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    わかめ

    創作の絵をあげるだけ

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    わかめ

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    先生が嫉妬して素直になって意地悪する話。
    なんか書き始めた当初のプロットとは違う風に出来ちゃったわ

    逃げ道を選ばず覚悟して進め()/ルフォシュラ時刻は閉館時間の30分前、少しずつ来館者の数も減り木々が揺れる音が心地よく耳に流れてくる。
    今日は非常勤の保険医の仕事は無く一日中植物園にいたが…シーナがこの近くで用があると言うので帰りは一緒にという約束をしていた。
    そんなに長くはないと聞いていたし、用事が終わったら植物園に来ると言っていたのでもうそろそろ来る頃かとそわそわする。

    「…あ。」

    噂をすれば何とやら、ふと目を向けた先にはシーナがいてつい声が漏れる。公私は分けるべき…とは思うけれどせっかく足を運んでくれたのだからと声をかけようと彼女の方へ行くことにしたが、……誰かの「あの…。」と言う声に直ぐ阻まれてしまった。

    「何でしょうか?」

    声をかけてくれた人を見ると、仲睦まじそうな老夫婦がそこにいた。そして、夫人の方がムーンダストを指さして僕のことを見ているにきっと花のことを聞いてくるのだろう。

    「これは…どんな花なのかねぇ?説明書きがあるけどよく見えなくて…。」

    「そちらはムーンダストといって、青いカーネーションですよ。花言葉は永遠の幸福、…仲睦まじそうなお二人にお似合いの花だと思います。」

    そういうと夫人は「まぁ…!」と声を出して照れ、夫君の方は優しく微笑んでいる。その姿に自然と僕までも笑みが溢れ…、長い月日が経ってもシーナとこんな関係になれたら素敵だなぁ…などと考えていた。

    (そういえばシーナは…。)

    さっきいた場所をもう一度見てみると…、シーナは見知らぬ若い男性に声をかけられていた。老夫婦と別れた後にシーナ達の様子を遠くから見守っていると、シーナは植物一つ一つを指さして男性と話しているようで…きっと先ほどの僕みたいに説明しているのだと思う。

    (彼女はここの職員では無いけれど…。)

    そう思って声をかけに行こうともするけれど、シーナと、彼女と年相応の男性が並んで話しているのをみるとそれすらも躊躇ってしまう。保険医をしているときはそんなことはないのだけど…、やはり校外ということが大きいのだろうか。
    学校の中では保険医と生徒、でも外を出ると周りからはそれはわからない。
    シーナと僕が恋仲であることを嬉しく思う反面、本当は今隣にいる年相応の男性の方が彼女を幸せに出来るんじゃないか…そう思うのだ。
    でも、心から"お似合い"……と言えるほど僕の気持ちはさっぱりとした物では無かった。

    数分見守っていると、時々シーナが困った顔をする事があった。年相応の男性は見た目こそ優しそうな雰囲気だが世の中何が起きるか分からないのだから…そろそろ声をかけようか。
    なんて言うのは建前上で結局は彼女の隣に誰か他の人が立っているのが面白くないだけなのだけど。

    「何かお困りですか…?もし気になる植物がありましたら職員の私がお答えします。」

    首にかけている職員カードを持って見せると男性は苦笑いを浮かべ、シーナはほっとしたような表情をしている。
    この男性の表情を見るにきっとシーナに気があったのだろう、…何となくそう思う。

    「…す、すみません。植物の質問したら詳しい方だったので教えて頂いておりました。」

    男性はそう言うと僕とシーナに会釈をしてその場を逃げるようにどこかへ行ってしまった。

    「困っているように見えたけど…大丈夫だったかな?」

    「はい、…ありがとうございます。」

    「すぐ閉館の準備をするから裏口の方で待っていてくれるかな?これ、していいから中で…ね?」

    シーナは何が言いだけだったけれど、僕が職員カードをシーナの首にかけて笑顔を見せると何も言わずに裏口の方に歩いて行った。
    職員カードを職員外の人に渡すのはあまりよく無い行為だとは分かっているがまた彼女が知らない人に話しかけられるは嫌だしきっと館長も許してくれるだろう。



    急ぎめで閉館の準備を済ませて関係者出入り口の方に行くとちゃんとシーナがそこにいて小走りで彼女の元へ行く。

    「待たせてごめんね、じゃあ帰ろうか。」

    シーナは小さく頷くと僕に職員カードを渡してくれた。
    いつもなら会話をするところだが何故か今日は静かで、シーナを見ると何かを考えているようだった。

    「…やっぱりさっきのこと気にしているのかい?」

    僕がそう尋ねるとシーナは一瞬下へ視線を下ろしてしまった。きっと言おうか、どうしようかと考えているのだろう。
    少しして、話すことにしたのかシーナはまた僕の方へ視線を向けた。

    「ウィリアムさん…何か変です。怒っているような……らしくない気がします。」

    「………そう、…かな?」

    きっと若い男性が来てからのことを言っているのだろうが、……余裕なく嫉妬していたことを言うのは少々恥ずかしい気がして誤魔化していうとシーナはムッとした表情をした。きっと有耶無耶にしたことを悟られているはずだ。

    「また隠し事ですか…?それとも私が何か嫌なことを……あ、もしかしてさっきの男性のことですか?」

    「うん、そうだね。…何に困っていたのか聞いてもいいかな?」

    「職員と間違われて植物のことを聞かれたのですけど…答えているうちにもっとお話ししたいからとこれからの予定を聞かれていました。…でも、ウィリアムさんと帰る予定だったので。」

    自分が居なくなった後のことを考え彼女が僕以外に好意を持った人がもし出来たとするのなら身を引く、だなんてのは前から思っているけれどいざそう言う状況が近づいてくるといい気持ちはしない。……本心では全然余裕が無くて、渡す気もなくて我ながら呆れてくる。

    「なるほど、それならもっと早く声をかければ良かった。」

    「あの、…私はもし予定がなくても行きませんからね?」

    不安そうにそう言うシーナに、そういえば彼女は僕が怒っているのかと聞いてきたんだったと思い出す。大切な彼女にそんな表情をさせてしまうだなんて本当に情けない、…己の恥じらいよりも早く安心させてあげよう。

    「僕はね…歳の離れた大人よりも、君と歳の近い誰かと一緒にいた方が君の未来が幸せなんじゃないかって…そう思う事があるんだ。そしてそれが現実になった時、ちゃんと応援したいと思っていた。」

    僕がそういうと、シーナは少しだけ悲しそうな表情をしたが続きを促すようにじっと僕の瞳を見つめ次の言葉を待った。

    「…でも…さっきの様子を見て、君の隣に知らない誰かが立っているのを良くは思えなかった。…嫉妬、…したんだと思う。」

    「ウィリアムさん…。」

    「だから…そうだね、怒っている様に見えたのだとしたら君を想う気持ちを履き違えていた自分自身にかもしれない。…シーナにではないから安心して?」

    「私はずっと一緒だって、…ずっと側にいるって言いました。他の誰かじゃなくて……ウィリアムさんがいいです。」

    「…本当に?」

    「はい。……ウィリアムさんは、…違うんですか?」

    「違わないよ。この先、きっと長くは君といられないかもしれないけれど…それでも君の隣は他の誰にも譲りたくない。」

    「……なら、ずっと側にいてください。」

    「うん、約束するよ。」

    "約束"と言う言葉を聞いてホッとしたのかシーナの顔にようやく笑みが溢れた。
    その表情に僕も安堵しつつ、先ほどまで緊張させてしまっていた彼女に申し訳なさを感じる。…せめて今よりもシーナがより嬉しいと、そう思えることは無いだろうか?と考えて、…僕は彼女の手を取り繋ぐことにした。
    普段であるなら、学校の生徒に見られたらいけないと外出時手を繋ぐなんてことは絶対にしない。

    「ウィリアムさん…?」

    手を繋いでいれば、周りから君と僕は恋人同士だって…そう思ってくれるんじゃ無いかと実行してみたけれど、歳の差で言うと兄妹か親戚だと思われるのだろうか。

    「これなら声を掛けられることも無いかなって。」

    「…やっぱり今日のウィリアムさんは変です。」

    そう言いながらもシーナは嬉しそうで、握っていた手もぎゅっと握り返してくれた。

    「でもいつか手を繋ぐだけじゃなくて…。」

    シーナと繋いでいる手を少しだけ上に上げて彼女の左薬を見ながら声にならない声で呟くと、シーナはきょとんと首を傾げた。

    「ううん、何でも無いよ。」

    笑ってそう返すとシーナはまたムッとしている。

    「また内緒ですか…?」

    「大人になったら…ね?」

    「…むぅ、…意地悪です。」

    「ふふっ…まぁそんなに怒らないで。可愛い顔が台無しだよ。」

    「誰のせいだと思ってるんですか…!」

    シーナはそういって今度はそっぽを向くけれど手はぎゅっと握ったままでそれが嬉しくて、また愛おしくて堪らない。
    あぁ…こんなに好きな彼女のことを一度でも手放せるだなんてそんな考えは本当にもう2度と思わないだろうな。
    自分の人生の中で幾度かの諦めと後悔を経験をしたが、シーナのことは絶対に間違えたく無いと心から思う。
    そしてその証として…自分のケジメとしても彼女が高校を卒業して成人した時…、気持ちを形にして渡すのもいいのかもしれないなんて思うんだ。

    …大人になって君に渡したらどんな表情を、言葉を返してくれるだろうか。
    笑顔で受け取ってくれるといいな。
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