マシュマロ?「おまえがそんなにおいしい! と言うのなら、そのマシュマロは間違いないな」
「あれ、知らなかったのか? おれはマシュマロだけは手放しに大好きなんだ」
「そうなのか!? 知らなかった!」
もにゅもにゅしている。グランツのお口に放り込まれたマシュマロが、もにゅっと噛まれている。そしてグランツのほっぺももにゅもにゅとしている。
山で食べるマシュマロは格別だ。海もいい。洞窟でもいい。草原でもいい。家の外で、焚き火などをしつつ食べるのがいい。
本当のところ、採掘の休憩ついでに焚き火で焼いて食べようと思って持ってきたのだが、グランツがそのままもにゅもにゅ食べ始めたでの、その手があったかと思いおれもそのまま食べている。
「食感が好きなんだ。キミの鼻の頭に似てる」
「ええっ? ウーム……? チョコレート味ならばあるいは……」
「色じゃなくて食感の話だぜ。あと、力が入ってないときのキミの二の腕にも似てる」
「むむむ……」
半信半疑だ。しかし自分で揉んでみると、確かに似ているかもしれない。
「デグダス、そこは太ももだぜ。おれの」
「あ! そうか、なんだか硬いなとは思ったんだ」
「このズボン、かなり丈夫だからな。あっはっはっはっは!」
笑いつつさらにマシュマロをもにゅりと食べる。笑いながら食べるのは危ないと思うのだが、グランツは器用にきちんともぐもぐ食べている。
「似合うなあ、そういうのが」
「いいや、キミの方が似合うし似ているんだ。ほら、ここのあたり」
「もは! もがもが」
にゅっと伸びてきた手に鼻をむにゅっと掴まれる。そう、むにゅむにゅなのだ。むにゅむにゅされるとうまく喋れん。
「キミはまるでマシュマロだ」
そうだろうかな? それにはやはり異論があるぞ。
しかしやはり似合うなぁ。ちょっとずるいぐらい、似合うじゃないか。なんというか、なんだ、そういうたとえ話のようなもの、グランツがするととても様になるじゃないか。おれがそういうことを言おうとしても、マシュマロとおでんをいい間違えたりしてしまうのがオチだ。
おまえはアツアツのおでんだ!
うーん、違うな。
「むもも、むほ、ふはんん」
「あっははははははは!」
鼻をむにっとされるたびに、グランツの指からマシュマロの甘い粉みたいなものの匂いがする。