手をつないで:🐑🔮「ふぅふぅちゃん」
甘えたような声で俺を呼ぶのは、教室の後ろの引き戸にもたれかかった浮奇だった。もう夏も目前で特別気温が低いわけでもないのに、ジャケットの下にパーカーを着ていた。体調でも悪いのかと心配になるが、近づいてみてもそこまで顔色は悪くなさそうだ。
「どうした、浮奇。寒いのか?」
「んん……、ちょっとね。今日って放課後空いてる?」
「今日は委員会もないし、予定もないから空いてるぞ?」
「OK、じゃあ今日は放課後デートね。じゃあ」
用は済んだと足早にその場を離れようとする浮奇を呼び止めて、急ぎ足で自分の机まで戻り、偶然にも持ってきていたカーディガンを手に、浮奇の元へと戻る。
「寒いなら、これも」
差し出したカーディガンを受け取った浮奇は、両手に抱えてにっこりと笑い、
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