Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    わたる。

    @yamasorakakeru

    過去ログとその他もろもろ

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 77

    わたる。

    ☆quiet follow

    トライアングラー?の続き。
    🔵🟢になるまでの話。
    えーあいによる添削あり。

    続・トライアングラー?ペリードは、頭の奥が鈍く痛むのを感じながら、ゆっくりと目を開けた。天井の木目がぼんやりと揺れて見える。

    「……う、うぅ……」

    重い体を引きずるようにして寝返りを打つと、隣のベッドが視界に入る。そこには、まだ静かに寝息を立てているカイヤーの姿があった。

    (……なんで俺、ここに……?)

    酒場でひたすら飲み明かしていた記憶はある。だが、その後どうやってここにたどり着いたのかは、まるで霧がかかったように曖昧だった。

    ――「俺は…お前が好きだよ」

    一瞬、昨夜の断片的な記憶が脳裏をよぎる。カイヤーの低い声、静かに告げられた言葉。
    ペリードは、はっとして勢いよく身を起こそうとした。だが、二日酔いのせいで視界がぐらつき、頭を抱えてうめく。

    「……馬鹿みたいに飲むからだ」

    寝ぼけたような声がして、ペリードはぎくりとする。カイヤーが目を細めたままこちらを見ていた。片目が髪に隠れたまま、眠たげに欠伸を噛み殺す。

    「……お前、昨日のこと……」

    「全部覚えてるよ」

    カイヤーは淡々と言いながら、ゆっくりと上半身を起こした。ペリードの視線を正面から受け止める。

    「……お前は?」

    ペリードは息をのんだ。胸の奥が妙にざわつく。

    覚えている。確かに聞いた。カイヤーの告白を。

    だが、それにどう答えればいいのか――まだ分からなかった。

    ペリードはカイヤーの言葉を聞きながら、胸の奥が締めつけられるような感覚を覚えた。

    昨日の告白が冗談や酔いの勢いではなく、本気だったことは、カイヤーの静かな声と、まっすぐな瞳が物語っている。

    「昨日も言ったけど、すぐに返事をくれなくていい」

    カイヤーは淡々とした口調で続ける。

    「お前が納得してから、返してくれ」

    ペリードは、無意識にシーツを握りしめる。頭が痛むのは二日酔いのせいだけじゃない。どう答えればいいのか、自分の気持ちすら整理がついていなかった。

    「……もし……断ったら……?」

    かすれた声で問いかけると、カイヤーはわずかに微笑んだ。

    「その時は、そうか、駄目だったな。と諦めるだけだ」

    あまりにもあっさりとした言葉に、ペリードの胸が妙にざわついた。

    「……それだけ、か」

    「それだけさ」

    カイヤーはそう言って、椅子に腰掛け、昨夜のうちに用意しておいた水を一口飲む。

    ペリードは目を伏せた。

    (――カイヤーは、本当にそれだけで済ませるのか?)

    諦めるだけ? そう言う割には、カイヤーの横顔にはわずかな緊張が滲んでいるように見えた。

    ペリードは、カイヤーに何と返せばいいのか、まだ分からなかった。だが、ひとつだけ確信していることがあった。

    「……お前、強いな」

    ポツリとこぼした言葉に、カイヤーは眉をひそめた。

    「何がだよ」

    「俺なら……そんな風に、割り切れない」

    「そうか?」

    カイヤーは一瞬だけ考えるような素振りを見せ、ふっと笑った。

    「……だったら、割り切らなくてもいいんじゃないか?」

    その言葉が、妙に心に引っかかった。

    ペリードは、昨夜の酒がまだ残っている。
    二日酔いの頭がひどくぼんやりとしていた。
    朝の光が宿の小さな窓から差し込み、埃が静かに舞っている。部屋の中には、二人の呼吸音だけが響いていた。

    カイヤーは、ベッドの隣に腰かけてペリードを見ていた。昨夜の酔いが抜けたのか、彼の表情はいつもの余裕を取り戻しているように見えるが、その瞳の奥にはどこか探るような色があった。

    「俺は俺なりに、お前を好きだって伝えるよ」

    カイヤーの声は静かで、けれどはっきりとしていた。

    「それがお前に鬱陶しいなら言ってくれ」

    ペリードは思わず息をのんだ。
    昨夜の出来事が、まだ夢のように思えていた。自分は確かにガネットに振られ、ヤケ酒を煽り、気がつけばカイヤーと同じ部屋にいた。
    そして今、目の前の男は、まるで当たり前のように「好きだ」と言っている。

    「カイヤー…」

    どう返せばいいのか、分からなかった。
    自分は昨日、ガネットを想って泣いたというのに、今ここでカイヤーの想いを真剣に受け取っていいのか。

    けれど、目の前の男は、そんな迷いごとすべて見透かしたような顔をしていた。
    カイヤーは静かに息を吐くと、僅かに視線を落とした。

    「…抱きしめていいか?」

    その問いは、ペリードの心臓を強く打った。

    カイヤーがそんなことを聞くとは思っていなかった。
    彼はもっと強引に、冗談めかして距離を詰めるタイプだと思っていた。

    けれど今のカイヤーは、どこか不安そうだった。

    ペリードは、カイヤーをじっと見つめた。
    カイヤーの指が、無意識にベッドの端を軽くつまんでいる。
    それが、彼なりの緊張の表れなのだと気づいてしまった。

    ペリードは、ゆっくりと息を吐く。
    答えは、もう決まっていた。

    「……ああ」

    言葉を返すと同時に、カイヤーはそっとペリードに手を伸ばした。
    腕が背中に回る。大きくないが、どこか安心する温かさを感じた。

    ペリードは、されるがままにその腕の中に沈み込む。
    思ったよりも柔らかく、それでいてしっかりとした抱擁だった。

    「…お前、案外、優しいんだな」

    冗談めかして呟くと、カイヤーは小さく笑った。

    「知ってたくせに」

    確かに、知っていた。
    カイヤーはずるくて打算的で、けれど根の部分では驚くほど優しい男だ。

    ペリードは目を閉じた。
    昨夜の痛みも、今だけは、ほんの少し遠のいていくような気がした。

    それから、カイヤーは遠慮しなくなった。
    愛を伝え、触れて、まるでペリードの傷心を癒やすことが当然であるかのように振る舞った。

    最初は戸惑いもあった。
    ペリードはガネットへの想いを断ち切れずにいたし、カイヤーの愛情がどこまで本気なのか測りかねていた。
    だが、カイヤーは決して引かなかった。

    「ペリード、もう少し肩の力を抜けよ」

    そう言って、不意に肩を揉んできたり、戦闘後の手当てのときにさりげなく指先を這わせたりする。
    今までの「冗談混じりのスキンシップ」とは違った。
    カイヤーは本気で、ペリードに触れていた。

    ペリードがふと遠くを見るような目をしたときも、カイヤーはそれを見逃さなかった。
    言葉ではなく、手を重ね、温もりを与えた。

    「辛いなら、無理に笑うな」

    そんなふうに囁かれたとき、ペリードは思った。
    こいつは、本当に俺を見ている。
    ただの慰めなんかじゃない。
    ガネットの代わりでもない。
    カイヤーは「ペリード」という人間を愛そうとしている。

    それに気づいたとき、ペリードの中で何かが崩れた。
    強がるのをやめた。
    カイヤーの言葉を、仕草を、手のひらの温かさを、真っ直ぐに受け取るようになった。

    そしてある夜、ペリードはカイヤーの肩を掴み、ゆっくりと顔を寄せた。
    迷いは、もうなかった。

    ペリードがカイヤーに落ちるまでは、時間の問題だった。

    ペリードの大きな手が、そっとカイヤーの肩に置かれる。
    迷いがちに揺れる緑の瞳が、カイヤーをまっすぐに見つめていた。

    「キス…しても…いいか?」

    かすれた声だった。
    それほどまでに緊張しているのかと思うと、カイヤーは少し笑ってしまう。

    「聞くなよ。俺からするか?」

    冗談めかして囁くと、ペリードは困ったように眉を寄せる。

    「からかうなよ…」

    情けない声を出しながらも、その手はカイヤーを放さなかった。
    いつものペリードなら、こういう場面では照れ隠しに誤魔化してしまうだろう。
    けれど今は、誤魔化さなかった。

    ペリードは小さく息を吐き、深く頷く。

    「待たせてすまない、カイヤー…。お前の気持ちを受け取った。これから、よろしく頼む」

    その言葉に、カイヤーは目を細めた。
    まるで、大きな商談を成立させた時のような満足感。
    けれど、それよりもずっと甘く、心地のいい達成感だった。

    「上出来だ」

    そう言って、カイヤーはペリードの首に腕を回し、今度こそ自分からキスをした。

    おしまい。

    【おまけ】

    ペリードの唇を離れたカイヤーは、満足げに微笑みながらペリードの頬を軽く撫でた。
    ペリードはまだ少し恥ずかしそうに目をそらしながら、けれど確かにカイヤーの肩を抱く腕の力は強くなっていた。

    「……なんか、こういうの、慣れてるよな」

    ぼそりと呟くペリードに、カイヤーは肩をすくめる。

    「ま、それなりにはな」

    軽く流しながら、カイヤーはふっと真面目な表情になった。
    そして、ペリードの手をぽん、と叩く。

    「そういや、先に言っとくが――」

    「?」

    ペリードが不思議そうに顔を上げるのを見て、カイヤーは軽く笑いながら、さらりと言い放った。

    「ちなみに俺は受けは無理だ。バリタチなんでな」

    「……は?」

    一瞬、ペリードの頭がついていかず、間抜けな声が漏れる。

    「いや、その……お前、俺より小さいし……」

    「関係ないね。俺は攻める側なんで、そこは譲れねぇな」

    あっさりと言い切るカイヤーに、ペリードは完全に言葉を失った。
    いや、別にどっちがどうとか、まだ何も考えてなかったはずなのに、なんだこの既定路線のような言い方は。

    「……そ、そうなのか」

    「そうなのさ」

    にっこり笑うカイヤーを見て、ペリードは何かを悟った。
    この商人は、きっと何があっても自分の主導権を手放すつもりはないのだろう、と。

    (……これから俺、大丈夫か……?)

    恋人になったばかりだというのに、早くも先行きに一抹の不安を覚えるペリードであった。

    おしまい!
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works