お料理へのこだわり「あっはっはっはっは! くすぐったいな! デグダス、おれの指まで食べちまってる!」
「ンわっ」
慌てて口を開く。しかし食べている途中に口を開くのは行儀が悪いので、急いで口を閉じる。恥ずかしさのあまり顔が熱くなった。行儀の悪いことをしてしまったせいもあるが、それはそうとしてグランツがニコニコ顔で、おれが間違えて食べてしまった指にちゅっとキスをしてみせたからだ。うーん、エッチだ。
「デグダス? うまかっただろう?」
「ああ! あっ。料理が、だな! とてもおいしかったぞ」
「そんなに料理が得意なわけじゃないが、キミがそう喜んでくれるならいくらでも頑張れるな」
「わっはっは。そうかあ」
などと笑いつつ、ちらちらとグランツの様子を見つめる。いやあまりジロジロと見つめてはいけない。はっきり申し上げるといやらしい目で見つめているのだ。よろしくないぞ! 我慢しなければ。
そんなおれの葛藤はきっとバレていないらしく、グランツはさらに無防備に、おれにかじられた指をぺろっと舐めた。
ウーン!
「おれもおまえに『あーん』をしたい」
「うん? いいぜ」
しまった! 心の声が。
「あーん」
さっそくお口を開けて待つグランツ。この心の声を今出すつもりはなかったので、おれはまさにタジタジだ。
「いやちょっと待ってくれ! この料理はグランツが作ってくれたものじゃないか」
「ん、そうだが」
「と、なると作ってもらったおれがあーんするのはなんだか間違っていると思う!」
「……ふはっ。言われてみると……あははっ、そんな気もするけど! わからなくもない! でもいいじゃないか、それはそれとして」
「いや! 明日! 明日だ! 明日の料理当番で、おれはおまえにあーんをする! それまで待っていてください!」
「んんっふっふっふっふ。わかったよ。ふふ。キミはやっぱり最高だな」
「うむ。明日のあーんのために最高の料理を作るぞ」
「楽しみだ」
上機嫌で笑顔のグランツ。そんなにおれの料理を楽しみにしてくれるのか! いつも以上に腕に森をかけて作らなければ!
それにおれの下心の方はどうやらバレていないな? よし。このくらいの下心は、抱かせてもらっても……いいだろうか? うーん。……やはり明日のあーんの前にちゃんと言おうか。おまえの指をその、あれそれして……あれがこうで……それだ!