とろける「暑くないか? 硬いし寝づらいんじゃないか?」
「おれは暑いのは結構好きなんだ」
「そうなのか?」
「ああ」
おれの膝の上で、グランツが頷いた。うつ伏せで顎を太ももに乗せているグランツの肌はあたたかくて、おれはさらにもっと体温が高い。くっついているとどんどん熱くなってくる。ちょっと汗が。触れ合ってる部分がしっとりしてきた。これはおれの汗なのか、グランツの汗なのか?
グランツのほっぺがおれの太ももにすりすりムニムニと押しつけられた。
「気持ちいい」
「ううん、そうか。おまえが大丈夫だと言うのなら……ふあぁ」
「ふわぁあ。……あははっ、あくびがうつってしまったな」
寝転がってるグランツはともかく、座っているおれの方が先にあくびをしてしまったというのはどういうわけか? 膝の上にグランツのあたたかみを感じているのがこれほどまでに眠気を誘うとは……。
「ふふふっ」
グランツも笑っている。しかしいつもの元気な笑い声ではないな。とろけるような柔らかい笑い声だ。あくびと一緒に眠気もしっかりうつってしまったのかな、とグランツの顔を覗き込む。
目をゆっくりとぱちぱちさせている。それにどこか遠くを見ているような、そんな感じだ。
「暑くなければ眠ってもいいんだぞ」
なにしろ今日はぽかぽかの陽気なのだ。日当たりのいい丘の上、しかもお昼ごはんをしっかり食べた後。あたたかくなる理由も眠たくなる理由もしっかり揃っている。
「少し暑いぐらいが、ちょうどいいんだ。でもおれがここで寝ると、キミがゆっくりできな……」
「……ぐう。あっ、しまった。寝ていないぞ、おれはまだ眠っていません!」
「あっはっはっはっは。余計な心配、だったな」
グランツがうとうとしているのを見ていると、おれもちょっぴりしっかり眠たくなってきただけで、まだ! 寝ては、いない!
グランツはおれの膝の上でけらけら笑いながらも、これ以上目を開けていられないというような、ゆっくりの瞬きをまた繰り返す。膝の上に置いた手の力も抜けていく。手だけではないか。全身でだらんと力が抜けて、おれの膝の上でとけたようになった。まばたきの目もすっかり閉じた。呼吸はスヤスヤだ。
よし、すっかりもう眠ってしまったみたいだな。そうそう、これが見たかったんだ。スヤスヤのその瞬間を。そこまでちゃんと起きていたからな! さっき一瞬夢の世界に飛んでいっていたような気もするが、それはきっと気のせいだ。