デンジャラス初産の思ひ出同期の息子くんが誕生日を迎え、ちび氏も誕生日まであと20日となったので、出産にまつわるアホ話を今のうちにさらしたいと思う。
こうすることで、誕生日当日は感動的なエピソードだけをのせようという姑息な魂胆である。
ちょっと長いけど、自分としてはとてもハートフルな話だと思っている。(嘘)
1年弱前のあの日、里帰り中の私は朝イチで実家近くのでかい病院に入院し、陣痛に耐えるのから出産&産後ケアまで同じ場所で行えるLDR呼ばれる部屋にいた。
予定日まで2週間もあるが、ちび氏の腎臓が良くないので、これ以上悪化する前に薬で陣痛を誘発して産んで、出産後に腎臓に必要なケアをしっかりやろうということだった。
不安だった。
ちび氏の体も心配だし、誘発で痛いだけ痛くなって結局は帝王切開とかなったらどうしようか、と。
同居人は朝から付き添い、実家家族は入院手続きだけ手伝って一度、実家に帰った。
私はLDRでドキドキしながら、しかし、やることもないのでだらだらTVを見ていた。
そこに、再び現れた母は言った。
「これ、届いたから持ってきてあげたわよ」
母が手にしていたのは、私が通販で🐯の穴に頼んだ黒バスの薄い本たちだった。
しかも、タイトルから表紙の絵から何から何までアウト、
年齢指定だよ18才未満はダメ!🔞マークまでハッキリ描かれた、
それはそれは大変な薄い本だった。
(確か「親友と、レ●プと、あの日の思い出」みたいなタイトルの本と、海🏰のエース🟡瀬がセクシー赤ずきんちゃんコスしてて背後にオオカミの桐👑エース🟦峰ががおーってやってる表紙の本だった。実にひどい)
しかも、恐ろしいことに母は黒バスを知っていた。実家妹と父が好んでいたので一緒にアニメを見ており、キャラ名とキャラの顔も完全に一致していた。
そんな本をご丁寧に、🐯穴さんが目立たないように隠してくれている外装も、中の個包装ビニ袋も剥がした状態で、私の母は己の娘がこれから人生初の命懸けイベントに挑む分娩室に!
これから孫が産まれる場所に!
平然と持ってきたのである。
私は焦った。
母がもしも今、この猥褻な本について何か質問してきたり、感想じみたことを言ったら、恥ずかしくて死ぬ。ていうか、もうすでに死にたい。なんだこの状況。
あと、今、この瞬間にナースが来て見られたら死ぬ。社会的に死ぬ。
一刻も早くそれを目につかないところへ隠したかった。
しかし、それは好きなサークルの待望の新刊でもあったので、一時も早く読みたいという気持ちもあった。猥褻な本だが、いつもそんなタイトルやおピンクな表紙とは裏腹に、マジで泣ける話を描く作家さんだったのだ。いや、すでに泣きたかった。違う意味で。
私は震える手でそれを受け取り、枕の下に隠した。
母も同居人も何も言わなかった。
全員、テレビに視線を向け、何も言わなかった。
🟦🟡の卑猥な本も、静かに枕の下に在った。
沈黙がLDRを包んでいた。
そういえば、母は昔からスルースキルに長けていた。
高校の時、私が風呂場で親友と、イベントで忍🦵侑士のコスプレをするためテニプリの🧊帝ユニフォームを作るべく、し⚫️むら以下の店で買ったやっすいポロシャツを裁断して藍染めしていたのを目撃しても何をしているか聞かなかったし(手芸に目覚めたとでも思ってたのか?)、
大学時代、帰省して妹の部屋にハ⚫️ー・🧹ッターのスネイ🐍先生受の卑猥な本を置き忘れていた時も普通に整頓して去っていった。(代わりに妹には、勘違いされるだろう!?と激怒されたが、お前に読ますために持って帰ったんだから勘違いもくそもないだろう。)
母は、表紙を見て何か思っても、仮に中身を見てしまったのだとしても、スルーしてくれるのであった。
ちなみに、同居人は別にいい。交際前から私の趣味は知れているし(アスキラの水彩塗り風ポスターや浴衣タペストリーを並べて貼っていた私の一人暮らしの家でサークル仲間と宅飲み三昧していたのだ)、もはや興味もないらしい。家の中にアレな本が転がっていても、まったく気にしていない。(過去に一度だけ、当時、家にあったアスキラ本🔞のアスランがキラに向けた恥ずかしいセリフを面白半分で朗読して私にブチギレられてから、私の同人関係のブツや行動に関しては貝のようになることを決め込んでいた。)
だから、私は母が帰ったらこの枕の下の本を読もう。
私は陣痛を待っていることを忘れて、🟦🟡の卑猥な本を読むために母が帰るのを待った。
しかし、母はTVを見続け、茶をすすり、まったく帰る気配がなかった。
え、帰らないの?
帰らなかった。
かくして、私は卑猥な🟦🟡本と共に、中身を読めないまま陣痛を待つことになった。
夕方、まだ陣痛が来る気配がないので、ようやく母は帰り、私は先に夕食を食べ始めた。
これを食べたら、やっと枕の下の本を読める。
🟡瀬の痴態を思う存分味わい、同時に彼らの切なさに涙するだろう。
だが、夕食の焼き魚をうめぇうめぇと半分食べたところで。
あれ?腹、痛いんじゃね?
陣痛だった。
そこからは、スピード出産だった。
枕の下の本は、いつのまにかなくなっていた。
一度、トイレに行った時にカバンに移してもらったのだろうが、誰が移したのか、私は怖くて聞けていない。
旦那であることを祈る。
ナースであったら死ぬ。
かくして、私がその本を読めたのはちび氏を出産してLDRから病室に移った後のことだった。
ちび氏は娩出してすぐ、私と握手だけした後、NICUに運ばれていった。
ベビーのいない病室で切なくなりながら、産後の私はその卑猥な🟦🟡本を読み、そして涙した。(やはり泣ける本だったのだ。)
あれから1年。
私は共に陣痛を戦ったその本たちをしげしげと眺め、涙するのであった。
(完)