秋の食べ放題 公園の方から家の前の道まで、すっかりきれいになった。ほうきで集めた落ち葉をまとめて積み上げておくと、これはこれで秋らしくていい。あとはごみ袋でまとめて公園に持っていって、焚き火をするのだ。
そう、焚き火だ! 今日は焚き火の日だ。ビレッジの中央の公園の方角からモクモクと煙が上がっている。すでに集まってきている落ち葉で焚き火が始まっているようだ。
煙が秋の水色の空にゆっくり上り、ゆっくり吹いた風でゆらゆらと揺れ、香ばしい焚き火の香りが……焚き火の中のお芋の焼ける匂いが! 漂っているような気がする。
今日は秋の恒例のビレッジの落ち葉掃きの日だ。落ち葉を集め終わったら、落ち葉で焼いた焼き芋がもらえる。つまり焚き火の日であり、焼き芋の日でもある。そして焼き芋は食べ放題だ。
今日のおやつは焼き芋というわけだ。いくつもらおうかな。最低でも家族分はもらえるので、四つか。しかし食べ放題だから二つずつでもいいのだ。八つかあ……。それは多すぎるかもしれないな。一人一つの四つに、二つ余分にもらって、一つはロックとロッタナではんぶんこしてもらって、グランツが二つというのはどうだろう。グランツは結構食いしん坊だものな。見た目にはちょっと細いのだけれども、食べるときはたくさん食べる。もっとたくさん食べてもいいとおれは思う。でもあの細いお腹にお芋二つ分、入るかな? 丸くなってしまうのでは……。
おれは自分のお腹をさすりながら、グランツのお腹のことを考えた。おれも食べ過ぎるとお腹が丸くなってしまうから、グランツもそんな感じに……。
「デグダス」
「お! グランツ! いいにおいがする!」
「あっはははは。気付くのが早いな!」
振り返るとグランツがいた。両手に大きな紙袋を抱えている。袋の口からホカホカの湯気とちょっと焦げた甘い匂い。焼き芋の匂いだ!
「落ち葉の一袋目を持っていったら先に芋をもらってしまった。これ、台所に置いてくるから、残りの落ち葉も持っていこうぜ」
「うむ」
「ふふふ、何個食べようか考えてたのか?」
「ム……」
言われてハタと自分のお腹を見て気付く。そしてさり気なくチラッとグランツのお腹も見る。細いお腹だ。自分のお腹を触りながらグランツのお腹のことを思い出していた……とは、チョット恥ずかしくて言えない。照れる。
「コホン。まあ、そんなところだ」
「あっはっは。なんと十個も貰えたぜ。今年は芋の出来がいいらしい。お腹いっぱい食べられるな!」
「そんなにか!? 多くないだろうか」
「だってキミもおれも二つは食べるだろ? ロッタナとロックは、一つずつと、もしかしたらもっと欲しがるかな……。余ったら晩飯のメニューにもできるし。つぶしてポタージュにするか、コロッケにするか……コロッケなら明日の弁当にも入れられるし……」
「おー、なるほど! いい案だな!」
「な、楽しみだな! ちょっと待っててくれ、すぐ置いてくるから」
パタパタと小走りに玄関へ走っていくグランツの背中を見つめながら、頭の中はすっかりお芋料理になってしまった。何を作ろうか。やはりお腹は丸くなってしまうのだろうなぁ。