仕事の後の麦ジュース ずっしりと重たいジョッキは氷のように冷やされていて、表面に真っ白な霜が付いている。取っ手を握ると冷たくて重い、ちょっと痛いぐらいに。そいつを持ち上げてぐっと傾け、キンキンに冷えた中身を胃に流し込む。胃の中から全身へ、一気に冷たさが駆け抜ける。
「ぷはっ」
デカいジョッキの一杯を息を止めて飲み干した。一日の疲れでくたくたになった身体がしゃんとなる。
「いい飲みっぷりだ」
隣の席でデグダスがにこにこと笑っている。その前にも大きなジョッキが運ばれてきた。
店のあちこちに吊るされたランプのオレンジ色が、ジョッキの白い表面に、中身の琥珀色に、それにキミの瞳にも写り込んでチラチラ揺れている。
「だが飲み過ぎちゃいけないぞ。疲れていると酔いも回りやすい」
「わかってるさ。キミも飲もうぜ」
「うむ」
キミもジョッキを手にとって、ぐぐっと勢いよく傾ける。おれが注文した麦ジュースと同じサイズのハズなんだが、キミが持っているとむしろ物足りないように見える。
流し込んで飲み干すのも、ほんの一口分程度にしか思えない豪快さ。
冷えた麦ジュースがほとんど一瞬でなくなってしまう。キミの喉仏が大きく動き、その首筋にも、額やこめかみにも汗が薄っすらと滲んでいる。
「……ふぅっ」
一杯を飲み干して、実に満足そうな深呼吸。それもセクシーだ。
こんな小さなジョッキ一杯分じゃ、あっという間で物足りないな。
「んん? どうした? やっぱりフラフラしてるんじゃないか?」
「くらくらしてるんだ」
あまりにも真剣に見つめすぎていたのかも。キミは不思議そうにおれの顔を覗き込み、額を撫でる。冷たいジョッキを握ったせいで、キミの手のひらは濡れている。冷たくて熱くて気持ちいい。
これは二杯目が待ち遠しいな。