覆水 どこから?なんて意味の無い自問をする。答はない。
どこから間違えた。――そんなの初めからなんじゃないのか、と誰かが囁く。そうかもしれない、と嘆くように思考を絶ってから伸びてくる白く巨大な手を跳んで逃げる隙に斬り付けた。硬い、と嘆息してから更に後ろへと目を逸らさずに走って。
死にたくない、というわけではない。むしろ今死ねたらどれくらい楽だろう。飛んでくる術や、銃弾だとかの諸々に巻き込まれるか、この大型分霊にやられるか。――花牟礼さんを置いて、独りで。
そうすれば、少なくとも彼だけは解放できるかもしれないなんて短絡的な発想に苛まれる。ずっと見えない何かがずっと絡みついているような気すらする。これは、なんだろうか。体の外から中まで平気で潜り込んで、未だに絡まって突き刺さって抜けない何か。こんなの、私だってもう嫌だ。零れた水はどうやったって戻らない。だけど、直し方なんてわからない。
――助けてほしい、なんて今更言ったって無意味な言葉を隠しながら、隙を見て斬り込んだ。