『悪夢』「たい、が…さ…たすけ―――」
「剛ッ――――」
カナン島レイドから数日が経った今でも白川は毎日の様に夢を見る。
「どうして助けてくれなかったんですか」
すでにこの世にはいない彼の声が脳内に響く。
耳を塞いでもそこから透き通るように、言葉は白川の心を蝕んだ。
「どうしてですか」
「仕方が無かったんだ、あれは…っ」
頭を抱え、これ以上何も言わないで欲しいと大きい身体を護るように丸める。
「―――痛かった」
「………っ?」
「痛い」
「剛……?」
痛みを訴える美濃部に、顔を上げたがそれが間違いだった。赤色に染まった美濃部の体、傷口から溢れる血の量にぞっとする。先ほどまであった瞳は黒く、血涙を流す。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
「―――――――――っは!!」
息が苦しくなり、無理やり夢から覚めた白川は、冷や汗を大量に流しながら、両手で自身の首を掴んでいた。
いつもよりも夢が現実に近いように感じ、気持ち悪さに洗面所に向かって顔に冷水をかけた。鏡には先ほど悶えていた原因の一つであろう首に、手形がついていた。
「はぁ………」
自身の手を重ねると徐々に顔を青ざめる。
手形は明らかに、白川の手よりも一回り小さかった。
「たいがさん」
「っ――――!」
end