生なくりーむゲートの監視が終わり、お昼頃の時間帯。犬飼は公園のベンチに座り、買ってきたサンドイッチを口の中に頬張る。片手で携帯を取り出し、メールが来ていないかを確認をしていると、見知りの声が聞こえてきた。
隣には諸菱建設の次男である諸菱賢太、そして最近再判定されたS級ハンターの水篠旬が諸菱に一方的に話されている様子が見えた。
するとこちらの視線に気づいたのか、旬は目線だけ動かし、犬飼と目が合う。少しだけ頭を下げ、犬飼も頭を下げた。
旬は方向を変え、犬飼方へと歩いて行くと、諸菱も途中で存在に気づき後をついて行く。まるで懐いた子犬の様に見える。
「こんにちは、犬飼課長」
「こんにちは、水篠ハンター、諸菱ハンター」
なんとなく雰囲気が変わった感じがした諸菱は、キョロキョロとあたりを見渡しアイスクリームのキッチンカーを見つける。そこまで離れていないので並んでいる間に二人の様子を見れるほどだ。
「僕、アイスクリーム買ってきますね!」
「え」
旬の返事を待たず走ってキッチンカーに向かい数組の列の一番後ろに並んだ。旬は呼び止めるのを諦め、犬飼に視線を戻した。
「お昼中ですか?」
「えぇ、まあ軽くですけど」
犬飼が持っているサンドイッチをじっと見つめてくる旬に、口を入れようとするが、どうにも視線が気になりチラチラと顔を何度か見る。
「あの、どうされまし…た?」
「あ、いや……珍しいものを食べているな、と」
そうだろうか、と思う犬飼は自身が持っているサンドイッチの中身を見る。確かにあまり食べている人は見かけない。中身はほとんどが生クリームで、ポツポツと苺が入っている。おそらく食べたことが無いと判断した犬飼は、食べかけではあるが、旬の方へと差し出した。
「………えっと」
「どうぞ、食べかけでもよければ」
「でも犬飼さんの貴重な……」
「何処でも買えるので、お気になさらず」
そう言われ、旬は犬飼からサンドイッチを受け取った。『ありがとうございます』と、サンドイッチにかぶりつこうとするが、犬飼が食べた部分から行くか、別方向から行くか何度か迷い、結局同じ所から旬は口をつけた。
「僕は気に入ってるんですけど、どうですか」
「………とても、甘いですね」
サンドイッチに生クリームは旬にとって中々想像つかない組み合わせで、恐る恐る口の中を噛みしめる。口端には生クリームがついており、それに気づかず口をもぐもぐと動かす旬に、犬飼は微笑みながら、その生クリームを親指で拭き取り、自身の口の中に入れた。
それを目で追っていた旬は、口に入れる所でピタッと固まり、一体何をされたのか頭の中で整理する。
「…………すみません、変な癖があって」
「いえ、その、あの…」
突然の事に言葉が出ず、旬は頬を染め、残りのサンドイッチを犬飼に返した。その反応に犬飼も同じく頬を染め、旬に目線を合わせないように、公園の池の方を見つめた。
二人の心臓はドキドキと煩く、体は熱かった。