居酒屋のんのん 旬愛されS級ハンター達が密かに通う居酒屋のんのん。中々見つからない場所にあるので、有名人や高ランクハンターの人が集まる。取材も記事も一切載せる事を禁止している居酒屋だった。
「………水篠ハンターに、無視された…」
どんよりとした声でお酒を片手に、カウンターに顔を伏せている。隣に居た大柄の男が背中を叩き「まあまあ」と慰める。
「俺なんか手を振り払われた、おあいこだな」
「あなたは認識されているじゃないですか!!」
がばりと起き上がり大柄の男に怒鳴りながらも、細男は酒を煽り、再び机に伏せる。
S級ハンターの最上ハンターと白川ハンター。うちの店によく来る常連客で、最近は水篠という男の話題で持ちきりだ。
「兄ちゃん、追加はいるかい?」
俺が声を掛けると、酒で酔っているのかほんのり赤く染まっており、空のジョッキを渡してくる。
「みずしの、さんだっけ…そんなに素気ないの?」
「正直何を考えているか分からないな、だが……気にはなる、色々と」
「渡しませんよ、僕も気になるんですから」
「あいされてますね~~」
俺はジョッキに酒を入れ、最上ハンターに直接渡し、つまみ程度の料理も出しておく。正直、男が男に興味があるとかゾッとする。そっちは無いからな…。
結局その日は閉店まで水篠という男の話ばかりでしまいになり、次の週末には一人メンバーが増えた、それも泣きながら。
「うぅ……みずしのさぁん……僕というものがありながらぁ……ずびッ」
ボロ泣き状態の男は、恐らく最上ハンターや白川ハンターとりも若く、水篠という男の名前を呼びながら泣く。失恋だろうか。
「未成年に手をだすなんてぇ……ううぅ」
「ブッ」
思わず吹いてしまった。水篠という男は一体何者なんだろうか、未成年に手を出す??色々ダメじゃないか?
「えぇっと、大丈夫?」
「はいぃ……大丈夫です……」
おしぼりを渡せばそれで鼻を噛み始め、音が響く。まだまだ若そうだから、お酒では無くコーラを出しておく
「僕も飲めます!!一番!一番強いのを!!」
「やめとけ諸菱ハンター…」
白川ハンターが止めようと入るが、諸菱は飲むと言って聞かないため、仕方なく薄めのお酒を渡した後、一気に飲み干してしまった。
「あーあ、これ酔ったらどうするんです?僕は送りませんよ」
「お前なぁ……」
「ふふぇ………せかいが、まわる…」
「も、諸菱ハンター!」
その日は諸菱を抱えて白川ハンターが送り出し、最上ハンターはしれっと一人で帰って行った。
そうして次の週末、またもや一人増えた。いやこちらとしては商売繁盛だが……
「大虎さん、なんで俺に教えてくれなかったんですか?」
「いや、こういう所…苦手かと思ってな」
「変な人だなぁ、俺…嫌だなんて言った事あります?あ、ビール一つください」
「あいよ~」
爽やかな人だなぁと思いながらジョッキを目の前に置いて置く。
今度は一体なんの話が聞けるのか…出来れば水篠という男の話は聞きたくないと願うが、フラグは折られるためにある物だと思いだす。
「そういえば、水篠ハンターと最近ギルドを作ったと聞きましたが」
最上ハンターが話題を出し、ちらりと諸菱の方へと顔を向ける。
「羨ましいですねぇ……僕は無視されたというのに」
「まだ引きずっているのか」
「引きずるに決まってるでしょう?無視ですよ、無視……しかも二回も…」
くぅっと悔しそうな声を出しながら酒を煽る。そんな最上に勝ち誇る者が一人。
「え、最上さん無視されたんですか?俺普通に話しましたよ?」
「「何!!??」」
いや食いつき具合が半端ないな…と焼き鳥を焼きながら聞いている。
「今度一緒に出掛けますよ、二人もどうです?」
「剛、あとで話がある」
「僕もあります、じっくりと」
「え…怖いんですけど…」
そんな中もくもくと諸菱はスマホで水篠と連絡を取っている事を誰も知らない。
再び週末。
またもやS級が一人…とは行かず、増えずにいつもの四人組。そもそも諸菱という男はS級なのか…聞くのは失礼だと今まで聞かずには居たが…まあ一旦このままでいいだろう。
いつものように酒とつまみを作っていると最上ハンターが突然立ち上がった。
「あの野郎ッ…!!!」
「突然何ですか…というか最上さん、そんな言葉遣い出来るんですね」
「ンンッ……失礼、黒須ハンターと水篠ハンターの背中写真がSNSに」
「どういう事ですか?」
突然の台を殴る音に全員が体を硬直させた。
「見せてください、へぇ、黒須ハンターですか、どこにいるんです?あぁ、このあたりじゃないですか……墓に丁度いいですね」
「待て、剛、早まるな!!」
メイスを持ち出して外に出ようとする美濃部ハンターを止める白川ハンター、ちなみに諸菱はというとぶつぶつと何か唱えているように聞こえる。
「水篠さん、僕に愛想尽いちゃったんですかね…」
なんだかすごい言葉が聞こえた気がする。これはもしや世に言うメンヘラという奴ではないだろうか
「僕もちょっとその毛玉、燃やしてきます」
「俺も刻みたい気持ちもあるがやめろ!」
殺意マシマシのS級ハンターが出口に向かって歩いて行く。
黒須という方、今すぐ逃げてください…じゃないと骨にされますよ…。