【酔いて狂言、醒めて後悔】頭が痛ぇ。あと腰も痛い。隣の素肌に感じる体温でヤっちまったな、と思う。
オレには友情の延長で恋人がいるが、違うだろう。隣で寝ているヤツはオレより背が低そうだ。
ちらりと見慣れたピンクが視界に──ピンクの頭? 恐る恐る視線を天井から隣へ移す。
ゆっくりとピンクのサラサラストレートに指を通して顔を見る。綺麗なツラだが特徴的な口の傷。ウソだろ?! えっっ???
オイオイ、マジか。なんでここに春千夜が?
家族で合鍵を持っているから家にいてもおかしくはない。
でも、普段の態度からオレと寝るとかあるか?
昔は可愛げがあったが、今じゃ立派なヤンキーだ。
別にオレに懐いてるってワケでもない。会いには来るが、またオレが借金こさえてないか確認しに来るだけだ。
身体に気をつけて、なんて言葉はまったく聞いていない。大抵「オイ! また女に金貢いでねぇだろうな!」だ。
一応恋人が出来た以上、オネーチャンの店で飲む機会は減った。オレから女の香水の臭いがすると、それはもう嫉妬するから。
テメェは知らねぇ煙草の臭いを纏ってるくせによ。~~本当にどうしてこうなった。
このまま天井を見つめていても仕方がない。ひとまず煙草を吸って考えよう。
布団から上半身を起こすと離れた温もりを求めたのか、眠ったままの春千夜がオレの手を掴む。
寝顔はガキの頃から天使みたいなンだよなァ。でもケツの違和感からオレに突っ込んでンだよなァ、コイツ。
最近開発されたケツは切れてないみてぇだが、違和感は残っているし腰は死んでいる。
掴まれた手を解けないまま、片手で煙草を咥えて火を点ける。
安っぽい灰皿を腿の上に乗せて深く息を吸うと、頭のモヤが少し晴れた。
灰を落としながら現在の状況を考える。
昨日は久しぶりに馬券が当たって、その帰りに気分よく酒を飲んだ。
随分と飲んだようで途中から記憶が無い。家には帰ってきたのか。
そして恋人がいるのに他のヤツと寝た。
──寝たヤツは男。しかも弟。
流石にクズと呼ばれるオレでも分かる。これはダメだわ。飛びてぇ~~。
現実から意識を飛ばしているとガチャガチャカチリ、と玄関の鍵とドアノブが回る音がする。アレ、マズくないか。
「武臣? 寝てンのか? もう十一時過ぎだぜ~」
「ッあ、わッ」
「ン? 起きてるじゃん。電話出ろよ、たけ──」
「……ぅ、タケ兄ぃ…いまなんじ?」
オレは裸で煙草吸って春千夜が起き出して真が来ていて、これはつまり────
「は?」
「あっ…あっ」
「はァ?」
布団で煙草吸う事後の恋人と人の腰に頭を擦りつける浮気男と恋人の浮気現場を目撃している恋人。修羅場だ。
「オマエ、ハルチヨか。一緒の布団で何してンだ。アァ?」
「ハーッ、ナニに決まってンだろ。テメェの目は節穴かよ」
布団からかったるそうに立ち上がった春千夜は、パンツだけじゃなくオレのスウェットも履いていた。ずるい。
「兄貴の”ダチ”のシンイチローくん、ここはオレ達の家だぜ? 不法侵入は止めろ」
「ダチじゃねぇ、この前恋人になった! 合鍵だってもらってる」
「弟のオレは聞いてねぇぞ。合鍵置いて帰りな」
「? センジュは知ってるぜ、”弟くん”は教えてもらえなかったのかァ」
「?」
喧嘩は弱いが元総長だ。ガンを飛ばす真は恐ろしい。しかし、春千夜も負けずに睨み返す。怖い。
どう口を挟んだものか、分からないオレは取りあえず吸っていた煙草を灰皿に押し付けて火を消した。どうしよう。
「武臣、早く服着ろ。オレの家いくぞ」
痺れを切らした真がオレの腕を引っ張って布団から引き摺り出す。おい、まだ腰がやべぇから!
「タケ兄、一緒にシャワー浴びようぜ」
反対の腕を急に引かれ、懐かしい呼び名で甘えられる。おい、いつもクソ兄貴って呼んでただろ!
「武臣!」
「タケ兄!」
「~~~ッオレが悪かった! だから勘弁してくれーーー!」
腕を引き合う男達に耐えきれなくなったオレは、両腕を振り払うと布団を被って泣きだした。
※※※※
浮気した臣に怒っているけれど、嫌われたくない(逃げられたくない)ので相手にキレる男達。お仕置きはするよ、後でね。
臣は面倒になってオレが悪者でいいから二人とも家から出てってくれ、とか思っている(クズ思考)
真ってンズのことも可愛がっていると思うけど、それは武臣の弟、マイの友達だからで恋敵になったら譲らなさそう。
”やさしい”って表現がまた難解なのよな…もっと真のこと語って…回想でいちゃいちゃして…でももう居ないんだよな(スリップダメージ)
平和時空の場合、ンズの傷どうするか悩む…あれがあるからハルチはンズで。でも平和ならハルチは傷なしハルチでンズには…
でもでもンズにタケ兄振り回して欲しいンだよ(欲望に忠実)
タイトルの【酔いて狂言、醒めて後悔】は酔っぱらって非常識な行いをして、酔いが醒めてそれを後悔すること