『花見』 カナン島レイドは旬の参加により全員死亡せずに事なきを終えた。リューは自国に帰国した後、水篠旬という男が気になっていた。何度も顎に手を添えながらレイジに調べさせ家族関係などを聞いたり、ハンターになった理由やゲートクリア回数…レイジも最初の頃は何か情報が欲しいのかと思っていたが、最近調べて欲しい事がハンターとしてではなくなってきた。
好きな食べ物、嫌いな物、よく行く場所、普段何をしているのか…。旬に関しての内面を聞いてくるばかりになり、レイジは今日の報告で聞いて見る事にしたのだ。
「リューさん、一つ聞いても?」
「なんだ、手短にしろ」
「先ほどから水篠旬に関してばかり聞いてきますが…」
「情報収集だ、それ以外は無い」
とは言うものの、携帯の中に入っている写真が旬の顔ばかりになっているのはレイジも気づいている。
もしや…無自覚…?と窓に目を逸らした。
「……リューさん、水篠ハンターは平和的だそうです、今度花見にでも誘われては?」
「ふむ……考えておこう」
顔は全く動いていないリューだが、レイジには分かった。目がほんの少しだけ見開き、既に指は検索するために忙しく動いていることを。
「ではこちらから声を掛けてみましょう」
「……いや、俺から掛けよう」
画面は切り替わり、メッセージのやり取りの履歴が少しだけ残っている。一番上には水篠旬と書かれており、リューがメッセージを送った後、すぐにそれは返された。
『水篠ハンター、今度そちらの国に行くが花見があるそうだな』
『花見、ですか。』
『日程は近々連絡する、行かないか』
『いいですよ、他のメンバーも連れていいですか?』
『別に構わない』
そんな淡々としたやり取りをレイジは見守り、ふとリューの顔を見ると口元は僅かにだが上がっている。
久々に見たリューの顔に、こちらも思わず口元が緩んだ。