危険な食べ物「あ」
「どうした? ポカンとして。おれの顔に何か付いているか?」
「ふふ、顔……じゃないな。いや、顔か。デグダス、ちょっと笑ってみせてくれ」
「わっはっはっはっは! なんだか照れるな!」
「あっはっはっはっは! じゃなくて、ニコッと」
「ニコッ」
「そう。……ぷっ。あははっ、やっぱり歯に青のりが付いてる」
「えっ!? それはお恥ずかしい!」
慌てて口元を隠したキミは、モゴモゴとくぐもった声を出した。手で隠した下で頬がムニムニと動いている。
「取れたかな?」
「取れた」
「よかった」
安心したのか胸をなでおろし、もう一度ニコッと笑ってこっちを見た。うん、いつも通りの白い歯だ。
「焼きそばは危険な食べ物だな」
「でもお祭りと言ったらコレじゃないか?」
「ウム。実にその通り。だから食べないわけにはいかんのだ。なにより、うまい! だがしかし」
頷いて、唸って、考え込んで、次はジッとおれの顔を見つめる。
「おれの顔に何か付いてるか?」
と今度はおれが尋ねる番だ。自分でするのはいい。しかしされるのは照れる。キミの真っ直ぐな目に弱い。
「グランツ、ニコッとしてみてくれ!」
「あ、あれっ? おれの歯にも付いてたか?」
同じことを言われて恥ずかしくなって、同じように慌てて口元を手で隠した。キミに指摘しておきながら自分も、って恥ずかしくてあんまりじゃないか。顔が赤くなってる気がする。なおさら顔を隠したい。
が、しかし。キミの手がおれの手首を掴んでそれを阻止した。
「違う違う! そうじゃなくてな、おれもおまえのニコッが見たい! おれにも見せてくれなくちゃ、不公平じゃないか。……ン、なにかおかしいか?」
ってそんなこと真っ直ぐ言われちゃ、笑うどころか顔から火が出そうだ。顔どころか、キミに掴まれてる手まで、一気に熱くなってきた。