時間【仮】　実に残酷なものだ、時間というものは。
そりゃあ俺だって、最初はあんな呪文…、“デアエリス”を受け入れられなかったさ。
自分が仮死状態になる！？ロザリオ型のナイフを首に突き刺す！？！？そんな条件が発覚したら、誰でも最初は『冗談じゃない！』的なことを思うだろ？
俺もそう思った。けどね、それは“その条件に見合った対価”を知る前だったからなんだ。
時間が経ち、やがて、その対価を知る。
よく言われるだろう？『騙されたと思って──』って。その言葉通り、窮地の場面で、騙されたと思ってその呪文を発動した。ほぼ自棄。そうしたら、魔法にかけられたかのように、俺はデアエリスを好きになった。まぁそれと同時に、マリキンに怒られる魔法も着いてきたけど。
けれど、俺の頭の中にはこの事しか思い浮かばなかった。

──やっと俺も、みんなの役に立てる！！

使えるようになった理由は明確には分からない。
けど、何となくなら導き出せている。
それは、俺が身体を手に入れた時期くらいに使えるようになった、ということ。
ざくろも使えるって聞いたけど、ざくろは俺よりずっと前からだった。
そこから俺が考えた理由。
『生命を複数保有していること』だ。
ざくろは分身で生命を自分から増やせる。
で、俺は身体に複数の霊魂をすまわせてる。
デアエリスが使える俺らは…、まぁ、デアエリス組って言おうか。そんな共通点がある。
当たりかは分からないけど、これが使える理由だと思う。


よく、マリキンやシュミタロウにこう聞かれる。
『デアエリスの為に自害する時、苦しくは、つらくはないのか』と。
答えはノー。全くそんなことない。
俺の場合は、今まで足を引っ張っていた分、寧ろ役に立てるから嬉しい。
カシキン辺りが、ざくろにも同じことを聞いていたところを見たけど、ざくろも「全然？？」とのこと。
なんでも、『無駄になりかけた分身が役立つならいい』とか。
「どうせ使わんくなった分身は殺すし、同じじゃね？」
とか言ってたな。カシキン、ちょっと青ざめてたっけ。
自分で言うのもアレだけど、ざくろも俺も、他の沼達より一層、倫理観がないのかもね。