【新K】🏩に駆け込む話。「っは、ぁ、…あっ、…ッめい、たんてぇ」
「…ッキッド…」
ホテルの部屋に入るなり、名探偵に腰を抱かれ、唇を奪われた。縋るよう伸ばした指を絡み取られ、無我夢中で貪り合う。キスの作法も何も分からないが、ただただ気持ちいい。
「ん、ぅ…っ、んん…、む」
ビルの屋上で交わしたものより余程濃厚に、互いの舌の境目が分からなくなる程、舐め、食み、啜り合うと頭の先から溶けていくような錯覚に見舞われた。呼吸の仕方が分からず、モノクルの下、快斗の瞳に生理的な涙が滲む。
とんとんと青いブレザーの肩口を叩くと僅かに唇が離れたが、快斗が必死に酸素を求める合間にも頬や鼻先を噛まれ、また直ぐに口を塞がれた。片時も離れたくないと、雄弁に語るようなキスに、自分もそうだと伝えたくて、快斗は名探偵の首裏へと手を回す。
「っふ、ぁ…ンッ、っんぅ」
「は、勃って来てんな」
「んんッ、仕方ねぇ、だろ…っこんな、の…んぁ!」
脚の間を太腿で擦られ、キスによる性感で兆したものを言い当てられてしまい気恥ずかしい。自分だけ盛り上がっているのかと快斗は涙目で睨め付けるが、ぐり、ぐりと押し当てられた熱に名探偵も興奮しているのが伝わり、ずくりと下半身が疼いた。
「ひっ、ぁ♡」
名探偵から耳に舌を這わされ、くちゅりと言う卑猥な水音で脳内まで侵されると、それだけで立って居られない。快斗が、がくがく震える膝を視線で訴えると、息を飲んだ名探偵に、カジノを模した大きく丸いベッドの置かれた室内へと腕を引かれた。
特段何もない夜の筈だった。いつものように盗み、翳し、ソレでないことを確認する。階下への扉から姿を見せた好敵手に、返却を頼もうとフェンスを下りるまで、こんな事になるだなんて快斗は思いもしなかった。
いや、敢えて考えないようにしていただけかもしれない。月明かりの下、蒼い視線を交わし合った瞬間に、表面張力ギリギリを保っていた欲が溢れ、どちらともなく指を伸ばしていたのだから。
互いに熱の治め方が分からず、そのまま近くの無人受付のホテルに雪崩込んだ。部屋まで上がるエレベーターの数分が永遠にも思え、鍵を開けるのに手こずるくらいに、快斗にも名探偵にも、余裕なんてものは一つも無かった。
「ふぁ、っん…名探、偵ッ…んんっ、ぁ、う」
ベッドに押し倒され、再び求められるままにキスを交わす。やや乱暴に白装束を暴かれ、皺になるだろと言う文句は、音になる前に根こそぎ食べられてしまった。
「んっ、はぁ、あ、…っは、ん」
銀糸を引いて離れた名探偵が、快斗の首筋に顔を埋め、幾つも所有印を刻み付ける。ちり、ちり、と痺れるような快感が抜け、快斗は名探偵の頭を抱え、もどかしい刺激に枕の上で首を振る。ぷちぷちとシャツのボタンを外され、緊張で冷えた指先を忍ばせられると、火照った肌がざわりと鳥肌立った。
「キッド…ッ」
「んぁっ、めい、たんて、…っも、はや、くッ!」
何を急かしているのか、快斗は自分でも分からない。けれど、一刻も早くこの空虚を埋めて欲しい。その一心で、快斗は名探偵の後頭部に口付けた。
「っ、煽るなんていい度胸じゃねーか…。ここから先は手加減なんて出来ねぇからな、キッド…ッ!」
身を起こし、焦れたようにジャケットを脱ぎ捨て、衣擦れの音を立ててネクタイを引き抜いた名探偵に、快斗は期待からコクリと喉を動かした。