『風邪』『風邪』 さのさんお誕生日小説 総受けですメイン犬旬
ふと目が覚めると、体が熱い事が脳内に伝わってくる。特に背中が熱く、じっとしていられない程にマットレスにも熱が残っている。
「熱い……」
レベルアップ出来るようになってから、旬は一度も風邪や病気になった事は無く、久々の倦怠感に慌てていた。影を呼び出そうにも、そんな体力は無く、重い頭を動かしで寝返りをうつ。熱さで目から自然と涙が出ていた。
お腹が空いたので何か食べたいとは思う。体を動かすのに通常より倍の時間を掛けて起き上がり、フラフラの状態でキッチンへ向かうものの、食材も無し、簡単に出来そうな物も無かった。
「………」
ふと影に買い出しだけでも、と考えたが騒ぎを起こすだけで無駄に時間が掛かりそうだと、旬は諦めて外出用の服とマスクをつけて家を出た。
サンサンと光り輝く太陽が旬の体力を奪う。今日の気温は39度で、自身の体温は38.4℃。システムの機能が無ければ恐らく出る前から倒れているだろう。
汗をかきながら、近くのコンビニに入れば冷房の風が旬の体を冷やしていくが、今度は段々寒くなり羽織っていた長袖をぎゅっと握りしめながら直にでも食べれそうな物をカゴの中に入れていくと、聞いたの事がある声が隣から聞こえてきた。
「水篠ハンター……?」
心配そうに眉をハの字にし、こちらに近づいてきたのは、旬と同じぐらいの身長で、ハンター協会の監視課の課長を務めている犬飼が居た。マスクを付けているのが珍しいのか、目を泳がせている。
「犬飼、課長……」
「大丈夫ですか?先ほどからずっと体がフラついて……」
「へいき、です……たぶん」
にへらと笑う旬に犬飼はドキリと胸を高鳴らせた。
犬飼の目の前にいるのは、力の抜けた顔をして笑っている旬だが、太陽の陽の光で淡く光る汗と体が熱いせいで涙で少々、顔が濡れており、その妖艶さに犬飼は生唾を飲んだ。
そしてふと目をカゴの方へと移した。
「水篠ハンター、もしや風邪ですか?」
一度頭を傾け、直ぐにその質問に頷いた。
「家には誰も?」
「…はい、数日は妹も母も旅行で帰ってこないので…」
その旬の一言に、犬飼は何か思いついたのか、旬が持っていたカゴをレジへと持っていく。会計を済ませると、犬飼が乗ってきた車の助手席に乗せられた。
「あの……」
「その状態で帰るつもりで?途中で倒れますよ」
買った物は後部座席に置かれそのまま車が発進すると座席の背もたれに重力が行く。
「すみません……」
「……ゆっくり休んでください。」
――――――――
ひやりと額に冷たい何かが乗せられた気がした。
旬はゆっくりと瞼を開けると、既に背景は車ではなく、恐らく犬飼の家のベッドの中に居る。
「……起こしましたか?」
布団から顔が出ている方へ向かって歩く犬飼に目で追いながら頷いた。
片手にはコップと風邪薬に先ほど買ったゼリーを持っていた。
「飲めますか?それとも先に何か食べますか?」
「……食べたい、です」
「少し時間が掛かりますが……待っていてください。」
サイドテーブルに持ってきた物を置き、何処かへ行ってしまう。ドアが閉じる音が聞こえ、旬は布団の中で溜息をついた。
数十分後、何やら小さい鍋を持って来る。
未だにブクブクと音を出し、出来立てだと分かる大きい湯気が上へと上がって行く。
「お粥ですが、色々入っているので飽きないかと」
「ありがとうございます……」
体を起こし、マスクを下へと下げる。サイドテーブルに置かれたお粥をスプーンで掬い、少しだけ息で冷まして食べた。
確かに沢山入っているおかげで味には飽きは来ず、口の中へと入れていく。お粥を食べ終え、薬を飲み、再び布団の中へと犬飼に戻される。
「あの、流石に…お世話になるのは―――」
「いいですよ、そのまま帰って倒られても困ります、それにもうお世話してます」
少しだけ旬はうなりながらも、犬飼の布団を受け入れ、中へと潜る。少しだけ煙草の香りがするが、その香りさえ今の旬には居心地が良く、うとうとと瞼を閉じたり開いたりを繰り返す。
「僕の事は気にせず眠ってください」
「…………はい」
冷たい手で、旬の額を撫でる。その冷たさは旬にとって心地よく、その手に擦り寄る様に額を押し付ける。なにやら写真を撮る音が聞こえたが、眠気と心地よさが買った。
その次の日、寝顔がハンター内に出回り協会はS級ハンターで溢れたそう。