雷光羽撃く ゆら、ゆら。言葉とも言えない適当で曖昧な音を言いながら、討伐命令が出た分霊を目視する。
オロチが駆け上がっていくのを見ながら、自分は地面に。びり、と破いた札は何枚目になるだろう。枚数が二桁になってから数えるのをやめてしまったから。
体の部分は攻撃が中々通らない。触手は再生が早い。攻撃するならば、あの赤い目玉だろうかと検討を付ける。
静穏でありながら、動くだけで脅威である巨躯に対して、「自分」は何かを思っているのだろうか。我がことながら分からない。
――けど、その方がいい。現実味がない方が何だか今は動きやすい。どこか遠くから流れてくる焦げ臭さも、虚ろに滲む。今は自分の元に片方ずつしかいない召喚獣は、いつもと比べれば随分と大人しい。割と攻撃的な連理すらも。自分の意図を汲み取ってくれている事に、いい子達だと思いながら新しい札を取り出した。この子達をこちらの不手際で退去させてしまっては俺も困るが、オロチが困る。流石にあの高さまでもう一度運ぶのは中々に難しいだろうし、そのタイムロスが気にかかる。
札を持つ手に力を込めれば、ぴり、と横一線に破れ目が走りるのと同時に蒼い火花が散っているのが見えた。限界を超えたら、なんてことは終わってから考えればいい。後でしこたま叱られるかもしれないが、その時はその時ということで。――少なくとも、オロチに懸念が生じるまでは耐えられる、というか耐える。事前に限界までやる、なんてことは一応言ったのだから。なんて脳内で言い訳をしながら視線を絞る。
「――らい」
夜闇の中を蛇のように走る閃光が狙いから逸れて、固い部位に当たる辺り大分疲労が溜まっているのは事実だけど。
それでも、自分一人安全圏に居たいとは思わなくて。どうせなら、出来ること全てをしたい。
こういう辺りに自分の気質が詰まっているのだろうか、なんて他人事のような思考はどちらのものだろう。今は――正直そこも、少しだけ曖昧で。
「――らい」
新しい札を取り出し、距離を確認してからまた横一線に破けば、蒼い閃光が再び飛んでいく。
――鳥を思わせるように飛んでいく蒼い雷光は、今度こそ狙いの場所に命中した。