amane_nagi_☆quiet followPAST第一話 魔界の不思議な見えない学校 ※1990年に発売されたファミコンソフトの物語をなぞりつつ、アニメの内容を放り込み、コミックの内容をエッセンスとして少しだけ入れて、オリジナル要素を加えた物にする予定です。ゲームとアニメとコミックのネタバレを含んでいたりしますので、お気を付け下さい。埋もれ木真吾と言う名前の少年はいつものように、とある場所で友達と“実験”をしていた。その実験と言うのも“悪魔を喚び出す”と言うものなのだが、何度喚び出そうとしても、悪魔を喚び出す事は出来なかった。…しかしある日。魔法陣から出てきた煙に飲まれ、真吾は見知らぬ所に来てしまう。そう、ここは見えない学校の中。ファウスト博士が“悪魔くん”に選ばれし少年を、喚んだのだ…。「…何が、起こったんだ?」 僕はゆっくりと体を起こして、辺りを見回した。 自分の所だけ光が差しているけれど、辺りはとても暗くて見えにくい。目を凝らして、ようやく石造りの建物の中だと分かる。 でも・・・僕は確か、いつもの場所で貧太君と悪魔を喚び出す実験をしていたはず…。 魔法陣から煙が出てきて、周りが見えなくなって…それで……気を失った……?だとすると、これは夢…、「いっ」 自分の頬をつねってみた。けど、夢じゃない事を証明しているように、頬に痛みを感じた。 夢じゃないと言う事はもしかして、悪魔を喚び出すのに失敗して、何か大変な事が起きたんじゃ…だとしたら大変だっ。側に居た貧太君も、もしかすると一緒に巻き込まれているかもしれない!「貧太くーん、おーい!」 立ち上がり、大きな声で僕は貧太君を呼ぶ。返ってくるのはこだました僕の声だけだ。 もし貧太君が来ていないのならそれでいい。でも、来ているかどうか分からない以上、ここで諦める訳にはいかない。 僕は大きく息を吸うと、両手を口の端に持ってきて、もっと遠くに響くようにする。そして歩きながら、「聞こえていたら、返事をしてくれー!おーい、貧太くっ――」「ようこそ見えない学校へ」「わぁっ!!」 目の前にいきなり光が差し込んだかと思うと、その中に一人のおじいさんが立っていた。尻もちをつきそうになるのを、何とか耐える。 さっきまで、誰かが居る感じなんてしなかったのに…。「あ、あなたは?」 僕は心の中で驚いている気持ちを隠して、用心しながら尋ねた。「ワシの名はファウスト博士。見えない学校の校長じゃぁ」「ええっ!? ファウスト博士って…確か三百年前に悪魔を呼び出し、八つ裂きにされたってあの?」 ファウスト博士は確か、三百年前世界征服を狙うサタンを呼び出してしまい、相打ちになってこの世を去った…。 本にはそう書いてあった筈だけど、まさか生きていたなんてそんな話……、「それはワシの親父じゃ。わしはファウスト博士二世なんじゃよ」 二世がいるなんて初耳だぞっ。どの本にも、二世がいるなんて事はこれっぽっちも書いていなかった。 この場所といいファウスト博士といい、やっぱりこれって夢……とと。今はこんな事考えてる場合じゃなかった。 本当かどうか確かめようもない事だし、こうしている間にも貧太くんが困っているかもしれない。「あのっ、ファウスト博士。貧太君を見ませんでしたか?ええっと…魔法陣で変な煙が出てきた時に一緒にいた、僕と同じ年くらいの男の子なんですけど」「大丈夫。喚んだのはキミだけじゃ。きっと今頃、魔法陣を描いた場所に居るじゃろう」「そうですかぁ。よかっ……よ、喚び出したですって!?」 今、この人は何て言った? 僕の気のせいじゃなければ、僕の事を喚び出したって言ったように聞こえたけど…。「うむ。キミの描いた魔法陣は不完全だったのだが、何らかの形でこの世界と少しだけ繋がったんじゃよ。その時ほんの僅かにできた、人間界と悪魔界とを繋ぐ通路…そこからソロモンの笛がキミを感じとり、見つけたのじゃ。ソロモンの笛は此処と魔法陣とを繋ぎ、キミを此処に喚ぶ為の道しるべとなったのだが…如何せん。喚び出せるほどの力はない」 やっぱり、あの魔法陣は不完全だったのか…でも、少しだけ繋がったって事は、メフィストを呼び出せる可能性があったって事だよな。 …いやそれより悪魔界ってもしかして、ここは悪魔が住んでる魔界なのか? というよりそもそも、僕を見つけたっていったいどういう…。それに喚び出せる力がないのに、どうやって僕を…。 頭が混乱してきている所にファウスト博士は、「いや、すまんすまん。いきなりこのような説明では分かりにくかったな。噛み砕いて言えば、人間界にある君の魔法陣と、魔界にあるここを、このソロモンの笛が繋いだのじゃ。しかし、ソロモンの笛には導くだけの力・・・道しるべとなる力しかなかった。そこでじゃ。わしの力を使い、君を人間界から悪魔界のこの場所に引っ張り上げた…という訳なんじゃよ」「はぁ…」 まだよくは分からないけど…僕は今魔界に居る事は確かで、博士が手に持っている笛が僕を呼んだ。そして博士が僕を喚んだ。 だから僕はここに喚ばれた…という事なんだろうか。「さー、こっちに来なさい。キミの仲間を紹介しよう。」「仲間?でもあの僕、帰らないと…あ、待って下さい!」 ファウスト博士は後ろを振り向き、持っている杖を掲げ、「さぁーみんな。挨拶するのじゃ」 そう言うとどこからか光が差し込んで、その中に緑色をした何かの姿が現れた。「へへっ。ボク百目だモン。よろしくなんだモン」 百目!?確か、悪魔事典に載っていたあの…。 事典でしか見た事のない百目が今、目の前に居るなんて…やっぱりこれは夢……? 僕がそう考えていると、新しく光が差し込み、今度は女の子が立っている。「あたし…、幽子…」「ウ~チ~の幽子ちゃんは~恥ずかしが~り~屋~」「続いて家獣のバウーじゃ」「バウー!!」「みんなを乗せて移動することができるんじゃ」 家獣は分かるけど、人間のように見えるあの子も、悪魔――、「わわっ」「私は鳥乙女ナスカ。よろしく」「ケケケ。オイラ達はピクシーさ」「あっしは こうもり猫でやんす。あ、ヨイショ!! ドッコイショ!!」 考える間もなく白い鳥がすぐ近くで羽ばたいて、空へ向かっていったかと思うと、人の姿をして側へ降りてきて自己紹介をしてくれた。 続いて悪魔人名録に載っていた双子の悪魔のピクシーと、こうもり猫が現れる。 驚いている僕をよそに、心の中ではすごく喜んでいる僕がいる。 だって、何百回と実験をしてメフィストが喚び出せなかったのに、こんなにもたくさんの悪魔達と会えるなんて、思いもしなかったもの!「キミを…いや。悪魔くん」「え…」 どうして僕のあだ名を博士が知っているんだろう? 僕はファウスト博士の方を振り向いた。「此処に喚んだのは他でもない。悪い悪魔によって人間にもたらされるさまざまな不幸をなくし、人間界に幸せな永遠の楽園…極楽を創り出すという使命が、悪魔くん…君にあるからなんじゃ」 僕に使命があるだって? そんな事、ある訳がない。 そう言おうとしたけれど、博士が杖で床をつついてタイミングを逃してしまう。すると床からイスが出てきてそれに座り、言葉を続ける。「ユダヤの予言書に書かれておる、悪魔くんのことについては知っとるかね?」「…聞いた事はあります。何でも一万年に一人地上に現れ、魔界より悪魔を呼び出し、その力を使って大いなる幸せをもたらすという…」 そう。ユダヤの予言書には、一万年に一人現れるという悪魔くんが、ユートピアを作ると記されて……あっ。「どうやって知ったのかは知りませんけど、僕は学校で悪魔くんなんて呼ばれていますが、それはあくまであだ名で…」 ファウスト博士…ファウスト一世は悪魔を喚び出す事に成功した事で、その世界ではよく知られている人物であるけれど、未だに僕はメフィストを呼び出せてもいない。 悪魔を喚び出すには魔法陣の正確さや知識、度胸や勇気が必要なのは知ってる。 今は間違っているのかもしれないし、足りないだけかもしれない。だけど、喚び出せていないのは本当だ。 僕は悪魔に詳しくて、悪魔くんと呼ばれているだけの小学生なんだ。 ファウスト博士にそう言おうとして、「いーや。キミなら悪魔くんになることが出来るのじゃ。ソロモンの笛がそう認めたのじゃからな」 ファウスト博士ははっきりと断言をした。 認めたって言われても、僕は…。「実はわしもかつて悪魔くんになるために努力したのじゃ。だが…わしは選ばれた人間ではなかった。そこでわしは真に悪魔くんの星を背負った人間を捜し出し、悪魔くんを助ける善なる悪魔を養成するという計画を立て、実行に移したのじゃ。ここに集まっている者達は言わば、悪魔の道を踏み外した者達でな。人間に近い心の持ち主ばかりなんじゃ」「人間に近い心?」「悪魔として人間を見るのではなく、同じ生きている者として人間を見る事が出来る心を持っている者達なんじゃよ」 なるほど…。人間は悪魔に対する悪いイメージを持っていたり、自分とは違う存在としての扱い方をするけど、それは悪魔も同じで、人間に対する考えもあれば見方も扱い方もあるって事か。 そういった事を置いておいて、同じに見る事ができる悪魔もいるんだなぁ。…か、感心してる場合じゃなかったっ。「ファウスト博士、僕は――」「悪魔くん。君はこの悪魔達と共に、人間界を永遠の楽園にするために戦わねばならぬ。いや…使命というのが信じられないのなら、わしの頼みとして聞いて欲しい」 頬をつねった時は痛かったけど、痛みを感じる夢もあるって聞いた事があるし、何処かで夢だと思っていた。 …いや、夢だと思いたかったのかもしれない。 悪魔達に会えたのは嬉しかったけど、あんまりにも唐突すぎて考えが追い付かない。 いきなり、ユダヤの予言書に書かれている悪魔くんだと言われて、考えがまとまらない。「ファウスト博士…僕は……。そんな事が僕にできるはず――」「できる!! わしの教えに従い、この見えない学校でその為の資質を身に付けるのじゃ。さすれば、戦う為の力もついてくる!」 ファウスト博士は力強く断言をした。そして、「お願いだ悪魔くん。頼む…わしには出来ない事なんじゃ……」 僕を見つめ、僕の答えを待った。 予言書に書かれている悪魔くんでないことは、分かり切った事だ。でも…もしもそれが本当の事だとしたら? もし本当だったら、僕にはその力があって世界を平和に導く事ができる。しかしここで断ってしまったら…力があるのに、導く事も出来ないできっと…後悔をすると思う。 僕はファウスト博士を見据えて…、「…分かりました。悪魔くんかどうかはまだ信じられませんが、頑張ってみます」 そういうのが精一杯だった。けど、「それでもいい。ありがとう、悪魔くん」 ファウスト博士が言うと、みんなが拍手をしてくれた。「すぐに授業を始めよう…と言いたい所だが、今日はもう帰りなさい」「え? 」「君の友達も心配してるだろうからな」「いっけない。あまりにもいろんな事がありすぎて、貧太くんの事をすっかり忘れてた」 周りのみんなが笑い合う。「早く戻ってあげて悪魔くん」「もう、悪魔くんたらぁ」「戻って戻って」「バウーッ」「悪魔くん、また来てね」 悪魔くんだと言われて、これから先がどうなってしまうのか不安だけど、みんなと出会えた事には感謝したいと思った。 僕はみんなに見送られる中、人間界に戻る為ファウスト博士の後を着いていった。「よっと」 ファウスト博士に言われた通りトンネルを潜り抜けた。 不思議な色をした空が広がっていた魔界だけれど、今は青い空が広がっていて、見渡すとコンクリートの道や家が並んでいる。 僕は見慣れた風景にほっとした。でもここって…、「ここ、僕んちの側じゃないか」 通りで見覚えがあると思ったら、家がすぐそこだった。後ろを振り向くともちろんとでも言うように、見慣れた電信柱が立っている。 もしかしてここから出てきたのかなぁ。あのトンネルを潜ると人間界に帰る事が出来て、出た場所から魔界に行く事が出来るって博士は言っていた…。 人通りはあんまりない方だと思う。でも、いくら人通りが少ないって言っても、人に見られたら大変な気がするんだけどなぁ。 なんとはなしに電柱を触ってみる。けれど触った所は固かった。両手で押してみてもコンクリートと変わりない固さで、これじゃあどう考えても、「魔界に行けないんじゃ――」「悪魔くーん!」「うわぁっ」 声がしたと思ったら電信柱から何かが飛び出してきた。飛び出した何かは勢い良く僕にしがみついたけれど、耐えられなくなった僕と一緒に倒れてしまった。 僕は体を起こして飛び出してきた何かを見るとそこには、「君は、百目じゃないか! どうしてここに…」「えへへ、悪魔くんに会いに来たんだモン」 見送りたいと言って博士と僕の後を着いてきた百目とは、ついさっき名残惜しく別れたばかりだったんだけど…どうやらすぐに再会を果たしてしまったらしい。「ダメじゃないか付いてきたりしたら。こんな所、他の人に見られたら…」 百目の姿はどうみたって人間じゃない。貧太くんだったら大丈夫でも、これがもし、僕と貧太君以外の人間に見つかりでもしたら、一体どうなる事か。 僕は辺りを見回してみた。幸いな事に周りに人は居なくて、心配はないみたいだとほっと胸を撫で下ろそうと、「な、なんだそりゃあ」 素っとんきょうな声の主は、僕の家か何故か出てきた情報屋らしかった。 何でよりによって、こんな時に…。 僕は急いで立ち上がって、百目の手を引いて立ち上がらせた。「なーんかあるとは思ってたけどっ。まさかこんなすぐに会えるだなんて!ね。もしかして宇宙人?ねえ、悪魔くん」「……」 さっそくめっかっちゃったかなりヤバイ相手に、僕はどう言い訳をしようか考えていた。 本当の事を言う訳にもいかないし、ここは逃げるしかないかも。でも、明日学校で会うのは避けることは出来ないし……。 そう考えていると、百目の周りでうるさくしている情報屋に、「静かにして欲しいモン!」 と言って、百目が薄い紫色の煙のような物を出した。煙はすぐさま何事もなかったかのように、跡形もなく消えてなくなってしまったけれど、「百目! き、君…いったい何を」「大丈夫だモン。心配ないんだモン」「ん?えーと…あれ?何かこの子、すごく珍しい気がしたんだけどなぁ」「へ?」 …おかしいぞ。さっきまで百目の周りでカメラを取っていたのに、あんなに騒ぎ立てていた情報屋が今はじっと、百目の事を見つめている。 じろじろと見た後今度は僕を見て、「何だよ。目がたくさんあるだけの子供じゃないか悪魔くん。なんか見つけたらすぐに知らせてくれよなー」 そう言い放って、情報屋は去っていってしまった。「…今の、君の力なのかい?」「へへ、そうだモンっ」「すごい! ねえ、他にどんな事ができ――」 興味と関心が一気にわいてきた。 でも、自慢げに照れている百目に、僕は聞かなければいけない事を思い出した。「そうじゃなくて・・・・百目。どうして付いてきたりしたんだい?」「ファウスト博士が、悪魔くんに伝え忘れた事があるって言ってたんだモン。だからボク、悪魔くんに会いに来たんだモンっ」「伝え忘れた事?」 何だろうと僕は首を傾げた。明日と明後日は休みだから、見えない学校に行って聞く事もできるのに…。「悪魔くん。魔界に行く方法、知ってるモン?」「魔界に行く方法って…」 あの魔法陣でファウスト博士が僕を喚んだって言っていたけれど、あれはソロモンの笛の力と博士の力を合わせて出来た、ほとんど偶然でできた事だって言っていた。 だから僕を喚ぶ時に毎回使えるものではないだろうし…。 博士が言っていた出入り口は、使えないみたいだし……。「着いてきて欲しいんだモン」 百目はニッコリ笑うと、考え事をしている僕の手を引っ張り、歩き出す。 僕は疑問符を浮かべながら百目に付いていった。 電柱から西に十歩、東に十歩進んで、また東に十歩進んで、西に十歩進んでそして電信柱の前に戻ってき、「うわぁああ!」 百目に手を強く引っ張られ、目の前に電信柱が迫った。ぶつかると思ったその瞬間――…変な感覚に包まれて、「悪魔くん、魔界に着いたモン」「え…?」 ぎゅっと瞑っていた目を開けると、そこには不思議な色をした空と風景が広がっていて、後ろには人間界と魔界を繋ぐあのトンネルがあった。「百目…これって」「人間界から魔界に行く方法だモン」「そうなんだ……はぁ。びっくりさせないでよ百目」「?びっくりしたモン?」 魔界に行く方法を教える為に来たとは言っていたけれど、まさかあの、固くてびくともしなかった電信柱から行けるだなんて、思いもしなかったもの。 でも…、「ちょっと面倒なんだね、人間界から魔界に行く方法って」「そうなんだモン。けど…さっきの人みたいにみんなが簡単に行けたら、きっと大変な事になるんだモン」「はは、それはそうだね。わざわざ伝えに来てくれてありがとう百目。助かったよ」「えへへぇ」 嬉しそうに笑う百目を見て、僕も自然と笑顔になる。…と、そういえば。「…貧太君を捜しに行かなくちゃいけなかったんだった」「貧太君?」「僕の友達。ファウスト博士に喚ばれて、僕がいきなりいなくなっちゃったもんだから、今頃心配しているかもしれないからね」「ふぅん…」 今まで笑顔だった顔は、すぐに残念そうな顔になった。百目には悪いけど、僕はそれが可笑しくて笑いながら、「一緒に来る?」 百目に聞くと一瞬きょとんとした。そして、「…いいモン?」「人に会ってもさっきみたいに平気だろうし。それに…貧太君にも紹介したいしね」「うんだモン!」 本当に嬉しそうな百目と、僕は手を繋いだ。今度は僕が案内をする為に人間界へと歩き出した。「じゃあね、貧太君」「ああ、またな悪魔くん。百目も」「バイバイだモーン」 貧太くんはあれからずっと、呪文を唱えてくれていたらしい。同じ方法を何度も試せば、いつかきっと同じ事が起こるだろうと信じて…。 僕は貧太くんに心配をかけてしまった事を何度も何度も謝り、百目を紹介した。そして、今まで起こった事を説明した。 話の途中、貧太くんがいきなり立ち上がったかと思うと、悪魔くんと名付けたのは僕なんだ、と百目に自慢そうに言った。 百目も負けじと、ボクこんな事ができるんだモンと言って、掛け声のようなのを言ったのと同時に、体中の目玉が辺りに飛び出すのを見せて自慢をした。 二人ともきっと良い友達になれるだろうと、僕はそう思った。「百目。もう遅いし、君もそろそろお帰り?」 もう日は傾いていて、だんだん暗くなってきている。 悪魔だから夜は危なくないかもしれない。けど、百目は悪魔と言ってもまだ子供だと思うし、やっぱり夜の町を歩かせるのは心配だ。 でもなかなか返事が帰ってこなくて、僕は百目の名前を呼んだ。「…百目?」「ボク…まだ帰りたくないモン」「え…」「ボク、まだ悪魔くんと一緒にいたいモン」「百目…」「……」 洞窟に辿り着くまでの間。百目は今、何処かにいるかもしれない両親を探しているんだって聞いた。そう言っていた百目の姿はとても寂しそうだった。 けれど、両親が居る僕には百目の寂しさは分からない。でも…、「…僕のうちに来る?」「悪魔くん…?」「家族がいいって言ってくれるか、保証はできないけどね」 でも、寂しいという気持ちが分からない訳じゃない。家族が何て言うかは分からないけど、一生のお願いと言って頑張って説得をしてみようと思う。「うわぁっ。わあいっ、わあいだモーン!」「ふふっ…悪魔ってすごく長生きだから、外見と中身は違うって書いてあったけど、百目はそのままなんだね」 多くの悪魔は長生きをする為、外見と違って本当はかなり幼かったり、その逆で歳を取っていたりするってたくさんの本に書いてあった。 百目は僕より少し低いぐらいの背の高さで、性格はすごく幼く感じで…歳は分からないって言っていたけれど、もし人間だったら僕と同じか、一個下の学年のなのかなぁと僕は思った。 頭にハテナを浮かべているような百目に、「さ、いこっか。でも、もしダメだって言ったら大人しく帰るんだよ?」「ハーイだモンっ」 そうして僕たちは一緒に、家へと帰っていった。 犬小屋だったら百目も家に住んで良いと母さんに言われるのは、ほんの少しだけ先の話…。Tap to full screen .Repost is prohibited Let's send reactions! 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