3P部屋2俺、トミザワはまたしても例の破廉恥な部屋に閉じ込められた。
「お前、危機管理能力なさすぎだろ。」
ベッドの上に寝そべってテレビのチャンネルをぐるぐると変えていた一番が呆れ果てた顔で俺をなじる。
「オメーに言われたくねーっつーの。」
俺たちは例の如くどこぞの変態に薬を嗅がされておねんねしたらしく、目覚めた時にはこのクソ忌々しいタコ部屋に監禁されていた。みんなにとって幸運なことに、山井は今回のところは被害を免れたらしい。しかしサイドテーブルの上のリーフレットは間違いなくこう言っている。
ここは3Pしないと出られない部屋です。
3Pとは3人で挿入を伴う性行為をすることを指します。
挿入は、用意した道具で行っても構いません。
挿入される人が、挿入された状態で2回絶頂に達した時点で、達成とします。ドアが開いたら音が鳴りますので、その後はお帰りいただいて結構です。
というわけで今回も不本意ながら3Pをする運びとなった。それはもういい。俺も童貞や生娘ではあるまいし、今更そんなことでいちいち騒ぎはしない。
問題は3Pを構成するメンバーだ。俺。一番。もうひとりは、まさかの。
「ふ、ふたりともなんでそんな冷静なの?」
おろおろと俺たちの様子を伺っているのは、縦に割れた腹筋に泣きぼくろと艶ぼくろのダブルコンボがセクシーな20そこそこのビッグベイビー。またの名を不二宮千歳。
俺たちはこれから彼女を待ち受けるあまりに残酷な運命に思わず同時に目を閉じて呻いてしまう。リーフレットは千歳に読まれる前に俺が丸めて便所に流した。
最低。最悪通り越して、最低。まだこれが前回のメンツと同じなら消化試合で済んだのに。俺がケツでよがればそれで済む話だったのに。いくら千歳が裏切り者だからって、これは洒落にならないじゃないか。
「……チーちゃん。」
一番が怒りでびきびきに青筋を浮き上がらせながら起き上がり、立ち尽くしている千歳に近寄った。背中を曲げて目線を合わせ、彼女の細い肩に両手を置いて言う。
「…ここはな、なんというかな。3人で、こう…その……………」
一番にはその言葉を言うことができない。苦虫を噛み潰したようにきつく目を閉じて歯を食い縛りながら黙り込んでしまう。しかし千歳は首を振って一番の代わりに先を言った。
「…3Pでしょ。それしないと、出られないわけね。」
「ゔっ。」
「うおお。」
俺の努力もむなしく、千歳は先に目を覚ました時にリーフレットに目を通してしまっていたらしい。千歳の口から出た卑猥な言葉に俺たちは2人揃って膝をついてもんどりを打った。
「…いいよ。その様子じゃ前もここに閉じ込められたんでしょ。出られないんだよね?しないと…」
ものわかりがよすぎる。生憎と俺たちはそんな外道じゃない。前回は終わってる男3人が終わってるセックスをしただけだったが、今回は違う。将来有望なカタギの女性に一生モノのトラウマを負わせるくらいならここで死ぬ方を選んだって構わない。
「私だってこんなとこで餓死するの嫌だし…子供じゃないんだから、セックスなんて大した意味ないってわかってるよ。」
お前はわかってない。大した意味、あるんだ。特に受け入れる側はだが、達観ぶって無意味なセックスを繰り返しているといつか後悔する可能性が限りなく高い。若いうちは気づかないだろうけど。
「…だめだ、千歳。俺らにそんなこと、できねえよ…」
俺も一番も、すでに数限りない女、ことによっては男と寝た分際だ。どんな病気を持ってるかわかったもんじゃない。しかしいかがわしい道具でもって千歳を一方的に達させるなんてことも考えられない。それなら道はひとつしかあるまい。
「トミー、でも…」
いいんだ、千歳。きっと、俺はこの時のために男と寝られる体になったんだ。
「…お前…」
一番は俺の言いたいことを察したようだ。青ざめた顔で次の言葉を待つ。
「…俺の…ケツを…使ってくれ…頼む。」
千歳はぽかんと口を開けて固まった。
「トミー、いいって!今回は俺がやるよ!!」
「バカ、経験ない奴がウケたらいつまでもイけなくて余計に長引くだろうが!!悪いと思うなら俺よがらせてさっさと終わりにしろ!!」
「トミー…!!」
床に手をついて咽び泣く一番に構わず、俺は千歳と目を合わせて最低限の事情を説明する。
「千歳。言ってなかったけど、俺バイなんだ。だからケツで感じられるんだ。そういうことだから。準備してくるわ。」
言い終わるやいなや、シャツのボタンを外しながらバスルームの扉に手をかける。千歳は怒涛の新事実を処理しきれずフリーズしているが、まあ準備を終えて出てくる頃には元に戻っているだろう。その間はせめて、死ぬほど念入りに体を清めてやらないとな。
俺らはもう2回目だから慣れたもんだ。さっさと準備を終わらせて出てくると、一番が収納の中から挿入判定になりそうな道具をいくつか選んでバスルームの前で待ってくれていた。千歳はベッドの上で待たされている。
「…わ、私もシャワー浴びた方がいい?」
「変なこと気にすんな。お前はいつもきれいだよ。」
「間違いないぜ、トミー。」
「ああ…ありがと…」
素直に引き下がってくれたので一番と俺はひそひそと会議に入る。
「…突っ込むのはお前がやれ。そんで千歳には適当に乳首とかいじらせとこう。」
3P判定にするためには、千歳にも俺の絶頂に寄与してもらわなければならない。とはいえお互いの精神的ダメージを考えると彼女は後ろの方がいい。もちろん一番にも、俺の人生最大の痴態を特等席から見て欲しくなどない。ただ、すでに彼の目の前でギャン泣きしてよがり倒しているものを今更格好つけても仕方ないだろう。千歳の前でまで潮を吹くくらいなら一番と流れ作業のセックスもどきをした方がまだマシだ。
「今回は気持ちよくなって欲しいとか余計なおせっかい焼くんじゃねーぞ。秒で2回イくからそのつもりでやれ。」
「あ、ああ…了解…」
よし、話がまとまった。俺は一番の手からオモチャをひったくってバスローブのポケットに突っ込み、ベッドに駆け寄った。一番も後からついてくる。
「千歳、お前は後ろで俺の胸とかいじっててくれ。それ以外なんもすんな。」
答えを待たずにベッドの上によじ登り、千歳を背にして座る。バスローブの前だけを開いて、彼女が被る視覚的ダメージに最大限の配慮をした。
「よっしゃ!じゃあちょっときついけど秒でイってもらうからな、トミー!」
「おお、頼んだ。」
「全然ついていけてないよ………」
俺はもう、それはそれは頑張った。一番にケツを掘られ、千歳に乳をいじられながら自分で前をしごき。老体に鞭打って気合いで回復して、宣言通り秒と言って過言でない早さで2回達した。期待通り耳障りなブザー音が鳴って、扉のロックが外れる音がした。
「おっっっしゃ!!」
俺は恥ずかしげもなく裸でガッツポーズを決め、達成感を噛み締めた。これで千歳に与える精神的物理的ダメージを最小限に抑えることができた。あとはこのくだらないクソ部屋に俺らを監禁した犯人を見つけ出してホノルル沖に沈めるだけだ。そうと決まればさっさと服を着てレンチを磨かなければ。
「よく頑張ったな、トミー!早いとこ変態を撲殺しに行こうぜ!!」
一番が俺と熱いグータッチおよびハグをかます。さらにハンガーから俺のシャツとハーパンとボクサーを持ってきて投げよこした。これ幸いと千歳に背を向けたまま服を着ようとしたところで物言いが入る。
「ちょっと!!さっきからほんとに意味わかんないよ!!」
「よかったな。」
世の中には意味わからない方がいいこともある。だから無視してボクサーに脚を通した。まだ股がべたついているが気にしない。
「わ、私が若いからってバカにしてんの…!?」
アロハシャツの袖にも手を通して、ボタンを留めていく。
「なんで、一番とか山井はよくて私はダメなのよ!!差別じゃん!!」
なんか変なこと言い始めたわ、この子。ひとまず振り向ける格好になったので、後ろを向いてむずかる千歳の相手をしてやる。
「逆だぜ、千歳。俺とか一番とか山井はもうダメだけど、お前はまだ未来があるんだ。」
「そうだぜチーちゃん。ジジイのいうことは素直に聞いとくもんだ。」
俺はまだお前ほどのジジイではないけどな。まあ千歳から見たらどんぐりの背比べだから無意味なことは言わない。
「なんでよ〜…!!」
俺は最後にハーフパンツとサンダルを履いてレンチを握りしめ、いの1番に卑猥な名を冠したバカ部屋から出て行った。