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    おたおめ用に書いてた

    TSじゅんしょ〜「キラ、おはようございます」
    「……おはよう、ございます?」

     ミレニアム艦内、ここは間違いなくキラの部屋、ではなく執務室の簡易ベッドだ。
     目の前のラクスはその可愛らしい顔に似合わないような眉間に皺を寄せてキラへと声をかけた。
    「ラクス?」
    「私、キラにはちゃんと、お部屋で、ベッドで、眠るようにと散々言っていると思うのですが」
     が、といったところでキラとしっかり視線を合わせてくる。区切ってくるあたり、相当怒っているかもしれない、とキラはそっと視線を外した。

    「……あー」
     昨日は夜遅くまで仕事をしていた。ヤマト隊の面々には終わりましょう、と促されたのをもう少しだけ、と言って先に終わっていいからと。
     そして、力尽きそうだなと思って簡易ベッドに倒れ込んだのは深夜。トリィには6時に起こすように伝えていたのだが、部屋の時計を見るともう8時を回っていた。
    「トリィには静かに、とお願いしておきましたの。ということでキラ、今日と明日は貴方は強制休暇です。罰ですよ」
    「……はい?」
    「本当はもう少し眠っていただきたいのですが、時間があるので……早くお部屋に戻って私服にお着替えくださいな」
    「はい?」
    「大丈夫ですわ、キラ、私は……いえ私たちは貴方に悪いことはしません」

     ニコリと微笑み、ラクスはキラの手を取った、ちょっと待ってほしいし、説明してほしかった。

     ミレニアムにいたはずで、そのミレニアムは宇宙空間を漂っていたはずなのに、キラは何故かプラントに立っている。
    「キラ!」
    「え、カガリ?」
     ぎゅむ、と抱きついてくるのはキラの双子の片割れだ。というかそこらへんを隠すこともしないで歩いていい人じゃないのに、どうしてと思わずキラの後ろにいるラクスに視線をやってしまう。
    (いや、それはラクスもだ)
     カガリも、ラクスも帽子を被るでもなく、各々私服を着ていた。この中で一般人——キラが思っているだけだ——はキラのみ、であればこの2人の護衛をするべきか、と思いながらもどうしようと悩んだところで、右をラクス、左をカガリが掴む。

    「はい?」

    「さぁ、行きますよ」
    「あぁ、行くぞ!」
     にこやかに微笑んだ2人は足をすすめる。キラがそれに引っ張られた形になるのは仕方のないことだ。
    「まって、どこにっ」
     そもそもどうしてプラントにラクスはともかくカガリがいるかさえわからない。対談の日程が組まれていたのか、と言われてもNOと言える。

    「それは、秘密ですわ」
    「うん、秘密だな」
     説明を、と望んだところでキラが勝てるわけがないのだ。


     しっかりと両脇を固められた状態で車に乗り込むことになった。エレカが向かったのはショッピングモール、お店を梯子すると言うわけでなく、案内されたのは多分そういう階級の人用のところだろう。

    「あの、ラクス、カガリ」
    「キラ、貴方また痩せましたわね」
    「またカップサイズがあがったな」
     女性しかいない空間の中、キラは薄着で立たされていた。ラックにかかっている洋服やバッグ、今は下着を選んでいる。
    「……だって、忙しかったし」
    「それは言い訳です。それに今は逼迫した状況じゃないと聞いているのに、全く……」
     あぁでもないこうでもないとラクスがどんどんキラの肌に合わせて、カガリもカガリでこれを着てとキラにブラジャーを渡してきた。
    「なんでこんな」
     キラが何よりも弱い2人からの攻防に勝てるわけもなく、曰く育ったという胸にブラジャーをつけていく。
     ラクスが頬に当てていた手を外して、キラに微笑みかける。

    「だから、秘密ですわ」
    「下着はそれでよさそうだな、キラに似合ってるぞ」
    「えぇ、まぁあの方よりも先にみれたということで良しとしましょう」
    「そうだな」
    「通訳が欲しい……」
     次はお洋服です!そう言ってラクスは別のラックへと駆け寄り、カガリはもうすでに手に取っていたワンピースをキラに手渡した。


    「……疲れた」
     ぐったりと後部座席のソファに沈み込む。あの後下着をもう1セット、ワンピースを2着選び、ついでとバッグにヒールの靴、これで終わりか?と思ったところで化粧品も買って行った。これが大変だった。どんどんと肌にのせていき、あぁでもないこうでもない、と真剣に、もはや会議よりも真剣な2人を見た。

     そしてようやく終わった、と思ったら、リンゴジュースを手渡されて、水分補給です、と言われて大人しく従い、案内された地下の駐車場へとまた向かったところで、再び車へと押し込められた。

    「もう帰れる?」
    「いいえ」
    「まだ始まったばかりだぞ?」
     何を言っているんだ?という顔をカガリは見せる。確かに時間としてはまだ早い、なにせ今日はキラの仕度が終わった9時から動いているのだ。
    「何が始まるの?」
    「秘密ですわ」
    「大丈夫、私たちに任せるんだな」
     そう言ってカガリは微笑んで、キラの頭を撫でてきた。実際はどちらが姉か、という答えは知る術はないが、どうもカガリは「私だ」と言い切っている。別に甘えるのは好きだが、それでもなぁと思う。

    (ん……?)

     今、何か引っかかったような気がする。何に、と思ったところでラクスの「着きますわよ」という声にキラは返事をした。


    「ひぇ」
     渡されたのは紙のパンツ。オイルは何がいいですか?とキラに聞かれたのにキラがオイル?となったところでラクスが選んでくれた。

     ——こちらを履いて、この寝台の上に寝そべってください。

     通したスタッフの人に言われて、恥ずかしいなと思いながらもキラはその通りにした。ここまでくればいくらなんでも目的がわかる。オイルマッサージだ。
     失礼します、と一声かかって、キラもどうぞ、と声をかけた。寝そべったままだったのでくぐもっていたかもしれないな、とは後の祭りだ。

     そうして、いつのまにかキラは眠っていた。


    「どうでした?」
    「すごく、気持ちよかった……と思う」
     最初はどこらへんを重点的に?というセラピストの問いかけをきちんと答えていたはずだ。なのに気づいたら終わっていて、タオルで身体を拭いてもらっていた。
    「そうですか、それならよかったですわ」
     身体からはマッサージに使われたオイルの匂いがほのかに漂っていた。朝ラクスに急かされながらもちゃんとシャワーを浴びていてよかったと思う。一応身なりに気を使うことは仕事の後回しといえども女の子ではあるし、シャワーを浴びていません、なんて人のマッサージをするのはかわいそうだろうと思う。
    「さ、次はまた別のところだぞ」
     いい匂いのするお茶を飲みながらラクスと待っていたらカガリが戻ってきた。
    「え、また?」
    「そうだ。大丈夫、お前の悪いようには、しない、多分」
    「……多分」
     あれ、大丈夫だよな?という声を出すカガリになんとなく不安になったが、大丈夫ですわ、とラクスが落ち着いた声で立つことを促してきたので、あぁと思いながらもキラは立ち上がる。

    「大丈夫、キラにとってきっといいことですわ」

     ね?と微笑むラクスを見ると、そうかもと思ってくるのでやっぱりラクスには敵わない。


    「長さは変えないで、毛先を整える程度にしてください。トリートメントはしっかりとお願いします」
    「承知しました」

     そうして次に連れてこられたのは美容室、だ。おそらく。どう見ても他にお客といえる人は見えないが、大きな鏡が置かれた椅子の前にキラは座らされて、カットケープを被せられた。

    (そういえば、髪切ったのいつだったっけ)
     本当は短く切ってしまいたいが、それを許さない人が身近にいるので、キラは伸ばしっぱなしにしていた。許さないというのであればドライヤーだって毎日やってくれ、と言いたいくらいだが、お互いの立場的に毎日はどうしたって難しい。でもキラの伸びた髪に触れる誰かさんは殊更嬉しそうな顔をするのだ。であれば多少の不便さは目を瞑ればいい。
     そんな伸ばしっぱなしの髪をなんとかしてくれるということだ。それならば好意は是非受け取っておきたい、とキラは肩の力を抜いた。

     ハサミがキラの髪を切っていく音が聞こえる。ラクスとカガリは楽しそうな声をあげて、時折美容師やキラに声をかけた。
     眠たいな、と思うがここで寝るのはいくらなんでも迷惑だろう、水分はしっかりと摂ってください、とラクスに今度はハーブティーを渡されて、まだあたたかなそれを手に取って口に含む。


    「はい、ではシャンプーとトリートメントをするので、こちらへ」
    「はい」
     今髪を切ってくれているのはマリューのような女性の人だった。

     シャンプーとトリートメントが終わり、ブローが終わった。漸く、と思ったところでではお着替えを、とラクスに最初に寄ったモールで買った袋を渡される。
     なんだ、と思いながらもこちらで、と通された所で着替えていく。
     身に付けていた下着はどうしようと思うがとりあえず着てきた服で包んで、袋へ入れた。
    「カガリ、後ろ無理」
    「あぁ、入るぞ」
     うん、と言えばカガリが入ってくるので、キラはカガリに背を向けた。ワンピースの後ろのファスナーは上げられたが、小さなボタンをとめていくタイプだったのだ。合わせて買ったブラジャーも背中が空いても問題のないタイプだった。
     一つ一つ、カガリがとめていく。

    「キラ」
    「カガリ?」
     終わったの?とカガリを向く。キラとカガリの身長は同じだった。キラの方が華奢ではあるが、そういった所で同じところを見つけるのが嬉しい。
    「大好きだよ」
    「……うん、僕も」

     着替え終わったところで、さっき髪を切った所に置かれたワゴンの上にはこれもモールで購入していた化粧品やら何やらが並んでいる。この後続くことを思ったキラは覚悟を決めてもう一度、椅子に座ったのだ。


    「あらあら」
    「本当に、お前は可愛いなっ」
    「可愛いですわ、キラ」
    「うん、あぁ惜しい、このまま持って帰りたいぞ私は」
     体力はある方だとは思っているが気疲れがすごい。ラクスとカガリに腕を取られて、美容師が写真を撮ってくれた。

    「では、キラこちらを」
    「私たちとは今日はここでお別れだ」
     シールで止められたままのショッパーにはおそらくモールで買ったものが入っているのだろう。キラの着てきたものはカガリが持っていた。
    「こちらのバッグにハンカチやティッシュに化粧直しのリップが入ってますわ」
    「……お財布」
    「必要ありません」
     ですよね、と思いながらこちらも先程のモールで買った新しい、革の匂いのするバッグを渡された。小さなバッグだ。

    「キラ」
    「うん」
     ラクスとカガリが微笑む。まだ室内のドアの前、そしてその先には護衛とは別の気配がしていた。

    「どうぞ、楽しんできてくださいな」
    「うん。カガリ」
    「なんだ?」
    「早いけど、お誕生日おめでとう」
     気付いていたのか、という顔をカガリがして、キラの頬にキスをする。
     もちろん、キラもカガリの頬にキスを返して抱きついた。


    「準備は出来ましたか?お嬢様」
    「何その口調」
     ドアを開けばそこに居たのはスーツ姿のアスランだった。普段見ることの無いアスランのその服装はスタイルを際立たせていて、正直悔しいくらいにカッコよかった。
    「こういう口調なんだよ。ではラクス、カガリ、キラのことは攫っていくから」
    「ちゃんとお返ししてくださいね」
    「キラを泣かせたら承知しないからな!」
     カガリの言葉にアスランはふ、と笑った。

     ヒールの靴は慣れないだろ、とアスランが腕を差し出してくるのでそっと腕に抱きついた。それでも控えめなヒールにはしてくれたのだ。
     エレベーターで下がって、車を回してくるからここで待ってて、と言われて大人しく待つことにした。今日は多分甘えるのが吉だろうと。



    「うーん、想像通り」
    「何がだ?」
    「ドレスコードのあるお店なんだろうなぁって」
    「バレてたのか」
     そこまで鈍くない、とキラはアスランの手を取る。
     ホテルの正面玄関に寄せた車は、ドアボーイがいるというのにアスランがわざわざ助手席に回ってキラの手を取る。車は放置でいいのか?と怪訝な顔をすれば「ちゃんと停めてくれるから」と説明してくれた。

     上流階級の暮らし、なんてキラには遠い世界だったのだ。それでもアスランが自然としてくることには慣れていたので、アスランであればどうすればいいか身体は勝手に動いてくれる。

    「僕、マナーとか最低限しかわからないからね」
    「個室だから気にしなくていい」
     そうなのか、と思ってほっとする。レストランの入り口につけば、名前もいうこともなく席へ案内された。下で伝わったのか、さすがの接客だ。

     キラの椅子を引くのもアスランで、それを伝えていたのかスタッフも部屋へ案内してから直ぐに出て行った。
    「窓がない部屋?」
    「お前の立場的にな」
    「そっか、そうだよね」
     アスランも立場でいえば同等だが、今で言えばキラの方が要人だろう。
    「飲み物は任せてもらってもいいか?」
    「わからないから、お願いします」
    「あぁ」
     ドアの前に立っていたスタッフに「今日のおすすめは?」と聞いて一言二言交わせば会釈をして出て行った。


    「じゃあキラに」
    「1日早いけど?」
    「今日はここに泊まるから」
     なるほど、と言ってキラはアスランの掲げたフルートグラスと同じ高さに掲げると、軽く合わせてきた。

    「あ、飲みやすい」
    「そうだな」
     しゅわしゅわと小さな泡が立った黄金色をしたグラスを置いた。
    「……君って本当こういうところ似合うよね」
    「似合わないよりはいいが、俺は居酒屋も好きだぞ」
    「知ってる」
     キラの服装を知っていたのか、あの2人のどっちかに聞いたのか。アスランがつけているネクタイがキラのワンピースと同じ色だった。

    (それとも、アスランが色を指定したか)

     有り得そうだ。ラックにあったワンピースはみんな同じ色だった気がする。グリーンのワンピース。
     アスランのスーツ姿などあまり見れるものでは無い。流石に後で写真撮りたいな、とねだろうと思う。
    (大概僕もベタ惚れだよなぁ)

     周りからするとアスランがキラにベタ惚れというのは知れ渡っているが、キラだってアスランのことが好きだ。だから面倒臭いことは嫌いなのに髪を伸ばしているし、エスコートだって恥ずかしいという気持ちよりも嬉しいが勝つ。

     少しだけ、寂しくて求めているのかと、これは錯覚なんじゃないかと思ったこともあった。辛くて辛くて、死にたかった時期だからというのもある。
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