アセトンのにおいが鼻を刺す。拭われていく灰色のネイルポリッシュ。端に残る分を取ろうと角度を変えればキラキラと光る青色のラメ。ふと視線を上げて恋人の顔を見れば緩む口角を隠しきれていない。
「助平っぽいですよ?」
一言だけ文句を投げるがその顔で体温が上がったのだからノイマンだって変わらない。
一番大きな親指を落とし終えれば、あとは大したことはない。拭われていく二人の色。
(あと一本……)
残った小指の爪に手を掛ける。コットンに移る色に少しだけ名残惜しさを感じた。
「終わりました」
元のコノエの地の色だけの爪。ノイマンの心臓がとくり、と鳴った。
「今度はボクの番だ。足を出して」
言われるがままに足先をコノエに向かい突き出す。土踏まずの当たりを優しく取られる。愛しげに見つめられるのがわかり、胸が高鳴る。冷たいコットンが当てられたのがわかった。
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