「水篠ハンター、今からお時間は?」
「はい、ありますよ」
ゲートから出てきた旬を見かけた犬飼が、車から降りて駆け寄る。
ダンジョンブレイク間際のゲートでもあるのだろうかと思って時間があると答えてしまった旬。犬飼は硬い表情のまま「ありがとうございます、ではこちらに」と車へと誘導された。
向かった先はとあるマンションで、車を発進させてから犬飼は一言も旬とは言葉を交わさなかった。
「あの、一体に何処へ…」
「こちらです」
違和感を覚えたまま、犬飼に言われた通りに車から降りてマンションの中を歩く。
エレベーターで上の階に向かい、ある一室の鍵を犬飼が開ける。中は清潔にされており、生活感はあるもののそこまで使用頻度がすくない物があったりする。
「旬」
「……っ?」
下の名前で呼ばれると、体が硬直する。
そこで初めて犬飼は、 笑う。
「…二か月も、まともに会えませんでしたからね…」
「そう、ですね……」
犬飼の指先が手の甲を摩る。その感覚が異様に気持ちよく、顔を赤くして目を逸らそうとするが、犬飼はそれを許さなかった。
「僕を見てください、旬」
「うっ……ぅ…」
「旬…?」
「ず、ずるいですよ……そんな顔されたら…」
擦る犬飼の手を絡め、欲情した目で訴える。
犬飼は笑いながら、そのまま寝室へと旬を引っ張った。