くらくら「む?」
いつもの、不思議そうに首を傾げる仕草だ。振り向いた目は、優しい返事の割にギラギラと光っている。それはおれに向けられた光じゃなくて、このあたりのすばらしい鉱床たちに向けられたものだ。
そうだとわかっていても、くらくらしてしまう。
「どうした? いい鉱石でも見つかったか!?」
「いや、まだだ。今日はなんだかツイてないな……。それより、そろそろ休憩にしないか? もう弟子たちが追い付いてくる頃だ」
「おっ。そうだそうだ、今日はあいつらのためにとっておきの休憩の準備をするんだったな! いやあ、楽しみだなあ」
ギラギラしてた目が、弟子たちの話になった途端にパッと明るく柔らかくなった。壁にかけたランタンもいらないんじゃないかってぐらい、キミの笑顔は眩しい。まだキミのうっかりは出てないのに、その笑顔だけでつられておれも笑顔になる。
「わかってるとは思うが、キミは歓迎する側だぜ?」
「うむ、わかっているとも! ムフフ。でもサンドイッチと卵は人数分準備してあるからな……あとはアレをああしてこうして……」
「……とはいえもしかしたら急いだほうがいいかもしれない」
「むむ?」
「キミの横顔に見惚れていたら声をかけるタイミングを失ってしまってさ。ちょっと時間が」
「えっええっ。お、おまえがうっかりするなんて珍しいじゃないか! それじゃ少しばかり急ぐとするか!」
戸惑って、ぽーっと赤くなって照れて、すぐに笑顔になって、それも噛み殺すようにはにかんでワタワタして。しまった、また見惚れてしまうところだった。こんな近くで見てると、ほんとにたまらない。くらくらするってのも冗談にもならないな。