『』「遅かったな、水篠」
拳には血が付着しており、殴っていた相手は顔が痣だらけになっている諸菱だった。
怒りで震え、将人の駒である男二人を蹴り飛ばした。
「舐めてんじゃねぇぞ!」
「黙れ」
殴りかかろうとする将人の顔を全力で殴り、廃ビルの外へと吹き飛ばされる。急いで治療しなければと、柱に寄り掛かっている諸菱の体を起こす。
「……諸菱くん?」
見かけによらず、重いなと思う。だが呼びかけに答えない諸菱に、気絶でもしているのだと、そう勝手に思い込んだ。いいや、思いたかった。
「ベル、治療しろ」
「………王よ、私でもそういった治療は」
「ベル!」
「わかりましたっ」
ベルの治療ならわずかでも助かるはずだと、旬は無理やりにでも諸菱を治療した。それでも分かっていた、段々身体が冷たくなっているのと、硬直が始まっている事。
口は殴られて切れており、痛々しい程何度も殴られた痕。
怒りが抑えきれないのか、ベルもびくびくと触覚を震わせながら治療する。
「よくもやってくれたな、水篠しゅ――――」
将人の声が途中で途切れる。隣で見ていたベルは大きく目を見開き、将人の首が地面へ落ちるのを見た。
「王よ…どうか怒りを」
「黙れ」
「――――」
少しずつ諸菱の死を実感し始め、何故か片目から涙が出てくる。
トーマスが現場に到着し、既に旬が始末した後で、仲間を殺された事に憤怒したトーマスは、旬によって制圧された。
降参だと言うトーマスに対して、手を止める気は無く短剣を振り上げる。
「水篠ハンター!おやめください!」
「どうでもいい」
「っ…」
アダムが旬を抑えようと声を張って止めようとするが、旬の芯までは届かず振り下してしまい、トーマスは息絶えた。
アメリカの国家権力級であるトーマスを殺した事により指名手配される旬は、諸菱の遺体と共に二度と現れる事は無かった。