った。
    「そうだふみやさん知ってますか?花言葉みたいに薔薇には本数によって意味があるそうですよ」
    「そうなんだ」
    ふみやはあまり興味なさそうだった。だがそれも束の間、目当てのものが運ばれてくれば目を輝かせ一口、また一口と口の中に吸い込まれていった。それを天彦は珈琲を飲みながら眺めていた。すると、ふみやは手を止めた。
    「天彦は何本俺にくれる?」
    「そうですね………」
    天彦はふみやに渡したい薔薇の本数を考えた。そしてふと先程目に入ったテーブルに置かれた赤い薔薇の数を数えた。三本。意味は……。その瞬間、あの時も同じ様にテーブルの上にあった事を思い出したのだ。
    「三本です。今は…」
    そう言うと天彦はふみやの口に手を伸ばすとそっと頬に触れ、そして唇を指でなぞった。見ると手にはクリームが付いており、そのまま口に含んだ。突然の事にふみやは呆気に取られた。
    「こんな所でやめろ」
    「すみません、つい」
    ふみやの反応を見て天彦は思わず微笑んだ。しかし、ふみやはそれが気に食わなかったのかテーブルの下で天彦の足を軽く蹴った。だがそれが照れ隠しだとは分かっていた。耳を赤く染めていたのだから。
    「ふみやさん、『愛しています』」
    「…………俺も」
    自然と手が重なった。


    ○ 6月5日 「あなたに出会えたことへの心からの喜び」
    ふと、肌寒い感覚がありふみやは少しずつ目を開いた。ゆっくりと体を起こして背伸びをする。寝起きのしゃっくりは出ていなかった。依央利が夕飯の準備をしているのか食欲をそそられる様な香りが鼻を掠めたのだ。時計を見ると午後五時。依央利お手製のケーキを食べたのが数時間前。その後、本を読んでいた。だが、いつの間にか寝てしまっていたのだろう。ブランケットがかけられていた。ふと、先程まで読んでいた本はと辺りを探すとテーブルの上に置かれていた。手に取り続きを読もうとして開くと何かが落ちた。拾うとそれは見慣れない白地に少し燻んだ銀の糸で五本の薔薇が刺繍された栞。ふみやは普段本に備え付けられた栞紐しか使っておらず、これは別の誰かのものだと伺えた。
    「依央利」
    「どうかされましたか〜?」
    「これ挟んだ?」
    「あー、それ天彦さんが挟んでましたよ。ふみやさん本を読みながら寝落ちしちゃったらしく、それにブランケットも!僕がかけたかったのに…!」
    ふみやは依央利の悲痛な叫びを聞き流しながら再度栞を眺めた。随分と長い間使っていた事が分かるが大切に使われていたのかとても綺麗である。裏返してみると下の方に日付とローマ字で天彦の名前が入っていた。きっと天彦の母が作ったものなのだろう。
    「皆さん〜!もうすぐお夕飯ができますよ〜!」
    依央利声と共にふみやは現実へと戻された。天彦が挟んでくれたように栞を本に戻そうとした。その瞬間、窓から太陽の光が差し込み、刺繍が銀色から淡いオレンジ色に染まっていた。


    ○6月6日「貴方に夢中」
    午後六時を知らせる放送がナポレオン商店街に鳴り響く。天彦は帰路についていた。片手に上質な紙袋を持って。
    「天彦」
    すると背後から聞き覚えのある声が天彦を呼んだ。振り返るとそこにはふみやがいたのだ。
    「ふみやさん」
    「おつかれちゃん。今帰り?」
    「はい。ふみやさんもですか?」
    「うん。ここに行ってきた」
    そう言うと手に持ったケーキの箱を見せた。ロゴはふみや行きつけのあのファンシーな雰囲気のカフェのものだろう。
    「それなに?」
    「これはですね、ふみやさんにです。きっと喜ぶと思いますよ」
    「そうなんだ」
    「ええ」
    紙袋からは六本の薔薇が箔押しされた化粧箱が垣間見えた。
    「もしかしてあれ?」
    「そうです。あれです」
    「やったー」
    「夕食後、天彦の部屋で食べましょう。 二人だけの秘密です」
    そう提案するがふみやからの返事は返ってこなかった。それどころか何か悩む様な表情をしたのだ。
    「どうかしましたか?」
    「天彦、今から予定ある?」
    「いえ、ありませんが……?」
    「デートしよ」
    「今からですか?」
    「うん。今から」
    「しかし、依央利さんが夕飯の準備をしてくださってるのでは?」
    天彦はふみやの突然の発言に驚いたのだ。ふみやからのお誘いは確かに嬉しい。しかし、ハウスでは依央利が夕飯の支度を終えてる時間なのだ。事前に連絡を入れているならまだしも、そうではない。それにこの通りでふみやに会ったのも偶々なのだ。折角のお誘いだが断ろうとした。すると先程とは打って変わりふみやはまるでイタズラが成功した子供のような表情をした。
    「大丈夫、依央利には言ってる。今日、俺も天彦も帰らないって」
    天彦は驚いた。そして気づいたのだ。先程の悩んでいる素振りはフェイク。もしかすれば最初からそのつもりで天彦がこの通りに来るのを待っていたのかもしれない。その様な考えが横切ったのだ。
    「ふみやさんあなた……、もし僕に用事があったらどうしたのですか?」
    「まぁまぁまぁ」
    すると控えめに右手の中指に触れられる感覚。
    「ね、ダメ?」
    ―――――あぁ、彼はどこまでも僕を夢中にさせる。まるで麻薬のように。
    前言撤回をする様に天彦はその誘いに返事をする様に指を絡めた。
    「僕の愛らしくていたずら好きな恋人からのお誘いです。断るわけがないでしょう」
    その返事にふみやはまるで猫の様に目を細めた。そして二人は来た道を戻っていった。


    ○6月9日「いつも貴方を思っています」
    午後九時を過ぎた頃、天彦の部屋のドアが軽く叩かれた。
    「どうぞ」
    中から返事が来ると同時に扉が開かれるとそこにはふみやがいた。しかし、立ち止まったまま。髪がまだ濡れており、肩にまだタオルが掛かっていることから風呂上がりだと分かった。天彦はそっとふみやの元に行き、手を取るとそっと部屋の中に招き入れベッドに座らせた。
    「髪、拭いても良いですか?」
    ふみやは無言で頷くと天彦はタオルを手に取り、髪についた水気をとっていく。その優しい手つきにふみやは段々と眠気が誘われた。すると頸に柔らかい感触がし突然の事に驚いた。ふみやは何をされたか分かったが敢えて知らないふりをした。そんな様子を天彦愛おしそうに眺めながら髪に手を差し込んだ。
    「乾きましたよ」
    「……ん」
    その大きな手に頭を撫でられ、再度眠気を感じ、目が閉じようとした。
    「ふみやさんすみません。眠るのは少し待って頂けませんか」
    ふみやは無言で頷くと天彦はもう一度頭を撫で立ち上がり、クローゼットの中に納められた綺麗な包装がされた箱をふみやに渡した。
    「何これ」
    「素敵なものです。よかったら開けてみてください」
    丁寧に包装を剥ぎ、蓋を開け、中身を取り出すとそれは九本の紫とオレンジの小さな薔薇の入ったハーバリウム。
    「出先で見つけたんです。まるでふみやさんみたいだと思ったので」
    ふみやはじっと目に引き寄せ、ハーバリウムを眺めた。
    「俺って言うより俺と天彦みたいだな」
    無意識に出た言葉にふみやは驚き訂正しようとした時、ハーバリウム越しに目が合う。その様子はまるで花の沢山入った水槽に居るようだと。どれだけ目が合わさっていたのか定かではない。頬から耳を流れる様に撫でられ、突然の事にハーバリウムを落としそうになるが寸前の所で天彦がキャッチすると箱へと戻した。そして、引き寄せられ気付けば静かに唇が重なっていた。


    ○6月12日 ダーズンローズ・12本の青い薔薇「夢叶う・奇跡」
    長針と短針が十二という数字に重なろうとした頃、ふみやの部屋をノックする音が聞こえた。
    数日前も同じ様なことがあった気が、とふみやは既視感を覚えた。となると扉の前には…。ソファから立ち上がりドアの前に。ノブを回し扉を開くと天彦。数日前と同じ様な状況が。しかし、違う事が一点。天彦の腕の中にある花束だ。あの時は一本だけだったが今は束となってある。
    「入ったら?」
    「お邪魔します」
    そうしてふみやの部屋のソファに腰掛けた。どれくらいの時間があっただろうか。ふみやは天彦の腕に抱えられた花束がずっと気になっていた。
    「花束なんかどうした?」
    「ダーズンローズをご存知でしょうか?」
    「なにそれ?」
    「海外では恋人に十二本の薔薇を贈ると幸せになれるという言い伝えがあるんです」
    「へぇ」
    十二本の薔薇の花束。よく見ると若干青みがかっていた。
    「ブルーグラビティという品種の青い薔薇です。明るい場所では白に見えますが薄暗い場所では青に見える薔薇です」
    「そうなんだ」
    「よかったら受け取ってください」
    そう言うと天彦はふみやに花束を渡した。ふみやは珍しそうな目でそれを眺めていた。すると頬を優しく撫でられた。
    「僕はふみやさんと出会えてとても嬉しいです」
    「俺も天彦と出会えて嬉しいよ」
    再び沈黙が続いた。だがその沈黙に耐えきれずふみやは口を開いた。
    「今日は一緒に寝る?」
    「いえ、今日は……」
    「分かった。おやすみ」
    「はい、おやすみなさい。いい夜を」
    そういうと天彦はふみやの部屋を後にした。天彦から貰った薔薇を眺めた。最近よく花を貰うと。そしてふと以前天彦が言っていた事を思い出す。
    『花言葉みたいに薔薇には本数によって意味があるそうですよ』
    スマートフォンで青い薔薇の花言葉と十二本の薔薇の意味を調べた。
    「これってプロポーズ?」
    その言葉は部屋の中で溶けて消えていった。


    ○6月21日 「心からの愛」
    二十一時。二人はこっそりハウスを出た。そしてホテルに着くと我慢できないとばかりに早々に愛し合った後、休憩というように天彦がふみやを背後から抱きしめるような形で男性二人が一緒に入っても余裕のある大きな湯船に浸かっていた。水面に薔薇の花弁が浮いていた。量は本数にして二十一本分らしい。天彦がそう言っていたのだ。入浴剤と共に入れたのだろう。
    「俺、薔薇風呂なんて初めて入った」
    「本当ですか?」
    「うん」
    「ふみやさんの初めてをまた一つ一緒に迎えられて天彦、とても嬉しいです」
    そう言うと頸に触れるように唇を落とした。突然の事にふみやは吃驚し、口元まで湯船に浸かってしまった。代わりに膝小僧が見えていた。そして先程よりも目の前に広がる薔薇の花弁。ふと、先日の事を思い出した。あの青い薔薇と本数。今回のも何か意味があるのかと。もしかしたらそれ以前から。しかし結局今だに聞けずじまいだった。
    「ふみやさんどうかしましたか?」
    「え?」
    「なにか思い詰めてる様子だったので」
    「………」
    ふみやは迷っていた。聞くべきかないべきか。しかし、天彦の事である。何かありそうなのも事実であった。
    「ふみやさん?」 
    ふみやは誤魔化すように体を天彦の方へ向き直すと唇を重ねた。
    「続きシよ?」
    「えぇ」
    二人は静かに唇を重ね合わせた。ふみやが天彦の首に手を回したのを合図にし、天彦はふみやを抱き抱えるとそのまま湯船を出た。
    「早く教えてくれないと俺、気づいちゃうかもな」
    「何か言いましたか?」
    「ひみつ」


    ○ 6月24日「一日中あなたを思っています」
    ふみやが自室で砂糖たっぷりの珈琲を飲みながら本を読んでいると誰かが帰って来たのか玄関の方から扉の閉まる音がしたのだ。時間を見ると後もう少しで二十四時を回ろうとしていた。すると一通のメッセージが入り見ると天彦からだった。

    『ふみやさん、夜分遅くにすみません。まだ起きてますか?』
    『起きてるよ』

    返信を返すとすぐに既読がついたが何か打ち込んでいる最中なのか中々返信は来ない。ふみやは一度腕を伸ばし体を軽くほぐすと立ち上がった。自室を出て一瞬天彦の部屋の扉をノックしようとしてやめ、そのまま階段を降りリビングへと。薄らと灯りが見え、ぼんやりと人影が。
    「天彦」
    「ふみやさん」
    「おかえり」
    「ただいま」
    今すぐにでも抱きつきに行きたかったが天彦の手の中に花束がある事に気付いた。そして思い出したのだ。つい先日貰った青い薔薇の花束を。
    「それ」
    「これ、朝に素敵な薔薇が売ってあったのを見かけたのでふみやさんにプレゼントしようと思って。良かったら」
    ふみやはその薔薇を無言で受け取るとふと無意識に本数を数えた。
    「二十四本」
    「えっ」
    「ん?」
    「あ、えっと…ふみやさんもしかして気付いて…」
    「うん」
    「そうですか」
    少し小恥ずかしそうな表情をする天彦に新鮮な気持ちになり、ふみやはこんな表情もできるのだと思ったのだ。珍しい天彦の表情を独り占めできた事への喜び。そして薔薇の本数に込められた思い。
    「天彦、もしかしてこれっ」
    気付けばふみやは口を開いていたが、急に唇が天彦の親指でなぞられ呆気に取られていると気づいた時には唇と重なっており、片手は頬に、もう片方は腰に添えられていた。どれだけそうしていたのだろうか。花束を持つ手に力が入り、腰が抜けそうになる寸前で唇が離れ、代わりに銀の糸が繋がっていた。
    「がっつきすぎ……」
    「すみません。ですがどうしてもこの先は天彦が言いたかったので。いいですか?」
    「……分かった」
    ふみやはそっと天彦の手に己の手を重ねた。覚悟はできていると言うように。
    「ふみやさん、もうお気づきかと思いますが薔薇の花には花言葉以外にも本数によって意味があります」
    「そうだね」
    「その様子だと今まで送った薔薇の意味もきっと気付いているのでしょう。そしてもしよろしければ思い出してください。僕が貴方に送った薔薇の本数を」


    ○6月30日「私の愛は変わらない」
    天彦に言われた言葉を思い出しながらふみやは自室に戻り考えていた。薔薇の本数とその意味。確かに分かっていた。しかし、改めて言われると言うことは他にも何かがある可能性がある。そう思ったのだ。ふと、改めて見渡すとふみやの部屋この三十日で色とりどりの薔薇に満ちていた。初めは橙の薔薇でできたプリザーブドフラワーが一本。次に銀の刺繍の薔薇が五本。六本の薔薇が箔押しされた化粧箱。九本の紫とオレンジの小さな薔薇の入ったハーバリウム。十二本の青い薔薇。そして、先日渡された二十四本の薔薇の花束。ふみやに送られたものならば二十一本分の薔薇の使われた薔薇風呂も含まれるのだろうか、と考えていた。そうなれば、とタイミングを知ったかの様に扉を叩く音が。今月に入って何度もあり、そしてその音は聞き馴染みのある彼が叩く音。もう誰かは分かっていた。
    「天彦」
    呟かれた言葉に応えるかのように扉が開かれた。
    「バレてましたか」
    「バレバレだよ」
    ふみやの予想通り天彦であった。そして、背後には何かを隠していたがあえて気づかないふりをして。
    「先日、天彦がふみやさんにお聞きした答えは分かりましたか?」
    「今七十八本だろ?意味なんてなかった」
    ふみやは天彦の問いかけにこれが正解なのか不安でもあった。何故ならば何度調べても七十八本には意味がなかったのだから。すると頬に何かが当たる感触。見ると天彦の顔がすぐそばにあり、そこでキスされたのだと気付いたのだ。突然の事にふみやはただただ呆気に取られていた。
    「えぇ、そうです。しかしこれでどうでしょうか」
    するとふみやの目の前に色とりどりの薔薇の花束が差し出された。数えると三十本。ふみやは思わず天彦を見た。
    「ふみやさん、天彦と……」
    するとふみやは思いっきり天彦へと抱きついた。普段鍛えてるため、倒れることなくふみやを受け止め抱きしめた。
    「うん」
    「本当に…?」
    「これが俺の答え」
    そう言うとふみやから天彦へと唇を重ねた。
    「幸せにします」
    「うん」
    ふみやは花束を受け取とり、そして二人はそのまま誓うように静かに口付けを交わした。
    「いつか、九百九十九本の薔薇をプレゼントさせて下さい」
    「それはいつ?」
    「もう分かってますよね」
    二人の間に挟まれた薔薇の花束が静かに揺れ、気付けば三本、本数が増えていた。


    薔薇の本数の意味
    ・一本 「ひとめぼれ、あなたしかいない」
    ・三本 「愛してます、告白」
    ・五本 「出会えて良かった」
    ・六本 「貴方に夢中」
    ・九本 「いつも貴方を想っています」
    ・十二本
     「愛情・情熱・感謝・希望・幸福・永遠・尊敬・努力・栄光・誠実・信頼・真実」
    ・二十一本 「心からの愛」
    ・二十四本 「一日中思っています」
    ・三十本「私の愛は変わらない」
     九百九十九本 「何度生まれ変わってもあなたを愛す」
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