『変質者』最近毎日の様に見られている気がする。
そう感じたのは三日前からで、ゲートの中以外では視線を感じる。
「な、なんなんだ…」
なんか恨まれる事でもしたかな…いや、どのゲートでも足を引っ張ってるから心当たりが多すぎるけど…。
不安がりながらもギルド協会から要請されたD級ゲートに足を踏み入れる。もちろん案の定、旬はD級モンスターに敵うはずがなく、大きく怪我を負った。今回は運が悪く、ヒーラーは旬に対してあまりよく思ってはいなかった。
「おい、邪魔だ」
「足手まといなんだよっ、てめぇは」
と、次第には足蹴りを入れるほどこのメンバーには嫌われてしまった。
それでも旬は腰を低くし、弱い事を謝り、後方で岩陰に隠れて倒せそうなモンスターに剣を向ける。
そこから出る少量の魔法石は精々数万程度で、旬の怪我の量とは割に合わない報酬だった。
ボスを攻略し、ゲートから出れば、最程のD級ハンターが近づいて、旬が持っていた魔法石を奪い取る。
「あ、ちょ…っ」
「お前には勿体ねぇから、俺が使ってやるよ」
「あはははっは、可哀想~」
魔法石を上へと持ち上げ、ぷらぷらと揺らして煽るような言葉を旬にぶつける。力の差に太刀打ち出来ない旬は、取られた魔法石は渋々諦めるしかなかった。
そんな笑い声で埋まった空間に、一つだけ別の音が近づいてきていた。
「は、ハンタースギルドマスターの、最上真ッ…!?」
「どどど、どうしてここにっ…」
「僕がここに居てはいけないという何かが…あるんですか?」
男達にニッコリと微笑んだそれは、旬も顔を引きつる。全く笑っていない笑顔ほど、怖いものは無い。
「E級…水篠ハンター、ですよね」
「えっ……?」
怖い笑顔から急変し、旬と目が合うと優しそうな顔で微笑んでくる。別の何か、回りにほわほわと飛んでいるような気がする。
「は、はい…?」
「是非、うちのギルドに来ませんか?」
「……は?」
突然何を言っているんだこの人は。という顔をすれば、最上は笑いながら「可愛い人ですね」と褒める。
褒める…?可愛い人…?とキョロキョロと周囲を見回るが何処にも女性はいない。つまり自分の事だと自覚して、カクカクと最上の方へと顔を戻す。
「ずっと見ていましたよ、水篠ハンター……僕は」
「ずっと感じていた違和感って……」
「すみません、僕も抑えればよかったんですけど」
「謝るところが違う気がするんですけど…」
「よければこの後時間はありますか?一緒にディナーでも……」
と肩を掴もうと手を伸ばすが、それをすすっと後ろに下がって旬は避けた。徐に携帯を取り出して電話を掛ける。
「おや、ご家族に?」
「すみません、ハンター協会ですか?今S級ハンターに襲われそうなんですけど」
「ちょっ…!」
一気に距離が離れた旬の心は果たして縮まるのか……
次回!私が食べた!