開花のためのプレリュード「私もなにか育ててみたいなあ」
アモンが主人の私室に飾る花を変えようと、瑞々しく咲いた庭の花を持っていたときのこと。その花たちを見た主人が、ぽつりと漏らした。
遠慮ばかりのアモンの主人が、執事たちの仕事を手伝う以外で自らなにかをやりたいと言い出すのは、とても珍しいことだった。幸運にも、彼女の希望を聞く栄誉に与ったアモンとしては、是が非でも叶えてやりたいところだ。
しかし、いくら本人の要望とはいえ、主人に土いじりをさせるのはいかがなものか。外で育てるのであれば、陽光に晒されるのは免れないし、虫だって出る。少し考えただけでも、多方面から反対をくらいそうだ。例えば日焼け対策にうるさい衣装係とか、虫嫌いのマナー指導係とか。
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