いざゆめまぼろし そこはまるで昼間よりも煌々として眩しい。夜通し喧騒は続く。朝になれば死ぬ。まったく近頃人の世は怪しからん。コンナ夜には人でなしも隠れやすかろう。
全くどちらで紛れたのだか。ヤンヤヤンヤと茶屋の呼び込み、如来眩しき張見世の甲高き笑い声、テンテツトンの清掻、三味線。昼より眩しく、騒がしく、捜し物にも苦労する。
だから迷わぬように、吾輩の近くを離れるなと散々言い含めておいたのだが。それこそ田舎者らしく昼見世にでも満足しておけば好かろうに。いやそも、客の振りなどせずともいい、吾々は人の目には見えぬ。だがそれこそ巧く人に化けらるるかと唆したのは吾輩であるが。とはいえ人に見えぬとしても巨大な化け蛙なんぞを江戸中に連れ回す訳にもいかぬから……。
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