『禁じられた遊び』④灰谷兄弟 九井一から依頼を受けた。ある男のDNAが必要なので、墓を暴いてほしい。もちろん作業は専門業者に頼むし、面倒なことは部下にやらせればいい。灰谷兄弟はその監視と確認だ。なぜ九井自身がやらないのかといえば、スポンサーとの打ち合わせが入っているらしい。金稼ぎに関しては九井に一任するというのが、幹部の共通認識だ。墓荒らしなど気が向かないが、しかたない。高くつくぜと金を要求すれば、ことのほかあっさりと九井は頷いた。拍子抜けする。
「その代わり、もうひとつ頼まれて欲しい」
黒川イザナの骨が欲しい。
かつて灰谷兄弟を導いた男の名だった。あの強烈なカリスマはいまもなお灰谷兄弟の脳裏に焼き付いている。
依頼の男とおなじ霊園に佐野家の墓地があるので、ついでに頼む、と九井はさらりと言った。兄弟は顔を合せた。「なぜだ」と声を発したのは兄の蘭だ。
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