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    yuryiaka

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    yuryiaka

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    エドぐだ♂の現パロ。とある相互さんからネタをお借りした次第。ありがとうございました。これといったヤマやオチは無いです。

    ##エドぐだ♂

    帰宅後は甘い一時を「(あ…、結構降ってきた)」

     大量の小さな雨粒が、電車の窓に打ち付けられているのが見える。ぽつり、ぽつり。最初はそのくらいの程度だったけど、瞬く間にその数は増えていった。今傘を指さずに外を出歩けば、たちまちびしょ濡れになるだろう。

    「(駅のコンビニに、まだ残っていると良いんだけど)」

     今日は朝から天気の良い日だったから、突然の雨に慌てて傘を買い求める人は多い。特に荷物も無いならまだ構わないけれど、生憎今日は数個荷物を持っている。己の運を信じる他無かった。


     あと数分で駅だ、と言うタイミングでスマホが小さく震える。通知には、己の恋人からのメッセージが届いていた。

    『駅で待っていろ。』

     ただ、それだけの言葉。この一言で、恋人が迎えにきてくれるのだと理解出来た。立香はほっと胸を撫で下ろし、『分かった。ありがとう。』と返信する。既読は付いたが特に返信が来ることはなかった。既に準備を初めているのだろう。

     程なくして駅に着いた。恋人が着くまでもう少し時間が要る。折角だからといくつか店を見て回る事にした。


     雑貨屋、服屋、飲食店、カフェ、コンビニ、パン屋、ケーキ屋。こうして見ると思っていたよりも店があった事に気づく。とても大きい駅とは言わないが、ホームのみの駅よりは余程大きい。

     雑貨屋はどちらかと言えば女性向け。服は今は必要ない。飲食店やカフェは入る程の時間はない。コンビニか、パン屋か、ケーキ屋か。

    「(明日の朝ご飯はパンを食べようかな。フランスパンは多分しかめっ面するだろうし、惣菜パンとか菓子パンにしよう。いっぱい買って分けっこするのもいいかも)」

     うん、と脳内で頷いてパン屋へと足を向けたとき。ふと、ケーキ屋が目に入った。普段なら気に留めないそれが、今日は何故だか目に入る。

    「明日は休みだし…ケーキとか買おうかな」

     ぽつり、と誰に聞かせる訳でもなく、言い訳するかの様な独り言が零れる。言ってからふと気づく。彼は時折、如何にも高級そうでとても美味しいお菓子を買ってきてくれるけど、自分からは全然無いなと。買うとしても市販の安いスナック菓子とかで、あまりこういったものには縁が無い。あんまり良し悪しは分からないけど、とりあえず無難そうなものを選んでみようか、と店内に入る。

    「わ、結構ある…」

     ショートケーキやガトーショコラ、シュークリーム以外にも、フルーツタルトやチーズケーキなど、ショーケースには様々なお菓子が並んでいる。棚にはフィナンシェやマドレーヌといった焼き菓子も置いてあって、色々と目移りしてしまいそうだった。
     見たことのない名前のケーキをじいっと見つめていると、また小さくスマホが震える。

    『どこにいる?』

     その一言を読んで、立香は慌てて苺の乗ったケーキとオペラを指差してこれお願いします、と店員に伝える。彼を待たせてしまうのは申し訳なかった。手早く会計を済ませて、店員がケーキを包んでいる間に返信する。

    『いつもの場所で待ってて。すぐ行くから!』
    『急く必要はない。今日は転びやすいだろう』
    『………そうする』

     お待たせしました、との声に顔を上げて袋を受け取る。小さく頭を下げ、ありがとうございましたの声を背にして足早に向かう。やがて、傘を二つ手にする高身長の男が壁にもたれかかっている姿が見えてくる。

    「エドモン、お待たせっ」
    「いつもよりも遅かったが、何処かに寄りでもしたのか」
    「うん。ちょっとね」
    「そうか」

     エドモンは帰るぞ、と言って立香の荷物を奪い取った後に立香の傘を手渡す。流れるようなその動きに反応できず、気づけば随分と身軽になっていた。

    「エドモンっ!」
    「疲れた恋人をいたわってやりたいという思いだ。分かるだろう」
    「うっ………」

     文句を言おうとした矢先に封じられる。そもそも申し訳ないというだけで、決して嫌ではないのだ。

    「じゃあ、傘は俺が刺すよ。貸して」
    「駄目だ」
    「貸してってば」
    「駄目だ。風邪を引くぞ」
    「恋人の負担を軽くしたいって思い、分かるでしょ?」
    「………ん」

     立香は勝った、と胸の中で小さくガッツポーズをする。傘を受け取るために一瞬触れた手は少し冷たくなっていて、体温を分けるように握ってみる。手が冷えるだろう、とたしなめられたが聞こえないふりをした。


     出口へ出ると身長の高いエドモンの頭に当たらぬよう、気を付けて傘を差す。雨の勢いは先程よりも弱まっていたが、一つの傘に二人分の為にゆっくりと歩き出す。帰り道に人はおらず、雨粒が傘に当たる音と、小さな水たまりを踏んだ音。そして二人の息遣いのみが聞こえていた。しばらくは心地の良い静寂が続いていたが、おもむろに立香が口を開く。

    「少し寒いね」
    「風呂は入れてある。着いたら入るがいい」
    「キミもだよ。一緒に入ろう。そうじゃなきゃ入んない」
    「我儘を言う」
    「いいでしょ?」
    「クハハ!!そうさな。お前に許されざることなどあるまいよ!」
    「今笑うとこだった!?あ、ケーキ買ったから揺らさないでね!」
     
     静寂は打ち破られ、暖かな談笑の中二人は歩く。


     暖かいお風呂。美味しいケーキ。それに合うように淹れられたコーヒー。

     甘い時間がお待ちかねだ。

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