ヌヴィリオワンライ 「海の日」「稲妻の海水は、塩の味がして、また、苦くもあるらしい」
「ほう」
「旅人から聞いたのだ。波に足元を掬われながら海岸を歩くのはくすぐったいのだとも言っていた」
「稲妻の海は、温かいのだろうか、それとも、冷たいのかな?」
仕事終わりにフォンテーヌ邸を後にして、見慣れた、何の変哲もない海岸をともに歩いている。リオセスリは、ヌヴィレットの隣で、与えられた話題に返答をしながら、少し前の出来事を並行して思い返す。外を歩こう、と言われ、海風に混じえながら重要な秘密裏の話でもするのか、と思って身構えたのを悟られたのか、ただ、散歩がしたい、と柔らかい表情をして改めて言われたので着いてきたのだった。
「海水の体感温度か……。それについては、聞いていない。ならば、確かめに行こう」
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