負けず嫌い「なんだかずいぶんかわいいものを食べているなぁ」
「キミも食べるか?」
ソファの肩越しに振り向くと、キミがわかりやすくニコッと笑った瞬間だった。返事を待つまでもなく、おれは袋から取り出したマシュマロ一粒をキミの前に差し出す。
「いただきます!」
キミは大きく口を開いて、その一粒を一口でぱくっと食べた。柔らかくあたたかい唇がおれの指先に当たる。その感触、やっぱり思った通りだ。
「大きめのマシュマロを買ってきたつもりだったんだが、キミと比べると小さいな」
「もぐ……自分で買ったのか?」
「仕事帰りに衝動買いしてしまった。あんまり甘いものは好きじゃないんだけどな。あっはっは、思い出したらやっぱり……」
「む?」
「いや、お店の売り場でキミのことを思い出してしまったんだ。もう一つどうだ?」
「もちろんいただきます! ……もにゅもにゅ……甘くておいしい!」
「そうそう、これだ」
柔らかいマシュマロを口の中で転がして、ふわふわと動いているキミの頬。やっぱり思った通り……を確かめるべく、人差し指でつんつんとつつく。
一日の仕事の間に伸びてきたヒゲのツンツンした感触がくすぐったい。それはそれとして、キミの頬の柔らかさ。
「マシュマロに似てるなって思ってさ」
「いったい何が?」
「キミがさ、デグダス」
「え!」
思いもしなかった! とばかりに目を丸くして動きを止めるキミ。チャンスとばかりに、その頬をさらにつっついた。
「この辺とか特に柔らかい」
「……そ、そうなのですか? いやしかし……柔らかさならマシュマロよりもおれの方が上ではないでしょうか!」
「うん? そうかな。ほら、もう一個」
「おっ」
嬉しそうに開いたキミの大きな口に、白く柔らかいマシュマロをさらにもう一粒。
「うむむ……。……む……、うまい……。しかしおれにはもっと柔らかいところがございます! ここなんかどうだ?」
「二の腕か」
「そう!」
スッとおれの前に力こぶを作るように差し出したキミの二の腕を、遠慮なく触らせてもらう。これは間違いなく、好きなだけ触っていいってことだろう。
しかし、
「うーん、ガチガチだ」
「えええ!? 待ってくれ、リラックスする。すーっ、はーっ、すーっ、はーっ、ハアッ!」
「もっと固くなった」
「なんということだ! マシュマロに負けたくない!」
「あははははっ。二の腕以外がいいんじゃないか?」
「二の腕以外? となると……どこが柔らかい場所だろう? グランツはわかるか?」
「そうだな……キミの柔らかい部分……」
マシュマロをもう一つつまみながら、考える。どこを触らせてもらおうかな。