白馬の王子サマは助けてなんてくれない(後編)その2 ――あれはもう何十年も昔。父が流行り病で倒れた頃だった。敬虔な神竜信徒であった母は今日も神竜王に祈りを捧げる。俺もその姿を見て手を組んだ。
神様どうかお父さんを救ってください。俺から家族を奪わないでください。その為なら何だってします。それから、今はまだ上手く杖を使えないけれど、いつかは立派な癒し手になって大切な人を守る力を――
だが、そんな祈りも空しく父は帰らぬ人となり、その日から優しかった母も変わってしまった。
口を開けば『祈るだけ無駄だった』『祈ったところで恩恵が受けられる訳ではない』『あの人を返して』と泣き叫びながら家中の物に当たり散らして使用人にも厳しく接する。当時まだ幼かった俺は、父の死で受けた心の傷を癒やす間もなく変わり果てた母の姿を見せられて生きた心地がしなかった。いっそのこと逃げてしまいたい。だが、そうしたら母がひとりぼっちになってしまう。どうするのが正しいのか――今思うと、この頃から何かと選択を迫られる人生だった。
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