あつあつおでん「あちちち」
「ちゃんとフーフーしたか?」
「うううん。あふあふ。む?」
熱いけれども一度口に入れてしまったものは仕方がない。それにうまい。出汁のよく染み込んだ餅巾着をがぶっとかじって、中のおもちを伸ばしつつ一口食べる。うまい。そしてアツアツ。はふはふだ。
そんなおれのほっぺたを、ひんやりした指がピタリと触った。
「火傷してないか。赤くなってる」
グランツの指がこしょこしょしながら動いて、おれの下唇をふにっと触った。やっぱりひんやりとしていて、おでんのあつあつにびっくりした唇に気持ちいい。
「むむむむ……。うん! 大丈夫だ。熱いのは得意なんだ! それより、おまえの手は冷たくなっているな」
「あはは。火傷を冷やすのにちょうどいいだろ?」
「おまえも早くおでんを食べてアツアツにならないと。このおもちのように!」
「ああ。でもキミが熱いと言ってるのを見てちょっと恐れをなしてるんだ。おれは少し猫舌だから」
「それならこのお餅のきんちゃくがちょうど食べごろの熱さでおすすめだ。おれの一口分で欠けてしまっているけれども」
「いいのか? 遠慮ってものはできないぜ」
「もちろんだとも。フーフー、……はいらないか」
「そうか、それは残念」
「ん?」