「……お前、よく飽きないな。これで何回目だ?」
困惑、苛立ち、うんざり、少しだけ心配。偏った比率で入り混じった感情は合計すると十割が負の色をしていたが、そんな心境を態度に表しても、差し向かいの男は懲りた様子もなくいけしゃあしゃあと応じた。
「俺に聞かずとも、君も覚えているだろう。そんな質問しかないならさっそく本題に入るが」
セノが言ったのは「もういい加減にしろ」という意味だったが、アルハイゼンはそれを察した上で「しない」と返してきたようだった。これまで少なからず彼と言葉を交わしてきた経験からセノはそう解釈した。
セノの正面にはテーブルを挟んでアルハイゼンが座っている。必要以上に堂々とした男を横から茶化すように、酒場のテーブルの上では焼きたてのフィッシュロールが楽しげに湯気を立てていた。
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