もぐもぐ ずーっとグランツのほっぺたがもぐもぐ動いている。ときどき、あーんと開いて次の一粒をぽいっと口に入れる。それは削り出したままのごつごつした宝石の原石のようだ。
「飴玉かな?」
もぐもぐしているほっぺに横から手のひらを当てると、見ての通りもにょもにょしている。柔らかめの感触だ。飴玉はこんなにもにょもにょはしないか。
「んー」
とひとしきりもぐもぐもにょもにょしつつ柔らかい返事が戻ってくる。青い目がおれを見上げて、もぐもぐ動く口元が最高の笑顔になった。ほっぺを触っていると、笑ったときにもむにっとした感触がある! この感触はいつも楽しい。いつでもうれしい発見だ。
「キミも食べるかい?」
「いいのか? おまえがあまりにもおいしそうに食べているので、ついつい気になってしまってな」
「そんな顔してたか? ただのグミだぜ。ちょっと硬いけど」
「石のような硬さなのか」
「そこまではないな。あははは。ほら、あーん」
「あーん」
あーんをして甘いお菓子を待っていたら、グランツのもう片方の手のひらも一緒に伸びてきた。片方の指には原石のような見た目のとっても硬いらしいグミをつまんで、片方の手のひらはおれのほっぺにぴたっとくっついた。
あっこれはさっきの仕返しだな! そう思うともうあっという間に、甘いお菓子が口に入ってくるより前に、おれは笑顔になってしまった。