もしもの日「まるで猫ちゃんみたいだな」
おれの頭をなでていたデグダスの手がちょっと離れてしまった。でも枕代わりのキミの大きな膝のぬくもりがあるから寂しくはない。頭の上でムフフと笑った声が。
「もしもおれが本当に猫だったらどうする?」
「ううん? もしもグランツが猫だったら……? しかしグランツはグランツ……だよな」
「でも実は猫なんだ」
「だとしてもグランツがグランツである以上、やることは一つ! ……なでる! よしよしよしよしよし!」
「ふはっ、ぁっははははっ。そんなにされたら、っふふ、あははっ!」
膝の上に戻ってきた手がおれの頭をぐりぐりし始めた。ちょっと乱暴な手付きで、首筋の方までぐりぐりと、なで回す。後ろ髪が解かれてしまいそうだ。でも、それもいいな。
「気持ちよさそうに笑うなぁ。おまえの笑い声を聞いていると、おれもうれしくなる。よしよし」
「ははっ。なでられるってのは気持ちがいいんだ」
「なあるほど? ふーむ、おれももしもの猫になってみたくなったぞ」
「じゃ、交代しようか」
「おっ」
キミの膝の上から起き上がってベッドに座り、今度は自分の膝をポンポンと叩く。すると大型の子猫ちゃんが飛び込んできた。キミの大きな身体を受け止めきれなくて、そのまま二人でベッドに転がる。膝の上でゴロゴロ……は無理そうだが、まずはともかく、おれに覆いかぶさってきょとんと首をかしげるキミの頭をなでた。