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    cottton_fish

    @cottton_fish
    まいるまのオペラさん推しのカルオペ(人間界ifの鍋平)、ヒプマイ簓くん推し、簓受け大好物です!
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    cottton_fish

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    バビデビ展示のなべしま小話です。
    平尾さんのことが好き過ぎる鍋島君のほのぼの日常なお話。

    #なべひら

    とりあえず抱き枕は横に置いてください 鍋島啓護は悩んでいた。
     梅雨の季節に訪れた束の間の快晴。テレビのお天気お姉さんは洗濯日和だと太鼓判を押している。
     恋人である平尾は株主総会の準備で朝早くに家を出たので、家には鍋島ただ一人。
     ここは一つ、さり気なくかつ分かり易く、出来る恋人アピールをすべきだろう。
     手始めに、洗濯機の中にある洗濯物とこの寝具の洗濯に取り掛かる事にする。
     思い立ったが吉日、カーテンを勢いよく開けて太陽の光を部屋へと招き入れ、肌触りに拘ったシーツと色違いの枕カバーを順に剥ぎ取っていく。
     後は恋人と自分の分のパジャマを回収して、集めた寝具と一緒に洗濯機へと放り込むだけ。

     だがしかし。

     チラリとベットに鎮座する大きな抱き枕に一瞥を投げる。
     平尾が、自分や七朗などに呼び掛けて何枚もハガキを書かせて当てたやつだ。因みに、この抱き枕はどっからどう見てもただの猫なのだが、何故か平尾や七朗は「先生」と呼んでいる。解せぬ。
     この時期には丁度いい、ひんやりとした冷触感の抱き枕らしく、これが我が家に来た途端、恋人は寝る時にはこの抱き枕に抱き付いて寝ている。
     恋人の自分が隣にいるのにもかかわらず、だ。
     だいたい、暑くなってきたからといって、自分から離れて寝ると恋人が言い出したから、仕方なく寝る時にはクーラーをつけて何の気兼ねなく自分に抱き付いてもいいように環境を整えたのに、この抱き枕のせいで同じベットで寝ているのにソレが壁となって、結局離れて寝るようなってしまった。

     この鍋島啓護が譲歩したというのに。

     悔しくて友人の七朗についその事を愚痴ったところ、「先輩ってはっきり言わないと伝わらない節があるから。いっそのこと『俺のここ空いてますよ』ってアピールすればいいんじゃない? 」と助言を貰った。
     丁度、絵本の作成中だったようで、パソコンの画面と睨めっこしながらだったが。
     確かに七朗の言う通り、あの先輩相手にこちらの気持ちを察しろと哀愁の視線を送って気付かせるのは至難の技だろう。かの恋人は知ってて敢て空気を読まないところもあるのだ。
     さすがは我が親友、実に的を得たアドバイスだ。
     とりあえず、ピンクのベストを着た芸人のような台詞は一旦保留にして、自分なりの言葉でストレートにこのモヤモヤとした気持ちを恋人へ伝えようと思う。
     コイツさえ来なければこんな思いをしなくて済んだものを、と思わず睨みつけてしまったが、すぐにハッと我に返り首を軽く横に振る。
     たかが抱き枕。それ以上でもそれ以下でもない。
     なにを嫉妬しているのか。こんな、毎晩恋人に抱き付かれて最近ヘロヘロ気味になってきた抱き枕如きに。
     ふう、と短く息を吐くと、鍋島はその若干草臥れたような抱き枕を抱えて洗濯機の方へと歩き出した。
     洗濯器に放り込む寸前、確かこの抱き枕のフォルムも恋人のお気に入りだった事を思い出し、とりあえず一番大きい洗濯ネットを取り出してその中に押し込み洗濯機へとボッシュートした。



    「お洗濯してくれて有難うございます、啓護君」
    「いえ、今日は練習は午後からだったので時間に余裕がありましたから」
    「お蔭様でパジャマもさっぱりです」

     満足気な表情でこちらに見せびらかすようにTシャツの裾を広げる恋人の姿は控えめに言って可愛い。
     真ん中にプリントされている、モフモフとしたボディのコウモリの様な鳥の様な、よく分からないキャラクターが潰れた蛙の様なフォルムになっていても恋人は可愛い。

    「さて、明日も早いですし、そろそろ寝ましょうか」

     そんな恋人の姿を無言で眺めていたら、恋人からのお誘いが。
     自分も明日からはコンサート会場でのリハーサルが朝から入っているのでコクリと軽く頷いた。

    「先輩、今日もあの抱き枕と一緒に寝るんですか? 」
    「ええ。あの子を抱っこして寝るとぐっすり寝れるんですよ」

     自分にくっついて寝ていた時はぐっすりと寝れなかったのか、とネガティブな思考が脳裏を掠めるが、ぐっと押し込む。

    「そ、そうですか。でも、ずっと使っていたからか、最近その抱き枕なんか草臥れてませんか」
    「ふむ・・・・そう言われると、そんな感じが・・・・」
    「でしょう! だから、その、今日はその抱き枕は抜きで寝ませんか・・・・俺と」

     段々気恥ずかしくなって肝心の最後の言葉は尻すぼみになってしまった。
    イメージトレーニングではさり気なく両腕を広げて、胸に飛び込んできた恋人を優しく抱き留めていたというのに、現実はこの体たらく。
     あまりの情けなさに恋人の反応が怖くてちらりと様子を窺うと、珍しく目を丸くして、片手で口元を覆っていた。

    「啓護君・・・・・・・・」
    「別に、嫌なら・・・・無理強いはしませんけど」
    「いいえ」

     ふふ、と小さな笑い声が耳を掠める。

    「折角の恋人からの熱烈なお誘いを断るなんて、そんな勿体ないことしませんよ」

     一緒に寝ましょうか、啓護君。

     するりと腕に絡まる温もりに、思わず口角が上がった。
     やはり、想いは素直に伝えるに限る。
     今日は良い夢が見れそうだ、と鍋島は恋人の手を引いて寝室へと足を向けたのだった。








    「・・・・・・・・・・あの、先輩」
    「どうしました、啓護君」
    「今日はその抱き枕はお休みするんじゃ・・」
    「ええ、そのつもりだったんですけど、どうも落ち着かなくて」
    「だったらこちらに背を向けるんじゃなくて、俺と向かい合って寝ればいいじゃないですかっ! 」
    「でもそれだと暑」
    「分かりましたクーラーの温度下げますね」
    「それ以上下げてしまったら流石に寒すぎますよ! 」


    終わり
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